働かざるもの食うべからず。しかし仕事は分けましょう。
この作品はフィクションです。史実と違いますので、その点、ご理解ご了承ください。
元亀二年(1571年)一月二十二日
美濃国 美濃加茂村
おはようございます吉六郎です。現在、推定時刻は朝6時。そんな朝早くから美濃加茂村の入口に家臣の皆さんの内、200名程といくつかの小道具を持って領民の皆様が起きるのを待っています。
で、少ししたら仕事の準備で皆様が外に出て来ましたよ!さて、俺も仕事しますか。
「村の皆、朝早くから済まぬ!儂は新たに美濃国を治めておる織田家家臣、柴田権六の嫡男の柴田吉六郎じゃ。そして儂の後ろに居るのは家臣の皆じゃ」
俺が挨拶すると、皆が頭を下げて来た。
「頭を上げてくれ!皆の現状を変える為に来たのじゃ!村の長は一昨日詳しく話してくれた利兵衛爺と見て良いか?」
俺に呼ばれた利兵衛爺が前に出て来た。
「一応、儂が村の最年長になりますが」
「なら、村の皆をまとめやすいであろう?これから、この村を、ひいては美濃国を守る事になるからこその事を話すから利兵衛爺、人を集めてくれ」
俺が頼んで一時間後、
「吉六郎様、これがこの村の全員です。幼子も合わせて四百人程にございます」
(やっぱり人が少ないな〜。ざっくり見て大人の男が250人くらい、大人の女が100人くらい。しかも大人の男が細い。子供も数が少ない)
「うむ忝い。利兵衛爺よ、皆に少し働いてもらいたい」
「今から戦でございますか?我々では役に立ちませぬ。何卒ご容赦を」
利兵衛爺が頭を下げると、皆が一斉に下げた
「戦ではない!先程も言ったではないか。この村の現状を変える為に来たと」
「では、どの様な事を?」
「手伝ってもらう前に、我々柴田家から皆に飯を振る舞う!腹が減っていては何も出来ぬからな!男も女も関係ない!皆、先ずは食べよ!」
俺がそう言うと家臣の皆が持って来た簡単なお握りと味噌汁の入った入れ物を前に出した。利兵衛爺が
「誠に良いのですか?」と聞いてきたので
「毒など入っておらぬ。安心して食ってくれ!ただし、食ってからは働いてもらうぞ」
「では、ありがたくいただきます!」
利兵衛爺がそう言うと、大人達は最初に子供に食わせていた。中には泣いている母親も居た
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「うむ。安心して食ってくだされ!」
「お侍様ありがとうございます」」
俺より小さい女の子までガリガリだし、涙目だよ。これは気合いを入れて取り組まないとな。
そして半刻後
「皆、腹は満たされたようだな?では、やってもらう働きはいくつか有る。先ず、この村を野盗から守る為の柵を作ってもらうが、
木彫の得意な者か手先が器用な者にやってもらいたい。自信の有る者は男女問わず挙手してくれ」
俺が条件を言うと、10人の男と5人の女が挙手した
「15人なら、早いうちに完成するであろうな。挙手した15人は、あそこにいる家臣の元へ行き、やり方を覚えよ」
そう言うと15人を柵作り班の元に行かせた
「さて、利兵衛爺。次は米の不作を防ぐために田畑の状況を教えてくれ」
「田畑の状況と言われましても、他の国と同じく肥を撒いて米の苗を植えているだけですが」
(やっぱり、この時代の常識だから仕方ないけど、肥料なんて概念や知識が無いと直ぐ撒いちゃうか。
仕方ない。尾張国でやってたやり方を教えるか、あの時は、「田畑を休ませて、滋養ある土を作ってから撒いたら実り良い田畑が出来るんじゃないかな?」と
それとなく説明して、実践したら出来たから成功したけど、美濃国だと織田家の人間は余所者だから、話聞くか?)
「あの!お侍様!」
さっき涙目で飯を食ってた女の子が挙手して質問した
「お侍様は、もしかして田畑そのものを米や野菜が大量に出来るやり方を知っているの?だとしたら、私みたいな子供でも出来る?
出来るならやるよ!だから教えてください!お願いします」
「これ!道乃」
「利兵衛爺、もしやその子供はお主の孫か?」
「はい。今年で三歳になります。道乃の弟も居ますが生まれて間もない赤子の為、家で寝ています。道乃がご無礼をしまして申し訳ありません」
「別に構わん!それに道乃の申すとおり、田畑の実りの悪さを解決するやり方は知っている。それを教えるから、力仕事が得意な者はあそこに集まってくれ」
俺の指示に40人の男が移動した。他にも山の伐採、肥料作成、鹿や猪用の罠の作成に人を割り振りながら仕事の説明をして、この日は終わった。




