到着したら報告して相談
天正三年(1575年)二月二十五日
美濃国 岐阜城前にて
「ふう。やっと着いた。皆、身体は大丈夫か?」
「「「「「大丈夫です」」」」」
皆さんおはようございます。元服を行なう岐阜城に到着しました柴田吉六郎です。利兵衛の年齢を考えて、無理せずに日程を組んでいたのですが、それでも予定より少し早く着いた事に安堵してます
で、門番の人に話をして、城の中に入れてもらいまして待機部屋に通されて、待っていると
「吉六郎!」
久しぶりの親父の声が聞こえて来ました。相変わらずの大声です
「父上。お久しぶりです」
「うむ。以前と変わらず壮健な様じゃな。利兵衛!倅は水野殿の教えをしっかりと学んでおるか?」
「はい。若様は勿論、拙者の孫の三吉も、源太郎率いる赤備えの面々も水野様からしっかりと学んでおります」
「そうか。源太郎。また一段と身体が逞しくなっておるな。倅はちゃんと武芸に勤しんでおるか?」
「はい。若様は朝早くから勤しんでおります」
「なら良い。しかし吉六郎!」
「何でしょうか?」
「新しく召し抱えた者達の中には、お主より歳下の子が居るそうじゃな。その子の手本になれる振る舞いをちゃんと取っておるか?その子だけではない!
水野殿の嫡男は更に歳下なのじゃ。幼子がうつけな振る舞いをしたら、それはお主が」
「ちゃんとしております。ご安心を」
「利兵衛、源太郎。倅の言っている事は誠か?」
「はい。共に水野様の教えを受けておりますし、文字の読み書き、数の計算も学んでおります」
「利兵衛殿の仰る通り、我々もうかうかしていたら賢さで抜かれてしまうかもしれませぬので、良い刺激となっております」
「そうか。ならば良い。数日後には元服するのじゃ。今まで以上に振る舞いに気をつけるのだぞ」
そう言って親父が部屋を出ようとしたので、
「父上!父上に伝えたい事があります」
呼び止めて、部屋に残ってもらった
「何か領地であったのか?」
「いえ!領地ではなく、拙者の事です」
「申してみよ」
「はい。先ずは、利兵衛の孫娘の道乃に「側室でも構わないから嫁にしてくれ」と言われました」
「はあ!?いやいや待て!道乃はお主より四歳も下なのだぞ!?そんな嫁入りさせてくれと自ら言うなど。利兵衛。祖父として、お主はどう思う?」
「大殿。拙者は、若様が道乃を側室でも嫁にもらっていただけるのならば喜ばしい限りでございます。ですが若様は、織田様や帰蝶様が道乃を政略結婚の駒として使うのであれば、
自分は何も出来ないから、お二人次第だ。と申しておりました」
「とりあえず。この件は、儂から殿と帰蝶様にお伝えする。それまでは誰にも話すでないぞ」
「ははっ。それと父上」
「まだ何かあるのか?」
「ええ。むしろ、こちらの方が拙者としては重要だと思います。口で説明するより、この文を見てもらった方が早いと思うので、持って来ました。先ずは文を」
「どれ」
親父はそう言って俺から文を受け取った。読み出してしばらくすると
「確かに道乃の件より、重要じゃな。それで、お主なりの考えはまとまったのか?」
「一応は」
「元服前に殿から呼ばれるだろうから、その時にでも伝えてみよ。それまでは出来る限り考えておけ」
「ははっ」
「儂は殿の元へ言って、道乃の件を伝えておく。とりあえず静かに過ごしておけ」
そう言って親父は部屋を出ていった。いつもと違って、襖を閉める音が静かだぅたから親父も何か思うものがあったんだろうな。




