香りの魔力は時代を超える
父親達の話し合いの最中、料理に勤しんでいる吉六郎だったが、最初に出す料理はお好み焼きと決めていた
しかし、領地では自分以外の人にも説明しながら手伝ってもらっていたが、岐阜城に護衛として源次郎達数名しか連れてこなかった
その事で吉六郎は
(ちくしょー!連れてくるメンバー増やせば良かった。源次郎達に料理を手伝わせるのは不可能だ。だってあいつら筋肉つきまくった結果ガタイも良くなったから台所で動くのもやっとだし
つるさんか光か花の誰かを連れて来たら違ったんだけどなー。後悔しても仕方ない
小麦粉を水で溶いて、野菜切って、猪肉を薄切りにして、自然薯擦りおろして、猪肉以外を全部混ぜて
準備は出来た)
お好み焼きの下準備を終えた吉六郎は
「では、始めます」
そう言って吉六郎は鍋に油をひいて猪肉から焼き始めた
火が通りはじめると周りの料理人達は
「おお。この薄切りの肉だけでも美味い肴になるでしょうな」
「香りも素晴らしい」
と言った声が出始めていた
吉六郎はそれに答えられない程、集中しており
(そろそろ生地を投入だな)
「では次の工程です」
そう言って生地を投入して、蓋をした
蓋をしてからおよそ5分、吉六郎は専用の木製のコテを準備していた
そして蓋を取り、生地の裏側の火の通りが大丈夫だと確認し、
「では、参ります」
そう言うと同時にコテで生地をひっくり返した。これには料理人達も
「お見事!」
「見事な回転じゃ」
「形が崩れておらぬとは!」
驚きの声が出ていた。
吉六郎は生地全体に火が通った事を確認すると
「最期の仕上げです」
その言葉の後、味噌の上澄みを生地の上からかける
ジュー!
けたたましい音と香ばしい香りが台所中に広がる
「なんと香ばしい」
「この匂いだけで飯が食えそうじゃ」
「匂いだけで腹が減るとは初めてじゃ」
料理人達が香りを堪能していると、
「吉六郎殿」
信長の小姓の蘭丸が飛んできた
「森殿。どうしましたか?」
「殿が「この匂いは辛抱出来ん!早く持ってこい」との仰せです。その一品だけでも持ってきてくだされ」
「分かりました」
そう言うと吉六郎はお好み焼きを皿に移動させて、信長の前に持って来た
「吉六郎!これが先程から漂っていた匂いの正体か!これはどの様な材料を使っておる?食いながら聞くから説明せよ」
「はい。先ずは麦を粉にひいた物を水で溶いて、溶いた物にすりおろした自然薯を入れまして、
それに火が通りやすい野菜を混ぜて、その混ぜた物の下地になる様に、猪肉の薄切りを焼いてから
混ぜ合わせた物をじっくりと中まで火を通して、最期に味噌の上澄みを上からかけて匂いが出ましたら完成です」
信長は説明を聞きながら、既に半分くらい食べていた。それでもちゃんと聞いていた様で
「麦を粉にして、水で溶くだけでなく、自然薯をすりおろした物を混ぜると、これ程の柔らかい食感になるとは
そして猪肉の薄切りも食べ応えを増しておる。そして、味噌の上澄みの匂いが食欲を刺激する!
見事じゃ!だが、これだけでは無いのだろう?」
「はい。その通りです。それでは次の品にとりかかりたいと思います」
「うむ。楽しみにしておるぞ」
殿に言われて俺は急いで台所に戻った。
次はうどんじゃー!




