刀禰坂の追撃戦〜前半〜
この作品はフィクションです。史実と違いますので、その点、ご理解ご了承ください。まだ主人公出ません。
「出陣の準備をせよ!!」
自分の陣地に到着した勝家は開口一番、家臣に命令を出した
「殿。もしや大殿から呼び出されたのは軍議だったのですか?」
「うむ。だが、殿は「いつ、浅井朝倉のどちらを攻める」とは言わなんだ」
「それは一体?」
「軍議で、浅井を攻める事と朝倉を攻める事で意見がまとまらず、殿が追って伝えると言う事で軍議は一旦終わったのじゃ」
「そうですか。因みに殿は大殿がいつ、どちらを攻めると、お思いですか?」
「儂は雨が激しくなった時に朝倉を攻めると思っておる」
「それは何故ですか?」
「こんな事を言ってしまっては阿呆な父親と思われるだろうがな‥‥倅が、吉六郎がな」
「若様が如何なされたのですか?」
「うむ。吉六郎が見た夢の中で、儂が殿から叱責を受けていたそうでな。しかも「雨降る中で敵を追撃する最中に儂が失態をおかして」と具体的な内容だったのじゃ」
「何と‥‥」
「儂もこの様に雨が降らなければ、只の童の言葉と捨てていた。だが、見てみよ。雨降る中で殿が軍議を開いて、展望を聞いて来たのじゃ。嫌でも吉六郎の夢が当たるかもしれぬと思ってな」
「確かに、ここまで若様の夢のとおりだと、色々と気になりますな」
「うむ。だからこそ、今の内に出陣準備をして雨が強くなる前に本陣へ行く。急ぎ準備をせよ」
「ははっ。皆、急げ。次の戦が近いぞ」
「「「ははっ!!!」」」
勝家の家臣達は急いで出陣準備を整えて、信長の本陣へ向かった
〜〜信長の本陣〜〜
「殿。雨が強くなってまいりましたので、傘を」
「久太郎。雨が長く降り続いた場合、お主はどう思う?」
突如、質問された久太郎こと堀秀政は一瞬困惑した。しかし主君信長が長い時間待つ事を嫌いな事を知っている為、即答した
「雨が長く降り続いた場合は、人が屋敷に来ないと拙者は思います。特に身分が上の人ほど、動かないかと」
「うむ。やはりそう思うか。儂もそう思う。雨の場合は行かなくても良い場所には行かぬよな。普通の人間は。しかし、逆の場合であったら、どうする?」
「逆と言いますと?もしや、その場から遠ざかりたい!と言う事ですか?」
「そうじゃ!!策は決まった。朝倉を追撃する!!急ぎ権六達に文を出して集結する様に伝えよ!雨が止む前に出陣すると伝えよ!急げ!!」
信長が秀政以下の家臣に命令を出して、本陣が慌しくなった時だった
「殿!」
勝家達総勢二千が本陣に到着した
「権六!!良くぞ来た!誠に嬉しいぞ!しかも、いつでも出陣出来る様じゃな」
「ありがたきお言葉にございます。浅井と朝倉、どちらを攻める事になっても雨降る中なら、敵が油断する事を殿が読むと思い、我ら二千、到着した次第にございます」
「うむ。先に伝えておく。追撃するは朝倉じゃ。権六達が来たなら更に追撃の軍勢も強くなるな。文を急ぎ出せ。来ない者達は置いていく」
「「「ははっ!!!」」」
改めて本陣が慌しくなった。しかし
「犬達は未だか!?」
利家達に文を出して15分ほど経つが、誰も本陣に来ないので、信長のイライラが募っていた
「殿。又左達が来ないのは数において不安ではありますが、雨が強くなっているこの好機を逃せませぬ。我々だけでの出陣の許可をくださいませ」
「是非もなし。我々だけで出陣する。物見より朝倉は近江と越前の国境の刀禰坂付近にいるとの事!遅れるでないぞ!!出陣じゃあ!!」
「「「「おおおお!!!!」」」」
こうして信長達は史実よりも多い軍勢で朝倉軍追撃を開始した。馬を走らせて間もなく、刀禰坂の入口に到着した。刀禰坂は二又に分かれている為、軍勢を分ける事も可能であった。一旦、入口で止まった信長だが、手を上げて物見を呼んだ
「朝倉義景は馬に乗っておったか?」
「はい。ですが、影武者と思しき同じ鎧、同じ模様の馬もおりましたので、判別は出来ませなんだ」
「良い。再び刀禰坂の出口に急げ」
「ははっ!」
返事をすると物見は一瞬で走り去った。報告を受けた信長は馬から降りて地面を睨みつけた。何度も何度も見比べる様に
「あの、殿?」
「権六よ。不思議な顔をしておるな。ならばお主に問う。朝倉義景をどの様な男と思い浮かべる?」
「正直に申すなら、公家かぶれの優柔不断で、自身は決して表に出ず、戦は家臣任せな男かと」
「その通りじゃ。そして公家かぶれならば、馬に乗る機会も少ないじゃろうな?そして表に出ない男なら、どの様に領地に戻るかのう?」
信長と勝家の会話を聞いて、勝家の家臣達は頭に?マークが出ていた。しかし、勝家は急いで馬から降りて、信長と同じ体勢になった
「殿!これは」
「やっと気づいたか権六。この右側の道が一部だけ、馬の足跡が出鱈目になっておる。これは馬に乗り慣れてない者が居る証!つまり、朝倉義景はこの道を通ったと言う事。左側は囮じゃ。全軍右側の道を進め!!」
「「「ははっ!!!」」」
信長達は脇目も振らずに右側の道を全速で進んだ。
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