脳筋さんが欲しい!と言った覚えは無い!
プライベートがバタバタしてしまって、5ヶ月も放置してしまいまして、申し訳ありませんでした。
元亀三年(1572年)十月八日
美濃国 柴田家屋敷内にて
お久しぶりです。柴田吉六郎です。紫乃さんに援軍の書状を渡して、親父以外の誰かが来るだろうと予想はしていました。
希望としては秀吉が来て、秀吉の家臣で天才軍師の竹中半兵衛が見事な策を披露して、俺は何もせずに武田軍が去っていく!なんて展開を夢見ていたのですが、どうやら神様は元服前の俺に
「働け!過度な労働をしろ」と言ってる様ですね!チクショー!ああ、すいません。目の前に居る戦闘狂、いや戦馬鹿、どちらの呼び方も失礼ですね!オブラートに包まず「脳筋」と呼びましょう。
改めて、そんな脳筋さん達と今後の話し合いをしましょう
「森様、そして玄蕃の兄上。援軍に来ていただいた事、誠に有難う御座います!」
「うむ。武田の本隊ではないかもしれぬとはいえ、我々森家の武勇を見せる好機と思ってな。それにお主の立派な心意気に打たれたぞ。安心せい!武田なんぞ、我々が蹴散らしてくれる」
「全く勝蔵は分かりやすい男よな。しかし吉六郎。お主と以前会ったのは、お主の母御殿の葬式であったが、あの時から賢く強い子であったが、あの時以上に賢く、そして強くなっておる様じゃな!兄として儂は嬉しいぞ!これより先は儂と勝蔵に任せておけ!」
言ってる事はとてもありがたい言葉だし、嬉しいけど、正直二人が率いて来た軍勢が力攻めしただけではどうにかなる程、武田軍は単純じゃないし、岩村城も弱っちい城じゃないと思うんだよねー。どうやって攻めるか、聞いてみるか
「森様、そして兄上。つかぬ事をお聞きしますが、どの様に武田を攻撃するのですか?」
「それは決まっておる!岩村城を包囲しての力攻めじゃ!」
おいおい、鬼武蔵さん。ここには、城門を壊す道具も無ければ、城内に内通者を作るコネや伝手のある人間も居ないのですが?他の案も聞いてみよう
「玄蕃の兄上は?」
「包囲する事に関しては勝蔵と同じだが、包囲に耐えきれず野戦を仕掛けて来た時に叩く!これが時間はかかるが、良案じゃと思うぞ」
やっぱり親戚さんもほぼほぼ同じ考えか。まあ、だろうな!とは思っていたよ。
だって、目の前の鬼玄蕃こと佐久間盛政は、史実では前田利家の裏切りが有ったとはいえ、賤ヶ岳の合戦で親父の「砦を落としたら戻って来い」の命令を無視して、砦の先の秀吉の軍勢を攻めに行って、
最終的に逆襲を喰らって捕縛された程の脳筋なんだよねー!俺より戦経験は豊富なんだけど、正直嫌らしい策を考えるタイプの武将とは相性悪いんだよね。どう説明しようか。俺がそう考えていると
「若様、森様、佐久間様。発言してもよろしいでしょうか?」
利兵衛だった。二人も発言を促す様にしたので、利兵衛は喋りはじめた
「失礼ながら、若様の家臣として仕えております、佐藤利兵衛道長申します」
「利兵衛殿の事は道乃と三吉の件で見た事はあるぞ」
「うむ。儂も知っておるぞ!して、利兵衛殿。どの様な事を申すのじゃ?」
「では改めて、武田軍並びに岩村城の攻撃方法についてですが、先ほど御二方が申したやり方では、こちらが先に疲弊してしまいます」
「何故、そうなると言い切れるのじゃ?」
「そうじゃぞ、利兵衛殿。武田の本国である甲斐国はここより遠い。ならば、糧食や武器の不安は武田の方が強いのでは?」
「御二方。若様からの書状を思い返してくださいませ。書状の中には「信濃国との国境の為、信濃国の人間も攻めてくるかもしれぬ」と書いてありました。
御二方の策だと、包囲している時に信濃国と更に飛騨国から攻め込まれたら、逆にこちらが包囲されてしまいます。
人数もどれ程の数か分かりませぬ!その様な状況では、御二方の家臣の皆様が如何に精強であろうとも、無駄死にさせるだけでございます」
「「しかし」」
「御二方。相手は武田にございます!聞いた事あるであろう言葉、「甲州兵一人は尾張の兵五人に匹敵する」この意味は知っておりますか?」
「亡くなった父から聞いた事はあるが」
「儂は権六叔父上から聞いた事はある。しかし利兵衛殿。通常の戦ならば我々尾張の人間も負けてないはずじゃ」
「確かに通常の戦ならば勝てる、某も思います」
「ならば!」
「ですが、武田が通常の戦をすると思いますか?」
「それは」
「武田と戦をするならば、通常の戦にならぬ事を前提に考えてくださいませ。御二方の軍勢と若様を慕う領民を合わせても三千にも届きませぬ。
武田は多ければ三千を越え、少なく見積もっても我々と同数。城攻めは城側の三倍で攻めるが定石である事は知っておられましょう」
「それは悔しいが、利兵衛殿の申すとおり」
「ならばどの様にして武田を撃退するのじゃ?利兵衛殿」
「それに関しましては、若様!無策のままではおりますまい?若様の策を聞かせてもらえまするか?」
俺に振るなー!




