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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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帰ってきてもやる事多数

天正元年(1573年)十月十日

美濃国 柴田家屋敷にて


「水野家の皆様、こちらが柴田家屋敷にございます。先ずは大広間に集まってくだされ」


「うむ。どれ程の長さになるか分からぬが、世話になるぞ吉六郎殿」


皆さんおはようございます。岐阜城から屋敷に戻ってまいりました柴田吉六郎です


利兵衛に事前連絡をしていたとは言え、水野家の連れてきた人も合わせると、かなりの大人数だからな。


松平家の皆さんが来てた時みたいに、襖を外したりして当面は人が多く入れる様にしておこう


後々、屋敷の面積を増やす為に増築するか。


で、大広間に主だった人を集めまして、


「では、水野様。上座へ」


「いやいや。こちらの領地は柴田家の領地。ならば吉六郎殿が上座に座るべき」


「いやいやいや。織田家の直臣であり、年長者の水野様が上座に座るべきでしょう」


と、お互いに譲り合っていると、利兵衛から


「若様。ここは水野様のお言葉に甘えましょう。そうしないと、話が進みませぬ」


と、言われたので


「では、水野様のお言葉に甘えたいと思います」


で、上座に座って。仕切り直して


「さて、改めてじゃが。儂が岐阜城へ行っている間、武田を始めとした敵が攻めて来た様子は無い様じゃな。


源太郎!皆は訓練を欠かさずやっておったか?」


「はい。むしろ源次郎達が岐阜城で怠けてないか心配する者が居る程、鍛えておりました」


「ちょ、ちょっと兄上」


「はっはっは、確かに。源次郎殿を含めた者達は訓練を出来る場所が無いから、戻って来たら身体が痩せておるかも?とも話しておりましたな」


「然り然り。それに、ここの飯の味に慣れすぎて、岐阜城での飯が喉を通らないのではないか?とも話しておりましたな」


「「「はっはっはっ」」」


「ちょ、ちょっと各々方?そこまで長く此処を離れていたわけではないのですから」


うん。源次郎が軽くイジられて空気も和んだけど、引き締めますか


「皆が源次郎達を気にかけてくれる事は分かったが、話を戻すぞ!改めてじゃが、前年から此処に滞在していた森様と佐久間様の軍勢が全て殿の元に戻った。


そして、形的に森様と佐久間様の軍勢と交換する形になったが、今日から、こちらの水野様の軍勢が滞在する事になった。


水野様。申し訳ありませぬが、拙者の家臣達に何かしらの言葉をお願いします」


「では。水野藤四郎信元と申す。拙者の軍勢は武田を始めとする敵への睨みではあるが、拙者個人として殿より、


上座に座る吉六郎殿と、柴田家で保護していた、ある大名家の幼子に武芸や教養を教える師として色々教える様に。との命を受けた次第にて


機会が有れば、吉六郎殿達に教えた内容を各々方にも教えるかもしれぬので、その時はよろしくお頼み申す」


「まあ、そう言う事じゃ。儂は勿論じゃが、皆も少しずつで良いから教養を積んでくれ。


そして利兵衛、お主の家族を皆に紹介するぞ。水野様の件と同じなのだから」


「はい」


「では、連れて来てくれ」


で、利兵衛が3人を連れて来て


「若様。説明は」


「儂がやる。利兵衛や水野様にばかり負担させるのも忍びない。さて。皆、この3人とは初対面の者が殆どだから紹介しておこう


先ず、右端に座る女性の名前は紫乃殿。利兵衛の娘じゃ。そして、中央に座るのは紫乃殿の娘、つまり利兵衛の孫娘の道乃。


最期に儂の隣に座っているのが、紫乃殿の息子、つまり利兵衛の孫の三吉じゃ。


改めてじゃが、今から話す内容は織田家中で殿と水野様や父上の様な一部の重臣しか知らぬ


その内容を、お主達を信頼しておるから話す。他言無用を貫けるな?」


「「「勿論でございます」」」


「うむ。その言葉を信じて話すぞ!良く聞く様に。今から20年程昔の話じゃ、当時利兵衛がある大名家に仕えていたのだが、その大名家の幼い男児を連れて、この地へ落ち延びた。


その大名家は、家督を継いだ嫡男が「自分は父の実の子ではない。だから弟達、いや血の繋がりの無い他人に家督を奪われてしまう。そんな事はさせない」と


錯乱してしまい、弟達を亡き者にした挙句、父親までも亡き者にした。しかし、父親の方が利兵衛に


「家中で内紛が起きるかもしれぬから、その時は孫を連れて、信濃国との国境まで落ち延びろ」と託していたそうじゃ


そして内紛が起きた為、利兵衛は亡き者にされた弟の子を連れて落ち延びて、その子が元服して、紫乃殿と夫婦になり、道乃が産まれて、数年後に三吉が産まれた。


という訳じゃ。そして、その内紛が起こった大名家はかつて美濃国を治めていた斉藤家じゃ。つまり、ここにいる道乃と三吉は、「美濃の蝮」と呼ばれ、恐れられた斉藤道三公のひ孫にあたる」


「な、なんと」


「一族郎党の全ての者が殺されたと聞いていたのに」


「二十年も隠して生活出来るとは」


うん。皆、初めて聞かされた時の親父と似た様なリアクションしてるね


「皆が驚くのも無理はない。儂の父ですら同じ様に驚いておった。だがな、話はこれで終わらぬ。岐阜城に居る殿の御正室の帰蝶様は、その斉藤家の出身。


だからこそ、と言ってはなんだが、帰蝶様にとっては御自身以外の斉藤家の血縁者が生きている事にとても喜んでおられた


そして殿は、その事だけでなく三吉の才覚ならと思ったのだろう


こちらの水野様を三吉の師として領地に行かせて、三吉に色々と教えて、最終的に斉藤家再興の旗頭にする構想じゃ、


三吉の元服が何年後かは分からぬが、元服した時に、物事を知らない、何も出来ない、そんな若武者では、斉藤家再興をさせて良い訳が無いからな


少々話が長くなったが、皆には三吉の手本となって欲しい!水野様がどれだけじっくり物事を教えても、その教えに反する者が近くに居たら


水野様の教えの意味が無くなってしまうからな。これは儂にも言える。だからこそ皆に言っておくが


強さとは身体の強さだけに非らず、武芸の強さだけに非らず。己を律する強さを含めた三つを持ってこそ、強い武士と儂は思う。皆も、その考えを持ってくれ」


「「「ははっ」」」


(なんと見事な弁舌と統率力。これは、織田家中の同年代の子は勿論、他の大名家の同年代の子ですら相手にならぬだろうな。いや、もしかしたら勘九郎様の弟君達よりも優れておるかもしれぬ


そして当然ではあるが、頭の切れも相当な物。この神童が鍛えられて知識が豊富になって戦に臨んだら。そう考えると年甲斐も無く、胸が高鳴る)


信元は吉六郎達の様子を見ながら、ワクワクしていた。そこに


「それから三吉!」


「はい」


「師となっていただく水野様には、今年産まれた赤子が居る。まだ乳を飲み、寝て、時々動くくらいしか出来ぬが、その子が


今の三吉くらいの歳になった時、慕われる様な男になるのだぞ?」


「はい」


「うむ。話が長くなって済まぬ。皆も、水野家の方々が困っていたら助ける様にな


最初のうちは新しい土地では誰も勝手が分からぬ。だからこそ、分かる者が助けてやろうではないか」


「ははっ」


「では、解散じゃ。各々の部屋や持ち場へ戻れ」


こうして簡単ではあるが、顔合わせは終わりました。

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