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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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厳しい?いえ甘々です。

大広間に残された勝家と二百人はだったが、見合っていても仕方ないので、勝家から話し始めた


「殿から紹介されたが、一応自己紹介しておこう。吉六郎の父親の柴田権六勝家じゃ。見た目で分かると思うが、殿より年上で今年五十ニの年寄りじゃ」


「吉六郎様のお父上様。お初にお目にかかります。飯富源太郎晴昌にございます」


「うむ。改めての自己紹介感謝する」


源太郎が代表して挨拶したが、全員勝家の見た目に年齢を疑っていた。この時代の五十代は年寄り扱いなのは間違いないのだが、勝家の体は筋骨隆々で座る姿勢も美しく、顔の皺以外は四十代になったばかりと言われても納得出来る程だからだ


そんな中勝家から突如


「お主達は本当に、吉六郎の家臣になる。と言う事で良いのか?親の儂が言うのもなんだが、あやつは未だ元服どころか十歳にもなっておらぬ小童なのだぞ?お主達は見たところ元服は全員終えておるどころか、初陣も経験しておる様じゃが、その様な者達が」


「柴田様。お言葉ながら、我々が属していた武田は、その「元服どころか十歳にもなっておらぬ小童」の策に最初から最後まで翻弄され続けたのです。


その結果、武田の大将だった秋山某が急いで撤退する状況に追い込まれた程。あの逃げっぷりは正しく潰走。と言ってよいかと。もっとも我々は吉六郎様が戦上手だから臣従すると決めた訳では無いのです」


「どういう事じゃ?」


「吉六郎様は我々が捕虜だった時も、普通の人として扱ってくださいました。弟の源次郎が反抗的な態度を取っていた時に腹の虫が鳴った時には、


「腹が減っているのだから気が立っているのだろう。先ずは飯を食え」と二百人全員分の飯を食わせてくださいました。それだけでなく、武芸の鍛錬もさせていただき、更に風呂にまで入らせていただきました。


甲斐に居た時は父上の罪を理由に蔑まされておりました。しかし吉六郎様は父上の罪の話を聞いても蔑むどころか、「辛い事を思い出させて済まぬ」と頭を下げてくださいました。


そして、拙者が岩村城から戻って来た時も「自らの命を捨ててでも家族と仲間を守りたいと思う者は強く信頼出来る」と仰ってくださいました。


その横で利兵衛殿は、「若様は源太郎殿が戻るまで此処を動かん!」と言って待っていたのです。と教えてくださいました。


敵であっても、これほどの器の大きさを見せてくださるのです。だからこそ、吉六郎様に仕えよう!と心に決めたのです」


源太郎の真剣な態度での話に勝家は、


「そうか。そこまで言うなら何も言わぬ方が良いな。しかしあ奴は領地も無ければ、皆に渡せる俸禄も無い。どの様にして暮らしていくのじゃ?」


源太郎達に質問したが、源太郎達は


「それなら、吉六郎様は領民の皆様と共に育てた野菜と鹿や猪の干し肉を近くの大きい町や村に行って売って金に変えていました」


「あ奴は、その様な事をしていたのか?」


「ご存知無かったのですか?」


「うむ。あ奴はその様な事を一切言わなかった。領地に戻ったら説教しないといけぬ」


「お、お待ちください。吉六郎様は、その金で我々の為の米を買っていたのです。責めるなら吉六郎様ではなく我々を責めてくだされ」


「何?」


「吉六郎様は我々に対して「父上は織田家の同輩の方々が屋敷に来た時に飯も酒も無いなどあってはならぬ!その場合は、無理をしてでも振る舞え自らの飯が減ってもじゃ」と言っていたと仰っていました。


そこで吉六郎様は、「此度は儂の得た金が減ってでも、皆に飯を振る舞う。父上と同じ事をするだけじゃ」と仰っておりました。なので、責められるべきは我々でございます!」


源太郎達は全員、勝家に平伏した。それを見た勝家は


「分かった分かった。お主達の気持ちは良く分かった。此度の事、吉六郎は不問にしよう」


「誠に有難うございます」


「さて、夜も遅い刻限じゃ。源太郎以外は戻って良い。源太郎、少しだけお主と話がしたい。良いな?」


「ははっ」


勝家に言われて源太郎以外は大広間を出た。残された源太郎は、何を言われるか分からず緊張していた。そして、出ていった者達の足音が聞こえなくなると


「源太郎」


「は、はい」


先程以上に真剣な勝家が話しかけた


「源太郎、儂は先程も話したが五十を超えた年寄りじゃ。そして、現在織田家は毎日戦をしていると言っても過言ではない程の連戦続きじゃ。


その様な状況だからこそ儂も戦に出陣しておる。明日死ぬかもしれね身だからこそ、もし万が一の事が起きたら吉六郎を戦で補佐してやってくれ」


勝家はそう言いながら源太郎の手を握って来た


「お、お父上様?拙者は吉六郎様とはまだ」


「分かっておる。出会って間もないからこそ、この様な頼まれ事は重く辛いと申すのであろう。


だが、殿と対峙した時の源太郎は吉六郎の手本になれると思えるほど立派であった。


それだけでも万が一の事が起きた場合は、源太郎達を頼りたいのじゃ!あ奴に兄弟は居ない、


佐久間玄蕃の家が親族ではあるが、別の場所で戦をしていたら己の事で精一杯になるだろうから、頼れる者が居らぬ」


「利兵衛殿では駄目なのですか?」


「利兵衛は儂と対して変わらぬ年寄りじゃ。内政や留守居役なら対応出来よう。だが、戦に関しては頼りになる者が居らぬ。


家臣の子らは吉六郎と年が変わらぬ。儂が戦で死ぬ場合、恐らく家臣の多くも討ち死にしているであろう。


そうなったら利兵衛しか吉六郎を補佐出来る人間が居ない事になる。それでは織田家の先陣を常に担う柴田家として駄目なのじゃ!


臣従したばかりの源太郎達に頼むのは、可笑しな話と承知しておる。それでも吉六郎の為に「我々を責めてくれ」と言ってくれた源太郎達なら信頼出来ると思ったからこその願いじゃ」


「分かりました。お父上様、いえ大殿。ですが、何卒長生きしてくださいませ。吉六郎様の元服や祝言も見ないで死ぬ可能性など、吉六郎様が不憫でございます」


「済まぬな。年寄りになると悲観的な気持ちが出て来てしまう。此度の事は、他言無用。吉六郎にも言ってはならぬぞ」


「ははっ」


「うむ。では夜も遅いから戻って休んでくれ」


勝家に言われて源太郎は大広間を出た。そして戻る道中


(大殿があの様に優しく剛毅な性格だから、吉六郎様も同じ様に育ったのだろう。似た者親子とは、あの様な感じかもしれぬな)


勝家と吉六郎の事を考えながら、部屋に戻った

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