子供は休め!
さて、何とか武田軍を追い返したわけだが、ただ追い返した数が推定とは言え討ち取った数とほぼ同じという嬉しい誤算が起きたんだけども
正直眠い!!推定で午前三時くらいだし、戦の後は気持ちが昂って興奮が止まらないと聞くけど、そんなのは大人だけだろ。やべえ、ふらふらしてきた。俺がそんな事を考えていると
「吉六郎!しばし休め!今のお主では動けぬ!降伏した者達等の見張りは我々に任せて休んでおけ」
佐久間さんにそう言われながら、小脇に抱えられて屋敷に連れられて
「利兵衛殿。吉六郎を休ませてやってくれ」
利兵衛に渡されたら、そこで意識が途切れた
こうして吉六郎が眠りに落ちて佐久間、森の両家が見張りについた。しかし、どちらの兵も大将も戦国最強と言われる武田軍を倒した事で、気持ちの昂りが止まらなかった
「の、のう。誠に我々があの武田の軍勢を倒したのだよな?夢ではないよな?」
「儂も今だに信じられぬ。だが、此処にある武田の兵の死体や、降伏した者達が居るのじゃ。夢ではない」
そこかしこで同じ様な会話が行われていた。そして、静寂が一瞬訪れると
「「「「「「うおおおおお」」」」」」
「えいえいおー」
「えいえいおー」
「えいえいおー」
勝ち鬨の声と喜びの声が爆発した。武士なら誰もが武田軍の強さを知っているからこそ、今回の戦での勝利に歓喜している。そんな兵達に負けずに大将である佐久間盛政も森長可も興奮していた
「玄蕃。儂は今だに此度の勝利に気持ちの昂りが」
「儂もじゃ勝蔵!吉六郎の手前、落ち着いている様に見せたが、昂っておる!あの武田を我々が倒した!それもただ倒しただけではなく、壊走させた。たとえ武田の主力の赤備えではないとは言え、それでも武田を倒した事には変わらぬ!」
二人が話していたが、ふと間が空いたら落ち着いてきた佐久間盛政が森長可に質問した
「勝蔵よ。此度の戦、我々だけだったら勝てたと思うか?」
「いや。我々だけだったなら、力攻めしか出来ないから兵達を無駄死にさせていただろう。それどころか全滅もありえたと思う」
「やはり吉六郎の策と吉六郎を慕う領民の存在が大きいか?」
「間違いなくな。普通の武士なら「敵を分断させて各個撃破する」などとは思い浮かばないであろう。それに自ら危険な場所に行く大将もそうそう居ない。そして、あ奴の為なら命を捨てても構わないと考える領民もな」
「叔父上が言っていた「童の悪知恵」などでおさまらぬ。これで元服前なのだ。末恐ろしい」
「ま、まあ。今は吉六郎の行く末よりも戦の勝利を喜ぼうではないか」




