三方ヶ原から浜松城へ〜逃げる徳川と追う武田〜
家康達が三方ヶ原から離れておよそ一刻、合戦の声が聞こえない距離まで来ていた。
半蔵の配下の忍達が領民を事前に懐柔していた為、ここまでの道のりは問題なく進めた
次に乗る馬に交換する為、家康達は城まで残り残り二里のところで一時的に休息を取った
「殿。次の馬を取ってまいります。ここにしばらく隠れてくだされ」
「分かった。お主も気をつけて動け」
「ははっ。では皆様、殿をよろしくお願いします」
そう言うと半蔵は、その場を離れた。少しだけ落ち着く時を得た家康だったが
「儂が信玄坊主の策に踊らされたから、家臣達が大勢死んでしまった。全て儂のせいじゃ。儂が短慮な行動を取ったから」
今回の戦で敗れた責任を痛感しており、周りの家臣も何も言えない程、重い空気が漂っていた
そんな時、馬の足音が聞こえてきた。徐々に近づいてきたので、家臣達は家康を隠して武器を構えた。家臣の顔に緊張の色が出てくる
しかし、その緊張を解く声が届いた
「「殿!!」」
声の主は忠勝と康政だった。家臣達は安堵して
「本多殿。榊原殿。此処に」
「各々方。ご無事でしたか」
「殿はどちらへ?」
「あちらに隠れてもらっております」
家臣の1人が忠勝と康政を家康の元へ連れていく
「殿。本多殿と榊原殿でございます。三方ヶ原から何とか撤退出来た様です」
「おお!平八郎と小平太か!よくぞ無事だった」
家康から労いの言葉をかけられた2人だったが、顔は喜ぶどころか暗かった。そして
「夏目殿に命を救われました」
「あの方は、殿のこれからの栄達の為に二人は生きて殿をお支えしろと」
そこまで言うと2人は肩を震わせながら話そうとしたが、それ以上言葉が出なかった
家康も察したからそこから先は聞かなかった。そして話を変えて
「武田の追手は?」
「今は戦場に残る足軽達が武田を止めておりますが、長くは持ちませぬ」
「そうです。なので城へお急ぎくだされ」
「半蔵が馬を連れて戻ってくるまで動けぬ」
「ならば我々も残ります」
「なので半蔵殿が戻って来たら急いで城へ」
「分かった」
その会話から間もなく半蔵が馬を連れて来たが、
「殿。武田の旗が見える距離に来ております。急いで撤退を」
再び家康の危機が訪れていた




