於義伊の元服の前に色々考えた結果
天正二十一年(1593年)十一月十日
遠江国 浜松城
「皆!!帰って来たぞ!」
「「「「「殿!お帰りなさいませ!」」」」」
「うむ!先ずは風呂に入って身綺麗にしてから、出陣している間の事を話そう!客人も数多く居るからのう!」
皆さんこんにちは。20年ぶりに浜松城へ到着しました柴田六三郎です。前に来た時は、小さい子供だったので、
城は勿論だけど、周囲もバカでかく感じておりましたが、20年経った今だと安土城という比較対象があり、俺も大人になった事もあって、そこまで大きく感じなくなっております
そんな事を感じながら、家康の後ろの最上殿の後ろから着いていって、浜松城内に入りますと
「柴田殿!!」
俺を呼ぶ声が後ろから来たので、振り返ると
「酒井殿!久しぶりにございますな!」
20年前に将棋で戦って、酒井殿が挨拶に来ていた。久しぶりに会った酒井殿は
「柴田殿、元服後の鬼神の如き武功の数々、出陣した戦の少ない拙者の耳にも入っておりますぞ!
いやあ、幼い頃に将棋で戦った時から、軍略の才が素晴らしかったですからなあ。どうですかな?落ち着いたら、二十年ぶりに将棋を一戦」
俺に久しぶりの将棋の対戦を申し込んで来た。すると、酒井殿の後ろから
「待て待て待て!小五郎!柴田殿と将棋で戦うのは、儂が先じゃ!二十年前の借り、必ずや返す!」
鬼日向さんが走って来ました。うん、この感じは20年前から変わってないな。で、俺達の元に到着した鬼日向さんは
「柴田殿!久しぶりじゃな!戦においての凄まじい武功は、儂も聞いておる!だが、二十年前と違って、儂も何度か出陣して、賢くなったぞ!
今なら、きっと将棋で勝てるはずじゃ!さあ、勝負と参ろうではないか!」
俺の予定を聞かずに将棋の対戦を申し込んで来た。この辺の猪突猛進度合いも変わらないなあ。懐かしいなあ
でも、流石に今回は二十年前みたいに少しだけ家康と話して終わりじゃないのです。なので
「藤十郎殿。将棋の申し出はありがたいのですが、少しばかり休ませてくだされ」
少しだけ休ませてくれと頼むと、鬼日向さんは
「少しとはどれくらいじゃ?一刻くらいか?それくらいならば待つとしよう!だから」
「一刻くらいなら待つぞ!」とアピールしております。ですが、そんな鬼日向さんの後ろから
「これ!藤十郎!柴田殿に無礼でははいか!!」
鬼日向さんの親父の水野殿が、大声で叱責しております。これも二十年前と変わらないなあ
「父上!拙者は、二十年前に交わした約定を」
こうやって、鬼日向さんが言い訳しようとするところも変わらねえな。まあ、とりあえず場の空気を変えるか
「水野様、お久しぶりにございます」
「柴田殿。誠に愚息が申し訳ありませぬ。戦の後で疲れているというのに」
「いえいえ、藤十郎殿と小五郎殿のお気持ちも、分からぬわけでもないですから。
「そう言ってもらえて、忝うございます。殿から文で事前に知らされましたが、於義伊様の初陣だけではなく、元服の儀と祝言に参加してくださるとの事ですな」
「ええ。於義伊殿の元服の儀と祝言の後に、甲斐国へ戻りまして、右府様と共に安房国の里見家の家督相続の儀に出席し、その後、常陸国の佐竹家に顔を見せて、
陸奥国南部に領地を持つ伊達家の二男の元服の儀に出席する事になっておりますので、あまり長居は出来ぬのです。祝いたい気持ちはあるのですが」
俺の予定を聞いた水野殿は
「そ、それは何とも、予定が詰まりに詰まって、おりますな」
軽く、いや、かなりドン引きしてます。まあ、俺自身も引いてますよ。だってねえ、未来で言うところ千葉県の南の端っこくらいの場所から、
茨城県の中央あたりへ移動して、そこから更に、福島県へ移動するのですから。はっきり言ってトチ狂っているとしか思えません!でも、大殿が行くと行ったら
俺も行くしかないんです。池田様でも良いと思いますよ?でも、推定五十代後半くらいの池田様と還暦に突入した大殿の長旅なんて、
無茶苦茶過ぎると、俺ですら思います!でも、これと言った訳ありさんも穴山家の3人で終わりだろうし、
流石に、今回は出席してすぐに終わりだろう!そうでないと俺の胃がもたない!来月の中頃に甲斐国へ戻って、そこから陸路で安房国へ向かうとして、
うん、早くても到着は睦月の後半だろうな。そこから常陸国へ移動するのに1ヶ月の予定を見ると、到着は弥生の中頃になる。そこから更に1ヶ月かけて
会津に行くとなると、あれ?この行程で予定通り進んでも、実家に到着するのは、おおよそ10ヶ月後か11ヶ月後、実質1年じゃねーか!
俺だけなら、赤備えの皆のペースで移動出来るけど、大殿が居る中でそれをやったら、大殿が倒れてしまう可能性がある!そんな事になったら、俺が本能寺したと見られてしまう!
そんなのはゴメンだ!チクショー!こうなったら、輿を作って大殿を乗せて、赤備えのペースで移動するか?
それとも、瀬戸内で簡易的に作った馬車をまた作って、それに大殿と蘭丸くんを乗せて、早く移動出来る様にするのも良いかもしれない!
ああもう!やる事が多すぎてパニックだよ!仕方ない!今日はさっさと寝よう!こんな時は寝るに限る!
色々と考えた結果、六三郎はさっさと眠りにつこうと決めたが、有名人になりすぎた六三郎が簡単に眠れない事を、六三郎本人が知るわけがなかった。




