家康が名人と美丈夫に話す事とは
家康に呼ばれた2人が大広間にそのまま通されると、そこには家康と一部の者居るのではなく、主だった重臣達が揃っていた。何かした訳ではないのだが、秀政は
「徳川様、主だった皆様もお集まりの中、拙者と京六郎殿は、何故呼ばれたのでしょうか?」
緊張しながら家康に呼ばれた理由を聞く。家康は
「いやいや堀殿。そう固くならずとも良い。此度、二人に来てもらったのは門番を務める者達から女中達に至るまで、そちらの京六郎殿の事を話しておるのでな
それこそ「身の丈の高い美麗な顔の殿方」や、「二百年前の南北朝時代の美男子、北畠顕家の様」だとか
言っておったのでな、それでどの様な若武者が一度、顔を見ておきたくてな!成程、噂に違わぬ高い身の丈であり、美麗な顔立ちをしておる
京六郎殿、もしも顔の事を含めて色々と気にしておるのであれば、済まぬな
それでは改めてじゃが、京六郎殿。京六郎殿は、元服も初陣も経験しておりますかな?」
色々と話した後に、京六郎へ質問して来たので京六郎も答える
「いえ、拙者は元服も初陣もまだです。産まれてか、現在まで、理財は利兵衛殿の弟子の大野殿から教わり、武芸は遠藤殿に教わっております
父上にもそろそろ元服をと、話をしておりますが、いかんせん兄上が凄まじい働きをしておりますもので、拙者の元服は後回しに、それこそ二十歳になってからでも良いと言われております」
京六郎の答えを聞いた家康は
「確かに、六三郎殿の働きを見た後だと、確かに慌てて元服させる必要も無い気はするのう。それで京六郎殿、京六郎殿は確か柴田家では末の子であったか?
父の柴田家殿と母のお市殿は壮健か?六三郎殿はあちらこちらに移動しておるから、そこら辺の話を聞いてみたくとも中々機会が無くてのう」
勝家と市が元気かと聞くと、京六郎は
「徳川様、父上も母上も変わらず壮健にございます。それに、兄上が甲斐国に出立する前に妹も産まれたので、休む暇などありませぬ」
8年前に妹の環菜が産まれた事を伝える。それを聞いた家康は
「き、京六郎殿?妹が産まれて、それが六三郎殿が甲斐国へ出立する前となると、八年前になるが、その時の柴田殿は確か還暦を超えていたのでらないのか?」
驚きながらも、勝家の年齢を確認する。
「はい。妹が産まれた時、父上は六十六歳、母上は四十歳でした。ですが、身体に問題なく壮健にございます」
京六郎の説明に家康は驚きを隠せずにいた。そんな家康は更に
「ところで、京六郎殿?六三郎殿は嫁が五人居るが、京六郎殿は許嫁や見合いの予定はあるのかのう?」
京六郎に許嫁やお見合い相手が居るのかと質問する。すると京六郎は
「それに関しては、父上と母上と兄上に任せております。特に母上は、「京六郎の正室には見目麗しいだけでなく身の丈の高い姫君を!」と息巻いておりますので
まあ、兄上の嫁取りに関して慌ただしくなった事も理由らしいですが、他にも姉上達も妹も、「この殿方へ嫁ぎたい!」と決めた方へ自らを売り込んでおりますから」
自らの嫁取り話と、姉妹の逆プロポーズ話を堂々と話す。それを聞いた家康は
「六三郎の嫁取りがあったから、慎重になるのも仕方ないか。うむ、久しぶりに柴田家の話を聞く事が出来て、満足したぞ!それでは、高代殿の元へ行って良いぞ。堀殿は残ってくれ」
「ははっ!それでは失礼します」
満足したとの事で、京六郎を高代の元へ行かせた。しかし、秀政は残されたので何事かと身構えていたら
「堀殿。京六郎殿程の美男子が居るのであれば、三郎殿が自慢してくると思うのじゃが、もしや三郎殿も京六郎殿の事を知らなかったのか?」
「信長は京六郎の事を知らなかったのか?」と質問された。秀政は
「恐れながら徳川様。京六郎殿の存在は知っておりましたが、あれ程の美男子である事は、拙者も出立前の安土城で知りました。なので、大殿も知らなかった可能性が高いかと」
「柴田家の次男があんな美男子とは、信長も知らないと思う」と正直に伝えるしかなかった。それを聞いた家康は
「そうか。まあ、家臣の子供の成長度合を知らない事もあるから、仕方ないか。うむ、分かった。それでは堀殿も、部屋に戻りなされ」
「ははっ!失礼します」
秀政を部屋に戻らせた。秀政の足音が無くなった事を確認した家康は家臣達へ
「いやはや、あの若武者の顔は織田家の血筋が多く出ておるな。しかも身の丈や逞しさは柴田家の血筋が多いと見て良いじゃろうな
竹千代か竹二郎、どちらかがあの様に育ってくれたら良いのじゃがなあ。そうなれば、将来的に嫁取りの心配も無くなると思うのじゃが」
竹千代か竹二郎が、京六郎の様な美男子になって欲しいと願望を口にしていた。それを聞いた酒井忠次から
「殿。若君達のお顔も充分に整っております。その様な事は」
「2人の顔も整っているから、そんな事は言うな」と嗜められる。忠次の言葉を受けて家康も
「それもそうじゃな。孫達も充分に顔は整っておるな。小五郎よ、礼を言う」
態度を改める。こうして、徳川家の京六郎に関する事は一応、終了した。しかし、高代達の元へ行った京六郎は
「高代様!こちらの殿方が、播磨守様の御舎弟様なのですか!?」
「世の中には顔も身の丈も素晴らしい殿方が居るのですね!」
「京六郎殿、許嫁とかは居るのかのう?居ないのであれば、儂の娘と見合いでもしてみぬか?」
高代とうめと甲斐の側に居た独身女性達が興奮して、更に池田恒興に至っては、娘との見合いを提案していた。部屋に戻って来て、その様子を見た堀秀政は
「皆様、殿からの命令ですので、人数確認をしたいと思います。先ずは全員集まってくだされ」
全員を集める為に、その場をまとめていたが、その顔は、何事も卒なくこなす名人久太郎と呼ばれている人間とは思えない程、疲れていた。




