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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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親父は指導中。俺は絡まれ中。

元亀三年(1572年)十一月二日

遠江国 浜松城内にて


「えい。やあ。とお」


「うわあ!」


「次!」


「拙者が参ります!」


「来い!」


「そりゃあ」


「むん!」


「うお?」


「次!」


「では拙者が」


おはようございます。現在出張先の遠江国の浜松城内で親父が徳川家臣の子供達への槍の指導を見学中の柴田吉六郎です。


お前は指導を受けてないのか?と思う人も居るでしょうが、最初は俺と家臣の飯富兄弟だけだったんですよ。朝4時くらいから。


ですが、時間が経つにつれて起きて来た徳川家臣の皆さんが俺達の訓練を見て子供を叩き起こして「我が子も鍛えてやってくれ」と頼むものだから、


同盟関係の家に悪印象を持たれたくない親父は俺達の訓練を終了させて、徳川家臣の子供達の訓練に変更となったわけです。


まあ親父が此処で「我が子の鍛錬が最優先」なんて親バカかます様な人だったら織田家で重臣のポジションまで行かない平のポジションで終わってしまうだろうけど、


政治家としてもそれなりの腕がある人だから徳川家臣の子供達優先になるのは当然です。


で、やる事の無くなった俺達三人なんだけど、暇つぶしにブラブラしてたら


「柴田吉六郎殿」と俺を呼ぶ声が聞こえて来たので振り向くと


「昨日は色々と話してくださりありがとうございます」


と昨日見たイケメンが挨拶してきた


「え〜と貴方様のお名前は?」


「失礼。拙者井伊万千代と申します。昨日殿の後ろに控えていた小姓にございます」


「ああ。そう言えば。で、その井伊殿がどの様なご用で拙者に?」


「吉六郎殿に拙者個人が色々聞きたいと思いまして。少々お時間宜しいでしょうか?」


「構いませぬが。家臣の二人も共に宜しいですかな?」


「構いませぬ。どうぞこちらへ」


まあ、暇だし親父に見つかるよりはいいか。


で移動した部屋へ行くと


「どうぞ楽にしてくだされ」


本当に井伊殿だけだった。


「ではお言葉に甘えて」


俺は胡座をかいて座る。そこから井伊殿が座って


「来ていただき忝い。では幾つか教えていただきたい。先ず吉六郎殿は元服前であると言うのは誠でございますか?」


「ええ。元服前どころか十歳にもなっておらぬ今年で八歳の小童にございます」


「なんと!では何故その歳で武田と戦う事を決めたのですか?吉六郎殿のお父上である柴田様は幼い我が子を最前線に送る様なお方には見えないのですが?」


うん。やっぱり小さい間違いを幾つかしてますね。面倒くさいけど訂正していきましょうか


「井伊殿。先ず武田と戦う事ですが、武田と進んで戦う事を決めたのではなく、「戦わざるを得ない状況になったから」戦っただけです。そして父上は拙者を最前線に送ったわけではなく殿の命令で領地替えになり、新たな領地があの場所だっただけなのです」


「な、成程。で、では何故吉六郎殿は武田が攻めて来ると分かった時に逃げなかったのですか?元服前ならば逃げても誰も責めぬと思いますが」


「それは領主の子であるからこそ逃げてはならぬ!と思ったからです。


武田が攻めてくるからといって拙者が逃げては父上への信頼か無くなり、ひいては美濃国を治める織田家への信頼が無くなる事に繋がります。


命をかけて領民を守る事は巡り巡って国と主家を守る事になると思っているからこそ逃げてはいけない!と思ったのです」


「何と見事な」


「それに徳川様を始めとする一部の方は拙者を「神童」などと持ち上げておりますが、美濃での戦は柴田家と親戚の佐久間家、


そして武辺者が揃う森家の方達と柴田家を慕う領民のおかげで武田を撃退出来たのです。拙者は誰かの首を取った訳ではないので、武功とは思っておりませぬ」


「何とも謙虚な考えですな」


「前線で死ぬかもしれない者達の武功ならまだしも、後ろで策を出して隠れながら攻撃する者の武功と言っては角が立つと思っておりますので」


「幼いながら見事な考え。見る方向が違うと考える事も違う事を実感いたした。感謝いたします。長い時間を取らせて申し訳ない。お部屋にお戻りお休みくだされ」


「では、お言葉に甘えて」


こうして俺達は井伊殿の部屋を出た。まあ、井伊殿が俺の話を聞いて何か得られたかは分からないけど、それを聞くのは野暮だからスルーしよう。


で、俺達が部屋に戻っている途中だった


「待たれい!お主が「柴田の神童」じゃな!儂と戦え!」


井伊殿とは違う声、しかも面倒くさい感じのする声に呼ばれた。

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― 新着の感想 ―
ハハハ…まずは元服しているかどうか?でしょうか。 元服前ならともかく、大人が元服していない童に突っかかるのは如何なものかと。
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