柴田家から動くのは
天正二十二年(1594年)二月十五日
播磨国 柴田家屋敷
「大殿!内府様からの文です!」
「内府様からじゃと?また六三郎が何かやったのか?あ奴は今年で三十歳なのに、何故落ち着かぬ」
信忠が信長からの文を受け取り、柴田家の誰かしらを働かそうと決断してから、およそ3週間。信忠からの文が勝家に届けられる
中を見ていないが勝家は、また六三郎が何かをやったも断定していた。そんな勝家に市が
「権六様。六三郎が何かやった可能性が高い事は否定出来ませんが、先ずは文の中身を見てみましょう」
「六三郎が何かやった可能性は否定出来ないけど、とりあえず文の中を見よう」と、勝家を促す。促された勝家は
「分かった。とりあえず読んでみよう」
そう言って、文を開いて読み出す
「では。「権六へ。勘九郎じゃが、いきなりの文で驚かせて済まぬ。実は、睦月に父上から喜ばしい報告の文が届いた事と、
その事で柴田家の誰かしらに働いてもらいたいから、文を送ったのじゃが、先ずは聞いてくれ。実は六三郎の側室の高代がやや子を授かったとの事じゃが
権六の親類の佐久間玄蕃が、六三郎の他の嫁を含めた面々を遠江国から播磨国へ向けて先導しておるが、これからの寒い時期、高代をその中に入れてはやや子が流れてしまうかもしれぬとの事じゃ
この話を聞いた徳川様が、「安定期に入るまでは、浜松城に居たら良い」とありがたい対応をしてくれて、父上も六三郎へ、徳川様の言葉に甘えておけ。と言ったのじゃが
ここで一つ問題がある。それは、織田家及び柴田家から高代達へ送る生活費が如何程になるのか分からぬ事じゃ!
父上は浜松城に織田家との橋渡し役として、池田勝三郎を置いておるが、徳川家に預かってもらっている全員分の生活費を出してもらうわけにはいかぬ
なので、権六。柴田家の誰かしらに浜松城へ行って、高代への安産祈願の品を渡しながら、世話になっておる人間を確認してくる役目を担わせてくれ」との事じゃが
市よ、こればかりは納得せざるを得ないか。やや子を授かった女子は、身体を冷やしてはならぬという事は、儂でも分かる事じゃからな」
読み終えた勝家は、市へ話を振る。振られた市も
「そうですよ権六様。やや子を授かって三ヶ月くらいは、特に危うい時期ですから!高代を浜松城へ置いてよいと許可してくださった、徳川様へ感謝しましょう!
それでは権六様。誰を代表として、どれくらいの人数で高代達の元へ向かわせますか?私としては、高代の弟の宗太郎と宗次郎は行かせるべきと思いますが」
家康へ感謝しつつ、高代達の元へ誰を行かせるか、勝家に質問する。市の中では高代の弟である宗太郎と宗次郎は行かせるべきだと提案する
市の提案を聞いた勝家は
「儂も二人は行かせるべきだとは思う。じゃが、二人を高代達の元へ向かわせる一行の代表とするのは、織田家と柴田家の名代の様な立場にしては、
色々と足りぬからのう、誰を行かせたら良いか。誠に悩ましい!利兵衛、お主としては誰が良いと思う?」
朝倉兄弟では、代表者として物足りないと判断したが、誰が良いのか決め切れずに、利兵衛に聞いてみる
話を振られた利兵衛は、少し考えて
「大殿、奥方様!拙者としては、一行の代表者には京六郎様がよろしいかと存じます!京六郎様は、殿の弟君であり、織田家と柴田家双方の血筋を引いております。代表者とするには充分なお立場かと」
六三郎の弟の京六郎を代表者に推薦した。しかし、市は
「京六郎ですか。年齢が若過ぎて、失礼にあたりませんかねえ」
京六郎の年齢が若くて失礼じゃないかと不安だった。しかし、利兵衛から
「奥方様。京六郎様は今年で十六歳ですから、若過ぎるという事はありませぬ。それに、年齢の話ならば、殿は八歳で初陣を経験しておりますから、
その事と比べましたら、十六歳は若過ぎるという事はありませね。それに大殿、そろそろ京六郎様の元服を考えておられるのでは?
元服前に織田家や織田家と近しい徳川家に、京六郎様のお顔を覚えてもらう良い機会だと思いますが」
六三郎の弟の京六郎を一行の代表者とする提案がなされた。その提案も、ただの思いつきではなく、顔を覚えてもらう事も含めた内容か含まれていた
利兵衛の提案を聞いた勝家は、少し考えて
「ふむ。確かに利兵衛の言うとおりじゃな。そろそろ京六郎にも、外の事を知ってもらうとするか。市よ、それで良いな?」
京六郎を代表者として行かせる決断をくだし、市にも聞いてみる。市からは
「ええ、外の事を知るには良い機会ですね。ですが、それならば権六様、利兵衛に理財を任されている光三郎や、他家から預かっている若者達にも、
外の事を知ってもらう為に、京六郎の護衛として一行の中に入れましょう!そうすれば、柴田家からもそれなりの数の祝いの品や、生活費を運べますから!」
「京六郎以外の若者にも、外の世界を知ってもらおう」
と、提案される。市の提案に勝家も
「ふむ。確かに、それも良い経験じゃな!利兵衛!!京六郎達を連れて来てくれ!重要な役目じゃから、直接言わねばならぬ!」
「ははっ!それでは、お連れしてまいります!」
こうして、高代達の元へ京六郎を代表とする一行が行く事が決定した。




