戦後処理
ここは親衛隊技術研究所のすぐ近く、どう見たところで荒蕪地でしかないところである。だからこそ研究所が出来たわけであるが。そこで今やっているのは処刑である。手段としては現在試作されている三種類の迫撃砲のうち、『中迫』を試している。なお、あくまで三種類の中で中くらいというだけで、現代的な基準でいうならば、重迫撃砲の扱いにはいる。口径は五寸。
ちなみに『軽迫』が三寸、『重迫』は十寸である。無駄に大口径な由来は、この身が何気なしに呟いた『でっかい弾の方が面白い。』であるとの由。
盛大な爆発が起こっている。
「遠し右。」
「しかし閣下も容赦ないですな。」
等といいながら弾を発射する曲射火器研究室上級主査研究員。燧発式ではなく、装填後に引き金を引く撃発式であるから、修正はしやすい。
「ナァに、そんなもんよ。これでも歴代に比べりゃましだろ。遠し左。」
「そもそもこの修正射撃がしたくてやってるのではありませんかね。」
「当たり前だろう。それに適した処刑方法だ。」
標的は手足を鉄鎖でくくりつけられた公爵閣下の一族郎党を放り込んだ穴だ。迫撃砲はそんな簡単にあたる兵器ではない。だからこのように何発も撃ち込んで修正して当てるものだ。だからきっと彼等は徐々に近づく破滅の瞬間に怯えているだろう。
「近し方向良し。族滅、なかなか甘美であるな。しかし、何だ、底盤がだいぶめり込んで行くな。狙い狂わんか?」
「否定はできませんな。こんな至近距離ならともかく。」
だいぶめり込んで、たぶんこの砲を撤収するときにはちょっとした土木工事が必要に見えるほどだ。動力車両がほとんどないこの国では、相当の手間でなかろうか。
命中。紅い霧が舞う。
「命中、あとの残りの弾、すべて叩き込め。」
連続した射撃、連続した弾着。恐らく彼の者らは土くれと混ざりあった肉片となったであろう。目障りだから消毒のためにあとで焼かせようか。髪一本たりとも残してはならない。
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公爵領はいまや帝国の内務省直轄下、『県』とされて知事がおかれた。領の中枢はいまや我が支配下にある。決裁すべき書類がまたフエルナー、イヤダナー。他に関係する親類も死罪にはしなかったが鉱山勤務に回した。後は野となれ山となれ。そのうち本当に暗殺されんじゃなかろーか。今さら遅いか。される前にするようなやつを皆殺しにするか?全くいたちごっこで現実的でない。まぁ為るようにしか為らんさ。
兵器類の欠陥も洗い出された。
小銃は暴発を防ぐために安全装置の追加と金属製薬莢化の促進を。
回々砲は軽量化と『一定の速度で回さねばならない』というどうにもならん欠陥の排除。なにしろ三小隊のいた廃坑道へ二百を越える威力偵察があった際に連続して弾詰まりを起こしたそうだ。近接してくる敵もやられっぱなしではない。死力を尽くして反撃してくるから興奮の極みに射手はあるから、一定の速度で回巣、ということは不可能である。
歩兵随伴砲は威力の不足。
それらを改良して行くことになるのだろう。さて、楽しみだ。
第二部完




