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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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悪魔の囁きは逆効果です

元亀三年(1572年)十二月十六日

遠江国 浜松城大広間にて


「さて、頭は冷えたか?」


「ははっ。昨日は興奮し過ぎておりました」


「同じく」


「某も同じく」


前日と違い、家臣の顔も口調も落ち着いていたので家康は今回はまともな軍議が出来るだろうと期待していた


「さて、改めてじゃが武田と戦う事は確定じゃ。だが、戦いは籠城戦か野戦か?皆の考えを聞かせよ」


「では拙者から」


「小平太か。聞かせよ」


「拙者は野戦が良いかと」


「何故じゃ?」


「この浜松城より東側の城は武田に全て落とされてしまった以上、籠城は無意味。野戦で戦うべきかと」


「うむ。確かに遠江国では、この浜松城以外に籠城に適した城は三河寄りの西側にしか無い。小平太の考えも間違いではないが。他には?」


「殿、三河に近い場所だと美濃と三河の境の岩村城からの武田が攻めてくる可能性もあるかと」


「それでは武田の本隊と合流してしまうか。それは避けねばならぬ。やはり野戦しかないのか?」


軍議が煮詰まって来たところ、突如廊下から大声と走る足音が聞こえてきた


「注進!注進でござる」


「何事じゃ?武田が攻めて来たのか?」


「武田が、武田が文を送ってまいりました」


「どの様な者が送って来たか覚えておるか?」


「赤い甲冑で統一した騎馬武者達が二、三名で持って来ました」


「文を渡す時にその者達は何か言っていたか?」


「騎馬武者達の首領と思しき者から、「文の中身をよく吟味しろ」と言っておりました」


「文を持ってまいれ」


家康は若武者から文を受け取った。そして、その場で読みながら


「おのれ〜!!!武田め!儂らを何処まで愚弄する気じゃ!」


家康の怒りに家臣達はたじろいだが、そんな中で本多忠勝が


「殿。武田はどの様な事を?」


質問した事で家康は少しだけ冷静になった


「武田に降伏しろとある。更に「武田に与して織田への攻撃に参加するなら駿河国を返却し遠江国と三河国を安堵する。降伏しないなら五日後に徳川を壊滅させる。織田家からの援軍がどれほど来ようとも、まとめて叩きのめす。今日から四日の間、よく考え家臣達と話し合え。四日後に文を受け取りに来る。その間は攻撃を止めてやる」と書いてある」


「なんと不躾な内容。ここまで我等徳川を馬鹿にするとは!」


「殿!ここまで虚仮にされては、どうせ降伏すると嘗められているのです。その様な者達は信用なりませぬ!ここは戦うべきです」


「そうですぞ殿!」


「殿!」


「殿!」


「殿!」


「皆の気持ちは分かった」


「ならば殿」


「だが四日の猶予がある今こそ策を考える好機!今のうちに兵を集めて策を決める!皆、覚悟を決めよ!」


「「「「おおおお!!!!」」」」


武田からの降伏要請は徳川家を一致団結させるという想定外の結果になった

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