常陸国で堆肥が作成される頃、安土城と実家では
天正二十二年(1594年)八月十日
常陸国 水戸城周辺
「皆!これから土作りを行なう!この土作りは、来年以降の豊作の為の準備じゃ!しっかりと作り方を覚えて、右府様と柴田様が常陸国を出立してからも、
我々だけで作り、百姓達へ広めていく!此度はその試金石として、周辺の百姓を参加させる!よろしく頼むぞ!」
「「「「ははっ!」」」」
皆さんおはようございます。常陸国の水戸城周辺で、朝も早くから堆肥作成に参加しております柴田六三郎です
佐竹家からは太郎くんを筆頭に、100人の家臣、そして水戸城周辺の百姓の方々50人が参加しております
織田家からは俺と赤備えだけなのですが、まあ堆肥作成が目的ですから、そこまでの重労働はないでしょうから、それじゃあ働きますか!
早く伊達家に行って、顔を見せて実家に帰るぞー!!
六三郎が早く帰りたい願望を燃やしていた頃、畿内と播磨国で六三郎の予想の斜め上の動きが発生していた
天正二十二年(1594年)八月十五日
近江国 安土城
「一条様、わざわざ安土城に御足労いただき、誠に忝うございます。それで、何かありましたでしょうか?信子殿まで連れて来るとは」
安土城では、数年前に六三郎が信子と万千代を預けた一条家本家の当主、一条内基が信子を連れて信忠にある事を頼みに来ていた。そのある事とは?
「内府殿。実はな、信子が安土城で保護されていた頃、右府殿の正室の帰蝶殿から、
「世間知らずを直したいなら、柴田家で立場を隠して働いてみてはどうか?」と言われたそうでな、一条家に保護されてからも、その事が頭の中を離れなかったそうじゃ
なので内府殿、一年か二年ほどで良い。柴田家にて立場を隠した信子を働かせてくれぬか?」
内基は、信忠へ頭を下げて頼み込む。それを見た信忠は
「一条様、分かりました。ですが、期限として六三郎が戻って来るまでとさせていただきますぞ」
期限付きで了承する。信忠の返答に内基は
「それでも充分ありがたい。やはり数少ない親類には、世の中を知って欲しいからのう。それでは信子を預けていきますので、よろしくお願いしますぞ」
信忠に頭を下げて、信子を預けて京の屋敷に戻って行った。残った信子に関して信忠は
「さて、信子殿。早くて年内、遅くても一年以内に六三郎は戻って来るじゃろう。短い期間になるが、柴田家で女中として働く覚悟はあるのじゃな?」
信子に覚悟を聞いた。信子は信忠を見据えて
「はい。たとえ短期間でも、帰蝶様の仰っていた常識に囚われない柴田家の中で働いてみたいのです」
覚悟を伝える。信子の覚悟を聞いた聞いた信忠は
「分かりました。じゃが、信子殿一人行かせては、色々と疑われてしまう。そこでじゃ久太郎」
「ははっ!拙者は、どの様な事を行なうのでしょうか?」
信子を一人で行かせない為に、堀秀政に
「お主、少しばかり前倒しになるが叔父上達と共に、柴田家へ行く際、信子殿とお主の女中数名も連れて行け。権六と叔母上に伝える文を持たせる。形式上は、久太郎の女中ではあるが柴田家で働かせる事にしてくれ。頼むぞ」
中々の無茶振りをするが、慣れているのか秀政は
「ははっ!信子殿が何かしらを得られる様に、見守りたいと思います」
何とかすると宣言する。秀政の言葉に信忠も
「うむ。それでは、しばらくは信子殿を久太郎に預ける。家臣の皆にも伝えておいてくれ。それでは信子殿を休ませてやってくれ」
秀政に任せる事にした
「ははっ!」
秀政は返事をして、信子を連れて部屋に戻って行った。こうして、数年遅れになったが信子が柴田家で働く事になった
その頃、そんな事を知らない柴田家では
天正二十二年(1594年)八日二十日
播磨国 柴田家屋敷
「うおおおお!」
「次!」
「うおおおお!」
「次!」
「うおおおお!」
「遅い!赤備えの面々は上り坂を早く走っておったぞ!下り坂では歩くなと言ったであろう!走り終えたのであれば、立っておけ!寝転がるでない!」
柴田家の京六郎に駒姫が嫁入りしたのに、何故か最上義光が出羽国に戻らずに、訓練用の坂道で家臣達を叱咤しながら走らせていた
更に
「赤備え達は四種の動きをお主達より多くこなしておったぞ!お主達は半分しかやっておらぬのに、何故倒れておる!!」
筋トレ終了後に動けなくなった家臣にも叱咤激励していたが、義光が柴田家にまだ残っている理由とは?
訓練終了後、義光は勝家の元へ向かうと
「越前守殿!あの坂道は勿論、四種の動きは家臣達が鍛えられますな!拙者もやってみましたが、身体が逞しくなっているのが、分かりますぞ!」
訓練が役立っている事を笑顔で伝える。そんな義光は勝家に
「しかし、越前守殿。我々最上家は、誠に六三郎殿が戻って来るまで柴田家で世話になってよろしいのですか?長居するのも申し訳ないのですが」
「六三郎が戻って来るまで、本当に柴田家に居て良いのか?」と質問する。そんな義光に対して勝家は
「最上殿。駒姫と京六郎が夫婦になったのですから、これからはすぐに駒姫に会う事も出来なくなりますので、
六三郎が戻って、娘の江を武田家に連れて行くまでは、駒姫と多く思い出を作ってくだされ」
「これからは駒姫に頻繁に会う事も出来なくなるから」と言う理由と「江が武田家に行くまでの間」と言う条件を付けて、柴田家に居て良いと伝える
勝家の言葉を聞いた義光は
「分かりました。越前守殿のお言葉に甘えさせていただきます。誠に忝い」
感謝を込めて、勝家の言葉に甘えて滞在を延長する事にした。こうして、最上家も柴田家のドタバタに巻き込まれる事が決定した。




