馬車は一応完成したが
六三郎と赤備え達が、何か珍しい物を作るかもしれないとの話は、あっという間に浜松城内を駆け巡り、六三郎と赤備え達の元に、
家康を始めとした多くの面々が集まって来た。そこで六三郎は家康の命令で集められた、使わなくなった荷車5台を見て、六三郎は
「皆!先程、喜兵衛が提案していた、山陽で一条家の2人を拾った時、2人を荷車に乗せて移動していた話をしたが、此度の儂の提案する物は
一条家の2人が乗った物を、雨風が凌げる屋根があって、中で寝泊まりが出来る様にする物じゃ!なので、先ずは荷車を丁寧に解体して行くぞ!」
大まかな説明をした後、一先ず解体する様に命令する。赤備え達は
「あの時の物を改良するのですな!」
「一条家の二人は、まだ子供でしたから一台で収まりましたが、右府様は大人ですから、大きく作る必要がありますな」
「殿が、新たな銭の種になるかもしれぬ物を作ろうとしておるぞ!我々も頑張ろうではないか!」
「「「「おおお!」」」」
何となく、頭の中に完成形が見えていた様だったが、解体を優先する事にした。そして、あっという間に5台の荷車を解体し終える
そこから5台分の基礎部分の板を繋ぎ合わせようとしたが、周囲も暗くなって来たので、今日はここまでとなった
翌日
六三郎と赤備え達が作業の続きをやろうとすると、家康から
「六三郎殿!これより先は、職人が必要になるであろう!なので、城下の者達の中でも選りすぐりの職人を連れて来たぞ!
なに、職人達へ支払う為の物を含めた銭は、三郎殿と話して、勘九郎殿へ請求するとしよう!なので、職人達と話し合って、是非とも完成させてくれ!」
「ははっ!忝うございます!」
職人の貸し出しがあった。六三郎は家康に礼を述べると、職人達と話し合う。そこで、具体的なイメージを言葉にする
「職人の皆様、拙者達が前日から作ろうとしている物は、京で公家が乗っている牛車の牛を馬に変えた物なのですが、それを更に改良した物、それこそ人が2人寝泊まり出来る広さを持つ物です!」
六三郎のイメージはどうやら、馬車からキャンピングカー的な物に変わった様で、六三郎の説明を聞いた職人の1人が
「六三郎様でしたか?その牛を馬に変えた牛車は、日の本で既に広まっているんですか?」
馬車が流行っているのかと質問する。その質問に六三郎は
「いいえ。拙者の知っているかぎり、京ではまだまだ牛が引いております。つまり、ここで馬で引く牛車、言いにくいので馬車と仮の名をつけましょうか
馬車が完成したら、皆様が日の本で一番最初に馬車を作り上げた職人達という事になりますぞ!」
「日の本で一番最初」と言う功名心をくすぐる言葉で返してみた。する職人達は
「儂達が、日の本で最初の馬車を作って、歴史に名を残すぞ!」
「「「「おおお!!!」」」」
とてつもなくテンションが上がった。そんな中で六三郎は職人達へ大まかな設計図を地面に書いて、説明する
「先ず、馬車の内部ですが、六尺三寸程の身の丈の人間が寝ても大丈夫な幅を2人分、確保していただきたく!
そして、その人が寝られる部分を座る時に使う場合は六尺四寸程の余裕を持たせて、身の丈が小柄な女性が乗り込む為の台座も作って、それから雨風が凌げる様」
六三郎のアバウトな説明を聞きながら、設計図を見た職人達は
「確かに、これは今まで聞いた事も見た事も無い!これを作れたら、儂達の腕は一段どころか二段上になったと、自信を持てるぞ!皆、気合いを入れて作るぞ!」
「「「「おおお!」」」」
こうして、六三郎と赤備え達と職人達とで、キャンピングカー的要素を含む馬車作りがスタートした
色々な試行錯誤を繰り返して、とうとう試作品が完成したのは、大晦日だった
天正二十一年(1593年)十二月三十一日
遠江国 浜松城
「おお!これが、馬車とやらか!」
「京で見た牛車に似ておるが、やはり別物じゃな」
「これを馬で引くのか。見事に操れたのであれば、乗馬技術で一等であると言えるかもしれぬな」
皆さんこんにちは。大殿と池田様が甲斐国から到着する前に、キャンピングカー的馬車の試作品が完成して、安心しております柴田六三郎です
馬車の試作品を見て、徳川家家臣の皆様の中には牛車に似ていると言う声もあるのは当然でしょう。だって、牛車を真似したのですから!
しかも、2頭立てで進む為に幅を広く取りましたから、それなりの重さと分厚さもありますから、火縄銃の連発とかを受けないかぎり、防御もそれなりに期待出来ます
で、そんなキャンピングカー的馬車の試作品を見た、徳川家家臣の皆様のうち
「殿!安全確認の為に、拙者に試し乗りをさせていただきたく!」
本多殿が、「安全確認の為、自分が乗る」と言い出すと
「待て待て平八郎!お主一人だけで乗るつもりか?この馬車とやらは、六尺三寸の身の丈の人間が寝ても大丈夫らしいではないか!
ならば、儂も安全確認の為に乗りたいぞ!殿、よろしいでしょうか?」
榊原殿も試し乗りしたいと言い出すし、更に
「本多様、榊原様!安全か分からない物は、我々若い者がこの身を持って、安全確認します。なので、乗る役目は我々にお譲りくだされ!殿、よろしいでしょうか?」
鬼日向さんも、乗りたいと言い出す。希望者が多いので、最終的に家康は
「勝之尉と平八郎!先ずはお主達二人、動かない状態の中で寝てみよ」
康勝と忠勝を試し乗り役として、指名した。指名された本多殿は
「ありがたき!それでは勝之尉様!」
喜びながら勝之尉くんとと共に中に入ると
「おお!これは快適な広さですな!勝之尉様、頭をぶつけそうではありませぬか?」
「いえ、拙者の身の丈でも余裕があります。それに横幅もかなりの余裕がありますな。おや、中に筒の様な物が。六三郎様、そして職人の皆様、この筒は一体」
中の筒に気づいて質問して来た。これは職人さん達のファインプレーだから、本人達に説明してもらおう
「勝之尉殿。その筒は、職人の方々から。よろしくお願いします」
説明を促された職人さんは
「恐れながら、説明させていただきます。その筒は、寒い時期に冷えない為の火種を入れる為に設置しました。空気の入れ替えも乗り入れ用の扉と、扉につけました小さな扉で可能になっております」
簡易的な暖炉と説明した。それを聞いた家康は
「成程、雨風が凌げるだけでなく、内部も温かいと!うむ!見事じゃ!それでは、勝之尉と平八郎の貫目の多い二人を乗せて、ちゃんと走れるのかを試したい!
先ずはゆっくり走ってもらおう!勝之尉と平八郎はそのまま乗れ!馬を操るのは小五郎と藤十郎!お主達二人がやってみよ!」
若い2人を御者役に指名した。こうして、大晦日の浜松城下を、日の本初の馬車が走る事になった。




