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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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強右衛門は折る!

天正三年(1575年)五月十六日

三河国 某所


前日の夕方頃に岡崎城を出発していた強右衛門は、長篠城まで残り20キロの距離まで来ていた。六三郎のうどんとおにぎりを食って体力が漲っているからか、それとも有益な情報を早く伝えたい心理からか、行きよりもペースが早かった


「はあ、はあ、はあ。長篠城まで残り五里じゃ。岡崎から三万もの大軍が来る事を早く伝えないと、長篠城が落城してしまう。最悪、全員討ち死にの可能性も」


しかし、頭の中には最悪な状況を考える程、長篠城を心配していた。それでも、定期連絡の狼煙を上げる事は欠かさずにやっていた。


それを見ていた長篠城の者達は


「強右衛門からの狼煙じゃ!城に近づいておるぞ!強右衛門は生きている!!我々も強右衛門に負けていられぬぞ!」


「「「おおお!!!」」」


落ちかけていた士気が上がり、全員の顔が希望に満ちていた


しかし、城側から見えるという事は、包囲している武田側からも同じく見えていた。


定期的に上がる狼煙に武田軍総大将、武田勝頼は


「足軽達を狼煙の方向へ向かわせよ!城側へ何かしらの情報を送っているかもしれぬ!その者を捕まえよ!」


「「ははっ!!」」


強右衛門に武田の魔の手が迫っていた。しかし、そんな事を強右衛門は当然知らないわけで、


「よし。この狼煙を上げたら残り二里じゃ。ここまで運良く武田に見つからずに来たが、最期まで油断してはならぬ。いざとなったら、柴田家の若様からいただいた武器を使ってでも」


強右衛門がそこまで言った時、


「怪しい者が居たぞ!」


「大人しく我々に着いて来い!」


「反抗したら叩き切るぞ!」


武田の足軽達に見つかってしまった。強右衛門は万事休すかと思ったが、右手の六三郎からもらった簡易ダイナマイトを見て


(ここが使いどころか!一か八かじゃ!)


片膝をついて、言う事を聞くふりをしながら、簡易ダイナマイトの紐に火をつける。それを見た足軽が


「何をしておる!?さっさと此方に」


そう叫ぶと同時に


「そりゃあ!」


強右衛門は簡易ダイナマイトを足軽に投げた。何も知らない足軽は


「何をしたかと思えば、筒を投げるだけとは。何と拍子抜けな」


そう言いながら、刀で切ろうとした。その瞬間


ドーン!!!


凄まじい爆発音が周囲に鳴り響く。投げた瞬間に逃げていた強右衛門は木の裏に隠れて様子を伺っていたが、煙が晴れてその様子に愕然とした


簡易ダイナマイトを切ろうとした足軽の首が吹き飛んで、切ろうとした体勢のままで死んでいた


それを後ろで見ていた足軽達は


「ひ、ひいいい!」


「あ、妖の術じゃあ!」


「こ、こんな奴に関わったら死んじまう!」


「逃げろ!!」


そう言って方々の体で逃げていった。それを見ていた強右衛門は


「助かった、のか?ま、まあ良い。狼煙に武田が気づいているなら再び狼煙を上げた場所に来るのは間違いない。ならば、このまま城に向かった方が良いな」


こうして強右衛門は、六三郎からもらった簡易ダイナマイトのおかげで、史実の様に磔から槍で串刺しにされるというフラグを叩き折った。


そして、


「殿!鳥居強右衛門、岡崎城から無事戻る事が出来ました!」


「おお。おおお。強右衛門よ!よくぞ無事で戻って来た。それで岡崎城の殿は援軍をどれだけ送ると仰っていた?」


「殿!岡崎城には大殿だけでなく、徳川家と同盟関係にある、織田家当主の織田弾正忠様も居り、此度の援軍に参加していただけると!そして、徳川家と織田家の援軍の総数は、何と三万の大軍にございます」


「何と!三万もの大軍が!それ程の大軍が来るならば、我々は絶対に持ち堪えなければならぬ!


皆、三万もの大軍が援軍として来てくれるぞ!到着まで何としても、持ち堪えよ!」


「「「「おおおお!!!!」」」」


城側の士気は最高潮に達していた。一方、武田軍は


「足軽どもは狼煙の主を取り逃したか。ええい役に立たん者達じゃ!ならば、城を落とす事に全力を尽くせ!かかれ!」


勝頼の号令の下、長篠城に総攻撃を仕掛けた。

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― 新着の感想 ―
史実と違って助かったのね、これはこれで良いですわな。
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