京六郎は初仕事が嬉しいが
勝家に命令された利兵衛は、京六郎、遠藤喜太郎、大野光三郎、朝倉宗太郎と宗次郎の兄弟、森仙六郎、長宗我部千熊丸を勝家の前に連れて来た
前田慶次郎の嫡男の慶之助は、まだ幼いので、今回のメンバーからは外れる事になった。そして全員が勝家の前に集まると
勝家は、先頭に座っている京六郎に対して
「京六郎!そして皆、此度お主達を集めた理由じゃが、ある場所に行って、やってもらいたい事があるからじゃが、京六郎よ、どの様な事だと思う?」
初仕事がどんな内容かを質問する。勝家の質問に京六郎は
「父上!もしや、玄蕃の兄上が先導している方々を拙者達が先導するのでは?」
佐久間盛政達を先導する役目だと推測するが、当然外れているので
「いや、その役目は玄蕃がそのまま続ける。他には無いか?」
勝家は更に質問する。京六郎の次の答えは
「安土城の内府様にお子が産まれて、お祝いの品を贈る役目でしょうか?」
信忠に子供が産まれて、そのお祝いの品を持っていく役目だと推測した。しかし、これも外れているが、勝家は
「それも違う。まあ、ほんの少し惜しかったがな」
六三郎の時と違い、甘めの対応を取る。その様子を見て、市から
「権六様。そろそろお役目を言ってください」
「早く役目を言え」と促されたので、
「それもそうじゃな。改めてじゃが、京六郎よ。お主は後ろに控えておる面々を連れて、徳川様の領地の遠江国にある浜松城へ行って来い!
そして、そこに六三郎の側室の高代と高代の側に居る者達、更に織田家家臣池田殿一行が居るのじゃが、
高代が六三郎の子を授かったので、安産祈願の品を持って行きながら、高代達と池田殿一行が総勢何人、浜城に居るのか調べて、内府様へお伝えせよ!それが、お主達のお役目じゃ」
勝家の言葉を聞いて、朝倉兄弟は
「姉上が、遂に殿のお子を!」
「いつ授かるか不安だったが、遂に!」
とても喜んでいた。他の者達も
「初の遠出じゃ!」
「他の国はどの様な発展度合いか、楽しみじゃ!」
「播磨国で育てられて、特産品になりそうな物はあるかのう」
目的は様々だが、外の世界を見る事への楽しみは一緒だった。しかし、京六郎は
「父上、もしや、拙者は皆をまとめる代表を務めよ!との事ですか?だとしたら、拙者よりは喜太郎殿の方が適任だと思うのですが」
自身が代表者として不適格だと、勝家に伝える。その言葉に勝家は
「京六郎よ、何故そう思う?」
そう思った理由を聞くと、京六郎は
「父上、拙者は父上や兄上の様に勇ましい顔ではなく、母上や姉上達に近い顔をしております。その様な顔で、更に父上や兄上を少し超えるくらいの身の丈ですから
青瓢箪の様だと見られて、皆に迷惑をかけてしまうのではないのかと思いまして、なので拙者よりは」
自身の顔が勝家や六三郎の様な、いわゆる「益荒男」な厳つい顔ではなく、市に似た綺麗な顔である事、更に身長も織田家と柴田家の双方の血筋を受け継いで
勝家と六三郎が推定175センチくらいなのに対し、京六郎は推定180センチの長身なので、
武士らしくない貧弱な男に見えるから代表者に相応しくないと思う。と明確に伝える
これを聞いた勝家は
「京六郎よ、以前から言っておるであろう。兄の六三郎は、幼い頃から出陣して来た結果、ああなったのじゃ!
それに六三郎は、お主が元服する頃には戦無き世になっていて欲しいと、獅子奮迅の働きをしておる!だから、その様な顔を含めた見た目の事は気にするな!
六三郎は六三郎、京六郎は京六郎じゃ!比べても無意味じゃ!」
「見た目なんて気にするな」と嗜める。しかし、京六郎は
「父上。拙者も柴田家の男として、兄上と共に戦場を駆け巡りたいのです!父上は鬼柴田と呼ばれ、兄上ら柴田の鬼若子と呼ばれております
これはつまり、柴田家の男は戦場に出て武功を挙げてこそ一人前と認められる事なのではないのですか?兄上は八歳で初陣を経験し、十一歳で元服し、
そこからは、織田家中を超えて関東、更には奥州にまでその武名は轟いております!そんな立派な兄上の弟が、拙者の様な武士らしさの欠片も無い男では」
自分の様な武士らしくない見た目の男では、六三郎の弟である事以外、何も無いと勝家に伝える
京六郎の胸のうちを聞いた勝家は
「京六郎。そこまで言うのであれば、数年のうちに行なうであろう九州征伐に出陣したい旨を内府様と六三郎に伝えてみよ。
その件で二人共、お主の出陣を了承したのであれば、六三郎の側に居る事を条件に出陣してみよ。その上で、織田家や六三郎がどれだけの事をやっておるのか
その身を持って、実感してみたら良い。だからこそ、今は最初に安土城へ行き、
内府様へお主が率いる一行が浜松城へ行く事をお伝えしてから、浜松城へ行くお役目を成し遂げて来い!話はそれからじゃ!良いな?」
「信忠と六三郎が了承したら、九州征伐に出陣して良いがら、先ずは役目を成し遂げろ!」と京六郎を嗜める。勝家の言葉を聞いた京六郎は
「ははっ!承知しました。それでは出立の準備に取り掛かりますので、失礼します」
そう言って、大広間を出て行った。京六郎を追って何人か出て行ったが、残った者の中で最年長であり、戦の経験のある遠藤喜太郎へ勝家は
「喜太郎、道中色々と大変じゃと思うが、京六郎の事含め、よろしく頼むぞ」
「全部ひっくるめて頼む」と、かなりの重圧と期待をかけていた。しかし、荒事に慣れている喜太郎は
「ははっ!お任せくだされ!」
余裕ある表情で返事をして、大広間を出て行った。こうして、幾許かの不安を残しつつ高代達の元へ行く面々が確定した。




