出立する六三郎と柴田家を働かせる信忠
天正二十二何(1594年)十月八日
常陸国 水戸城
「それでは佐竹家の者達!世話になった!佐竹常陸と次郎よ、自慢の義太郎をちゃんと育てる事を期待しておるぞ!」
「「ははっ!」」
「うむ!それでは陸奥国への案内、頼むぞ伊達家の者達!」
「ははっ!それでは出立じゃあ!」
「「「「おおおお!」」」」
皆さんおはようございます。やっと常陸国を出立出来て、安心しております柴田六三郎です。いやあ、本当に働かない日があるって、ありがたいです!
前日に大殿が、家康と殿へ文を書くからお前も実家に届ける文を書いておけ!と言われて、簡単ではありますが、
「帰るのは来年の年末になるかもしれません!」の内容を含めた文を書いて、大殿の家臣の方へ渡しました。恐らく移動で1ヶ月はかかるだろうし、
伊達家の本拠地は会津で、未来の福島県ですから、弥生に入って移動出来るかも?みたいな雪か降る可能性のある土地ですの、最悪の場合も考えておかないといけません
まあ、実家には利兵衛や源四郎達も居るし、親父が他所の家の問題に巻き込まれていなければ、俺が実家に帰る事が遅くなっても問題無いでしょうと思っております
それじゃあ、伊達家の本拠地の会津に向けて出立しゃあー!
こうして、六三郎は伊達家先導の元、出立した
※六三郎の思っている事はフラグです
一方、信長からの文が届けられた安土城では
天正二十二年(1594年)十二月五日
近江国 安土城
「殿!大殿からの文と、柴田様からの文にございます!」
「父上と六三郎からか、ならば此方に戻る目処が立ったのかもしれぬな」
信長と六三郎からの文が届いた事を信忠は、戻る予定日が書かれた物だと思っていたが、
「どれ、先ずは父上からの文を読んでみよう。「勘九郎!問題なく過ごしておると思って文を届けたが、とりあえず伝える事として、この文は神無月の初頭頃に常陸国で書いた物じゃ!
お主の元に届いておる頃には、陸奥国の伊達家で世話になっておるじゃろう!年内に帰る事が不可能になった!
その理由として、常陸国の佐竹家が葡萄作りにおいて六三郎に教えてくれと言って来てな、美味いワインが増えたら南蛮の者から更に銭を回収出来ると判断して、
しばらく働かせたのじゃが、六三郎の奴は葡萄だけで飽き足らず米作りも指導しておった。まあ、佐竹家の居城である水戸城周辺限定じゃが、
それでも、六三郎が尾張国、美濃国、三河国でやった事を広がっていけば常陸国は米の一大生産地になるかもしれぬ!先ずは試金石として、佐竹家嫡男に陣頭指揮を取らせながら教えてあった
じゃが、長居しすぎたせいか陸奥国の伊達家が待ちきれずに佐竹家の元に来てな、それで最終的に「米は来年、ワインは再来年、結果を見せてくれ」との事になり
常陸国を出立した。なので、戻るのは来年の年末になる可能性が高いとだけ伝えておく!」と、あるが、何故に六三郎は、客人として呼ばれた先で働いておるのじゃ?五郎左よ、お主もそう思わぬか?」
まさかの帰ってくるのが来年の年末になる事、そして六三郎が働いている事を不思議に思い、長秀に質問していた。信忠の質問に長秀は
「殿、六三郎殿に関しては「そう言う星の下に産まれたに違いない」と思いましょう。きっと、六三郎殿が行く先々では国が豊かになり、
戦をする理由が無くなっていく。そして、その為に六三郎殿に頭を下げて教えを乞う者が居るから大殿は、六三郎殿を働かせるのかと」
丁寧な言い方には違いないが、「六三郎はそう言う運命的だから、諦めろ」とかなり雑な答えを伝え、長秀の言葉に信忠は
「五郎左もそう思うか、儂もじゃ。六三郎は戦の最中でも、戦以外の事で何かしら働いておるからのう。改めて六三郎に憧れを抱く若武者が多い事も納得じゃな」
「自分も同じ考えだ」と返す。こうして、信長の文を読み終えた信忠は、次に六三郎の文を読む
「次は六三郎か、どれ。「殿へ、柴田六三郎にございます。大殿から殿へ文を送るので、何か実家に伝えておきたい事があるなら、書いて殿へ渡しておく様に言われましたので、
簡潔ながら、父上と母上へ、実家に戻れるとしたら、来年の年末になるであろうとお伝えしていただきたく存じます。大殿からの文を先に読んでいるのであれば
ご存知かと思いますが、神無月の初頭頃に常陸国から陸奥国への移動を開始しまして、陸奥国は雪深い国である事から、
陸奥国から畿内へ出立するのは来年の弥生以降になると思われます。父上はお役目だからと納得してくれると思いますが母上は、
「戦が無いのですあれば家に居ろ!」と言うかもしれませぬ。なので、申し訳ありませぬが、実家にこの文を渡していただきたく。よろしくお願いします」との内容であるが、
六三郎は母である叔母上の機嫌が悪くなる事は心配していても、他の事は心配しておらぬ様じゃな。五郎左よ、常識外れと言われておる六三郎でも叔母上の小言は苦手と見て良いか」
六三郎の文を読み終えた信忠は、六三郎にも耐えられない物がある事を嬉しそうに長秀に聞くと、長秀は
「殿、それだけお市様が権六殿に嫁いで以降、しっかりと母として六三郎殿に接しているのでしょう」
「市がしっかり母親をやっているからでしょう」と返す。長秀の言葉に信忠は
「確かに、変に気を使わず母として接しておるから、家に殆ど居ない息子を気にかけておるのじゃろうな。誠に、良き母じゃな」
そう締めくくり、長秀に
「五郎左よ、六三郎の文を実家に届けてやってくれ」
六三郎の文を実家に届ける様、命令する。長秀が文を受け取り、家臣に文を渡そうとすると
「殿、丹羽様!佐久間摂津守様親子と、池田元助様がお会いして、お伝えしたい事があるとの事ですが、如何なさいますか?」
佐久間親子と、現在の池田家当主の元助が信忠の元を尋ねて来た。それを聞いた信忠は
「はう、何とも珍しいのう。何やら面白、いや不思議な事になりそうじゃな。両家とも呼んでまいれ!」
「ははっ!」
信長が六三郎に時折見せる悪ノリの顔になりながら、両家を大広間に呼び出した。その両家が集まると信忠は
「さて、佐久間摂津とその倅達、そして池田家当主の元助。此度お主達が揃って来たのは、もしや目的が同じなのか?」
両家の目的を質問する。両家を代表して、佐久間信盛は
「殿、その可能性は高いと存じます。改めてですが、前年の内に殿が佐久間摂津家の家督を甚九郎に継がせる決断をしてくれた事。誠に有り難き!これで、佐久間家はまとまりました、表面的には。ですが」
前年に甚九郎が佐久間摂津家の新たな当主になった事の感謝を伝えるが、その後の言葉が何やら不穏な言葉だった。その言葉を聞いた信忠は
「佐久間摂津よ、まとまりきらない理由は何じゃ?儂は甚九郎が家督を継ぐ際、「戦は新十郎が軍勢を率いる事」を条件に出した。それに対して家中がまとまらぬのか?」
信盛に質問する。信忠の質問に信盛は
「いえ。それに関しては家中全員、納得しました。ですが、一部の家臣が「やがて四十歳の甚九郎に嫁が居ないのは佐久間摂津家存続において不安だから、
嫁の居る新十郎が家督を継いだ方が良い」と言っている事を耳にしまして。その考えを持つ者が増えて来ておりまして、このままでは家中が割れてしまいます
殿、どうか甚九郎の嫁を紹介していただけませぬでしょうか?お願いします!」
答え終えると、頭を下げて頼み込む。信盛と同じ様に甚九郎と新十郎も
「「お願いします!」」
同じく頭を下げて頼み込む。そんな佐久間家に信忠は
「とりあえず頭を上げよ!佐久間家がまとまらない事は、影響が織田家にも多少なりとも出るからのう。嫁探しは、どうにかしよう」
「どうにかする」と答える。その後、元助に向き直ると
「さて、池田元助よ。まさかと思うが、お主も儂に嫁を紹介してくれ。と言うのか?」
丁寧な前振りの様な言葉を使う。その言葉に元助は
「申し訳ありませぬ。その通りです」
平伏して、その通りだと答える。元助の言葉に信忠は
「お主は親父の勝三郎に頼まぬのか?」
「親父に頼まないのか?」と質問すると、元助は
「実は、六三郎殿の側室の高代殿の側に居る父上から、弟の三左衛門が六三郎殿の家臣の妹を仮の許嫁としたとの文をもらった際、
「お主は当主なのだから、儂と同じ様に自分の嫁は自分で探せ!」と言われまして、ですが領地運営でその様な暇が無いので、申し訳ありませぬが、殿の力をお借りしたく」
「親父から自分で探せと言われたけど、そんな暇が無い!だから、紹介してくれ!」と返す。元助の言葉に信忠は
「佐久間家も池田家も、新たな当主が独り身なのは良くないのう。どうしたら良いか」
どうにかしたい気持ちはあるが、どうしようか考えが決まらない。そんな中で
「この状況に六三郎が居たら、どうにかさせるのじゃかなあ」
と呟いていた。その直後
「ん?六三郎が居たら?六三郎でなくとも、権六を筆頭に柴田家は顔が広い!そうじゃ!甚九郎と元助!お主達、六三郎の文を持って柴田家に行き、権六と叔母上へ嫁探しを頼んで来い!儂からも一筆書いておく!」
勝家達に丸投げする事を決断する。こうして、また勝家は色恋沙汰に巻き込まれる事になった。




