子供の策でもどうにかなる筈！

「ふむ。確かに幼いとは言え、叔父上の代理で領主を務めておる吉六郎なら何かしらの策を考えてもおかしくないな。吉六郎よ聞かせてくれ」

「うむ。柴田様がおっしゃっていた「悪知恵」と言うやつだな。確かに気になるな。聞かせてくれ」

どうも皆さん。現在、家臣に無茶振りをされて年上の脳筋コンビに見られて頭の中がパニックになっている柴田吉六郎です。

いやー、正直言って武田軍と戦う場合、信玄坊主が居るか居ないかで、どう対応するか変わってくると子供ながらに思うわけなんだが。

ただ、史実どおりに武田の西上作戦が実行されているなら、信玄率いる武田本隊は甲斐国から出発して、

駿河国を抜けて遠江国の三方ヶ原で徳川家と織田家の連合軍を叩きのめすから、岩村城に居るのは本隊ではない！と、言う事だけど。

ただ、岩村城って駿河国にも遠江国にも近いから、わざわざ一回北上して俺達を叩いてから本来の進路に戻るなんて事をやるか？なんて思うけど、利兵衛も「武田と戦をするなら、マトモな戦になると思うな」と言ってたし、攻撃してくる事を前提に考えろ！とも言ってたし。

う〜ん。これは物見を多めに使った上で、この策を言ってみよう！

「森様、兄上。童の思いつき、と言いますか勘と言いますか、先ずは策を聞いてくだされ！利兵衛、お主もじゃ」

「「よし、聞かせよ」」

「若様、お願いします」

「うむ。先ずは信濃国と飛騨国の国境に物見を放つ。そこで軍勢が来ない事を確認したら、南の岩村城からの軍勢のみに集中する為に籠城戦と同時に、いつでも出陣出来る様に準備してくだされ！」

「我々が籠城戦をするのか？」

「武田の軍勢は我々と然程変わらぬとは言え」

「なるほど、若様。先程の御二方の策を逆の視点で見られたのですな」

「「逆とは？」」

やっぱり利兵衛は脳筋さん達より戦の経験が豊富だから、気づくのが早いな。

「森様、兄上。武田は何故、この時期に自身の本国より離れた美濃国に侵攻したと思われますか？」

「それは甲斐国は海の無い国だから、駿河国と遠江国を奪う為の先手では？」

「それも含めての領地拡大の為だと思うのだが」

半分くらいは正解と言っていいかな。ただ、ここから先は妄想と思われるはずだけど、話しておこう

「森様、兄上。確かにそのお考えも正しいでしょう。ですが、だとしたらわざわざ海を奪う為なら、屈強な御家である徳川家の領地である遠江国を奪わずとも、飛騨国を通って越前国を奪えば宜しいと思いませんか？」

「それは確かに」

「では、武田の狙いは東海道の制圧か？だとしたら、徳川家の領地だけでなく、織田家も」

「そうです。武田は駿河国を抜けて、恐らくほぼ全軍と言ってよい規模の行軍を行い、徳川様の領地の遠江国と本国である三河国を奪い、最終的には織田家も叩き、京へ上るつもりかと思われます。

そんな中、我々の様な小勢に負けた！などと言われようものなら、武田の士気は下がるでしょう。その為にも森様、兄上。種子島とも火縄銃とも武器は持ってきておられますか？」

「儂の軍勢はニ十丁程の種子島は持って来たぞ」

「儂も同じくニ十丁程じゃ」

俺の手元にある火縄銃もどきと合わせて七十丁か。二人の火縄銃は正しい使い方をしてもらって、俺のはゲリラ戦で使おう！

よし！策は決まった！

「森様、兄上！此度の戦は武士の忠義心につけ込みますぞ！利兵衛！儂の初陣じゃ！敵の将兵の首を取れずとも、撤退させたら儂らの勝ち戦じゃ」

この策なら天才軍師や戦上手が居なくても何とかなる筈だ！