2つの予想外過ぎる展開
天正二十一年(1593年)十月六日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「六三郎様、随分とお疲れの様ですが」
「何か、私達が手伝える事はありませんか?」
「私達にも、お役目を振ってください」
皆さんこんにちは。前日に、大殿より保護した穴山家の姉弟の事を、武田家の面々に伝える様に注意されました柴田六三郎です
なんとか、皆さんが揉めない様に顔を見せたいと思っているのですが、そう簡単に物事が進むわけないと思っております
その事を考えながら、赤備えの皆と身体を鍛えて、ワインを含めた酒作りを進めて、今の時点で呑ませて良い酒を諸将の皆さんに呑ませたら
「何と美味い!」
「これが麦から出来ておるとは!」
「ワインと言う酒も初めて呑んだが、日の本の酒とは別物の美味さじゃ!」
「熟成させた年月で、味が変わるとは」
とても、盛り上がっておりました。そこから、大殿へ葡萄の購入方法を聞いたり、俺に葡萄の育て方を聞いたりして来て、とりあえず教えられるだけ教えましたが
これ、冷静に考えたら、朝から酒盛りしていますね。そんな酒盛り大名の皆さんの中で、
最上殿から、予想外過ぎる展開の言葉を言われました。その内容とは
「最上殿、誠に拙者の実家に来るのですか?」
「ええ!駒を送りながら、柴田殿の義弟である斎藤新三郎殿や親族の方々は勿論、柴田殿の両親にも挨拶をしたいのです!よろしいでしょうか?」
まさかの「俺の実家に行く!」でした。俺も大殿も居ない状態で、大大名がいきなり実家に来たら、親父もお袋も利兵衛も倒れないか?
そんな不安が頭の中によぎっておりましたが、そんな俺の考えている事を読んだのか、大殿から
「六三郎よ、お主の事じゃから、最上出羽守達がお主の家臣の先導で実家に行くと、権六や市が驚くと考えておるのじゃろう?
それならば、玄蕃に先導させたら良い!お主からの文を持たせて説明させよ。お蘭!玄蕃を連れて参れ!」
「ははっ!」
「佐久間玄蕃に、お主の代わりで先導させたら良い」と言われて、その事を伝える為に蘭丸くんが鬼玄蕃さんを連れて来る事になって、あっという間に連れて来ましたら
「佐久間玄蕃、お主に少しばかり役目を申し付けるぞ!」
「ど、どの様なお役目なのでしょうか?」
「うむ。実はな、そこに居る最上出羽守の娘と、六三郎の義弟が見合いをする事になった。本来ならば六三郎が先導したら良い話なのじゃが、
六三郎は儂と共に、安房里見家の家督相続と、陸奥伊達家の次男の元服の儀に呼ばれておるので先導は無理じゃ!そこで、玄蕃よ!
お主、六三郎の代わりに最上出羽守達を柴田家へ先導せよ!播磨国が柴田家の新たな本拠地になったのじゃが、まあ播磨国に入れば、すぐに分かる!なので、頼んだぞ!」
有無を言わさずに、命令内容を伝える。命令内容を聞いた盛政は
「大殿、他の方の手は空いてないのですか?最上様の軍勢だけでも一万以上の大軍ですので、大役過ぎますし、勝蔵の方がこの様な役目に慣れていると思うのですが」
大役だから断りたいと伝えるが、信長は
「出陣するわけではないのだから、肩の力を抜け!それに、此度はお主しか出来ぬのじゃ!勝蔵の領地は美濃国なのじゃ、播磨国へ行かせては二度手間じゃ!
他の者達の領地も東国じゃ。二郎三郎に頼むわけにもいかぬ。その結果、近江国に領地を持っておる、お主しか頼める者が居らぬ!だから玄蕃よ、引き受けてくれ!」
盛信にしか出来ない理由を細かく伝える。信長の言葉に盛政は
「その様な理由が、、分かりました。そのお役目、お受けします」
盛信が了承した事で、義光は
「いやあ、佐久間殿、忝い!誠に忝い!それでは、右府様、柴田殿!拙者は駒にこの事を伝えるので、失礼!」
盛政に礼を言って、部屋から出て行った。残った面々のうち、六三郎が信長に
「大殿、例の件も念の為に、伝えておきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「うむ、そうじゃな。六三郎、高代と共に連れてまいれ」
「ははっ!」
穴山姉弟の事を伝える事を提案して、信長もそれを了承し、六三郎へ高代と共に連れて来る様に命令した。命令を受けた六三郎は高代と君花を呼ぶ為、
一旦、部屋を出る。そして、2人を連れ出して信長と盛信の居る部屋へ戻って来る。2人を見た盛政は
「あの、大殿?高代殿は、六三郎の側室なので、この場に居るのは、納得、ですが、何故、侍女の方が一緒に、居るので、しょうか?」
何故か、辿々しい口調になった。そんな盛政を見て六三郎は
(おや?何故か、鬼玄蕃さんの口調が面白い事になったぞ?でも、この感じ、何処かで見た事あるような?)
何処かで見た事あると思っていたが、思い出せないので、そのままにした。そんな事を考えていたら、信長から
「さて、玄蕃よ。高代の侍女がいる事を疑問に思ってある様じゃな。だが、これもお主にしか出来ぬ事じゃ。六三郎、お主から説明せよ!」
一旦、盛政を落ち着かせて、六三郎から説明させる。話を振られた六三郎は
「はい。それでは玄蕃の兄上。高代の侍女ですが、名を穴山君花と言います。この君花の父は、9年前、武田家を壊滅寸前まで追い込む謀反を起こしました
その謀反は失敗に終わりましたが、その余波が残された家族である君花達に来る事を恐れた、君花達の母親は、甲斐国と武蔵国の境に落ち延び、それ以降、
そちらで暮らしておりましたのです。ですが拙者が甲斐国へ戻る道中、野盗に襲われていたので、野盗討伐をしたら、君花から「召し抱えて欲しい」と希望されたのです
ですが、武田家の面々が君花達の存在に気づいて、手討ちにする可能性もあります。虎次郎殿の元服後に武田家面々にもこの事を伝えます
そこで、最上殿を拙者の実家に先導する際、高代の侍女として、君花達を連れて行ってくだされ」
盛政に説明した。説明を聞いた盛政は
「その様な事情があったとは。分かった。六三郎よ、儂に任せよ」
少しばかり、顔を赤らめていた。それを見た高代が
「ほほほ。玄蕃様、お顔が赤くなる程、君花に見惚れたのであれば、此度のお役目の後、君花を嫁に迎えてはどうですか?」
爆弾発言をぶっ込んで来た。指摘された盛政は
「た、た、た、高代殿?」
分かりやすく動揺していた。その様子に六三郎は
(ああ、三七様と菫の時も同じだったな。既視感は、これだったか!)
納得していた。そして、盛政の様子を見て信長も
「玄蕃、お主の正室は数年前に亡くなっておったな?それに小さい娘も居たのじゃから、母親は必要じゃろう?此度の役目を成し遂げたのであれば、
褒美のひとつとして、君花を嫁にしたら良い。君花も、それで良いか?」
盛政へ、褒美のひとつとして君花の嫁入りを提案し、君花にも確認すると、君花は
「私は二十歳の行き遅れで、嫁入りを諦めておりました。そんな私でも、嫁にもらってくださるのであれば、佐久間様へ嫁ぎます」
「自分みたいな行き遅れをもらってくれるのであれば」と、話す。その言葉に盛政は
「君花殿。その様な事はありませぬ。此度のお役目、しっかりと成し遂げます!なので、柴田家に連れて行った後、嫁に来てくだされ!」
君花にプロポーズした。盛政なプロポーズに君花は
「はい。お役目の後に、佐久間様へ嫁ぎます。ですが、今は私の事より、お役目に集中してください」
プロポーズを受けたが、盛政が浮かれない様、嗜めた。そのやり取りを見た信長は
「はっはっは!玄蕃よ、君花は良い嫁になるじゃろうな!じゃが、君花の言うとおりじゃ!先ずは役目に集中せよ」
「ははっ!」
盛政に改めて役目に集中しろと伝える。こうして、六三郎が気にしていた、里見家と伊達家の慶事への出席中の心配事は無くなった。




