安房国では六三郎が遠江国では京六郎が大変な事に
天正二十二年(1594年)五月一日
安房国 某所
「右府様、播磨守様!安房国に到着しました」
「うむ!思ったより早く到着出来て安心したぞ!のう、六三郎!」
「はい。初めての船旅でしたが、思ったよりも安全でした」
皆さんこんにちは。大殿と船で安房国に到着した柴田六三郎です。いやあ、北条家の皆さんが「船の方が早いから、乗っていけ」と、
正しく渡りに船な事をやってくれましたので、言葉に甘えさせてもらいました。早く進んだのかいつも通りの早さなのかは分かりませんが、何とか安房国へ到着しました
俺はこの世界の船は初めてだったので、不安はありましたが、船酔いとかは無かったので、大丈夫でしたが
「源次郎、銀次郎、新左衛門。お主達3人は特に辛そうじゃな」
「「「申し訳ありませぬ」」」
赤備えの殆どが船酔い状態で、特に脳筋度合いの強い3人に至っては、船の上で動けないどころか、陸に上がっても動くのがやっとな状態です
こんな状態だと、絶対に起きるであろう九州征伐で1日ワンクッションとして置かないと、皆がマトモに働けないな。実家に戻ったら船に慣れる訓練もやるか
六三郎がそんな事を考えていると
「大殿!六三郎殿!里見家の旗印が見えております!近づいて来ておりますので、どうやら出迎えかと!」
丹羽長重から、里見家の旗印が近づいて来ているとの報告を受けると
「右府様!柴田様!お迎えにあがりました!!遅くなり、申し訳ありませぬ!」
里見家の嫡男、太郎の声が聞こえた。その声に六三郎は
「里見殿!こちらにございます!」
大声で存在を知らせる。六三郎の声を聞いた里見家一行は
「あちらに居られるぞ!」
スピードを上げる。そして、あっという間に到着すると
「右府様!柴田様!安房国へ来ていただき、誠にありがとうございます!!拙者も家臣達も首を長くして待っておりました!ささ、我々が先導しますので、後を着いて来てくださいませ!」
信長と六三郎を先導する形を取る。こうして、今回の長旅の目的の1つである、里見家嫡男の元服の儀に出席する事が出来る様になった
信長と六三郎達が最初の目的地である安房国に到着した頃、京六郎達一行は遠江国に到着していた
天正二十二年(1594年)五月十日
遠江国 某所
「堀様!遠江国は播磨国が霞む程、発展しておりますな!全てが真新しく見えます!」
「はっはっは!京六郎殿、播磨国も兄君の六三郎殿が戻って来たら、凄まじい速度で発展して行きますぞ!
六三郎殿がこれまでの領地や、出向いた土地で実施した事を播磨国で実施したら、播磨国に働きに来る人間が増えるでしょうからな」
遠江国に入ると京六郎は、周囲をキョロキョロしながら秀政に話しかける。秀政は「六三郎が帰って来たら播磨国もこうなるぞ」と京六郎に話していた
秀政の言葉を聞いた京六郎は
「堀様!兄上のこれまで実施して来た事は、それ程に凄い事なのですか?」
秀政に、今まで六三郎がやって来た事の凄さを質問すると、秀政は
「京六郎殿。六三郎殿のこれまでの功績は、我々の常識を壊して来たのです。先ず、日の本独自のパオンを作ったり、麦を粉にして料理を作り、それを売り、銭を儲ける
更に、その為の店を作る事も提案して、織田家の税収を増やす。と言った事を考えるだけでなく、細かい部分まで考えて実行するという
通常の武士では、そこまで考える余裕が無い中、その様な武士達をも巻き込んで、「織田家の為になるから!」と戦働き以外が出来なかった者達を、戦働き以外も出来る様にしたのですから
更には、それを徳川家、武田家で実施し、更には北条家も巻き込んで、織田家の家臣となった家が新たな領地を手に入れる展開のきっかけを作ったのです
それだけでなく、殿の御舎弟である伊勢守様と讃岐守様の嫁取りも成功させ、長年実子が生まれなかった羽柴様に子を抱かせるなど、
今や織田家中で六三郎殿の世話になっていない家は無いのでは?と言われる程、働いておりますから、殿も大殿も六三郎殿へ仕事を多く割り振ってしまうのでしょう」
六三郎のこれまでにやって来た事を、大まかに説明した。それを聞いた京六郎は
「そうなのですか。拙者の記憶の中の兄上は、越前国が領地だった頃、疲れ果てて数日寝ていた記憶しかなく、そこで起きた兄上と数回、会話をした記憶しかありませぬ」
記憶の中の六三郎とは、殆ど会話をしていないと答える。秀政は
「京六郎殿。恐らくですが、六三郎殿が播磨国に戻ったら、しばらくは戦も起きないと思われますので、その時にでも、
六三郎殿や六三郎殿の子達と話してみなされ。六三郎殿のこれまでのお役目が如何に尋常ではないかが、分かりますぞ。そろそろ徳川様の居城、浜松城が見えて来ましたそ!」
「六三郎や子供達と話をしてみろ」と京六郎へ伝える。そして、浜松城が見えて来た事を伝えると
「それでは、拙者は勿論ですが、朝倉兄弟!お主達は儂と共に浜松城の門番に話をするぞ!着いてきなされ!」
「「ははっ!」」
朝倉兄弟を連れて、門番の元へ行き事情説明をすると
「通る許可をいただきました!来てくだされ!」
秀政が京六郎達を呼ぶ。呼ばれた京六郎は、門番の元へ行き、
「柴田播磨守の弟の柴田京六郎にございます。此度は兄の側室の高代殿の為に、ありがとうございます」
丁寧な挨拶をしながら、浜松城内へ入る。全員が入り終えた後、門番は
「あれ程、見目麗しいのにも関わらず、あの柴田様の御舎弟とは!信じられぬ!」
「確か、腹違いの兄弟だと聞いておる。それにしても、あの美麗な顔!身の丈が高いから男と分かるが、
まるで昔話で聞いた二百年前の南北朝時代の美男子、北畠顕家公の様じゃな!」
京六郎の顔の綺麗さに驚いていた。門番ですら、その様な状態なので、城内の女子達は立場の上下関係無く
「あの、身の丈の高い綺麗な殿方はどちらの家の殿方か分かりますか?」
「織田家家臣の柴田播磨守様の御舎弟様との事ですよ」
「あの柴田様の?柴田様と言えば、益荒男な見た目に反して、腰の低い武将でしたね。その御舎弟様があれ程、見目麗しいなんて!」
「ど、どうにかして、お近づきになれないかしら!」
部屋に通されるまでの廊下で見た京六郎に興奮していた。そんな中、
「失礼します。堀様、柴田殿。殿が大広間でお待ちです。案内しますので着いて来ていただきたく」
「「承知しました」」
家康が秀政と京六郎を呼び出した。




