鉄道による進軍
帝都中央駅の貨物ホーム。そこで列車を待つ。試験的使用を目的として支援火器を積んだ貨車を繋いだ親衛隊技研貨物の扱いで今回の部隊移動を行うためだ。
技研貨物はそこそこの頻度でそのスジが存在しており、寒冷地試験や高湿試験等のために運用される。今回は新兵器の実戦的評価のためである。威力とかその辺は使ってみなければ正確な評価は難しい。
ゆっくりとやって来た技研貨物。機関車は帝国1形、つまり日本の鉄道省C11形式蒸気機関車を原形にその炭庫と水槽を別車体に組み込んだ帝国2形蒸気機関車が引いている。ちょうど見た目として日本の鉄道省のC50形式蒸気機関車だ、つまりは原点回帰?
機関車の次位に繋がれた用務車に警乗三名、その次についた無蓋車にこそ目的の新兵器が乗っている。煤による汚れや防水のためにケンバス製カバーがかけられていてその全容はわからないが。一応カタログ写真みたいなものは見た。だからおおよその見当はつく。
そしてそのあとに兵を乗せるための有蓋車、しかも最新の高速用のボギー車のやつだ。警乗の想定で窓もある。内側には装甲代用としてモルタルが側壁を覆っていて、挟間もついている。親衛隊の私有貨車だ。
最後尾にはやはり用務車、自分はここに乗り込む。
まさに一日がかりの移動であった。途中に長い待ち合わせがあったりもした。便所のための休憩と洒落こんだが、実際のところあそこは急勾配につき補機をつけねばならない区間であり、その為の待ち合わせでもあった。機関車の出力が小さいからだ。もっと大きな出力の機関車であれば単機でも越えられるかもしれない。まぁ、古今東西機関車の出力が増えると牽くべき列車も重くなるから変わらないか。しかしこの輸送上のボトルネックを解消するにはそれしかあるまい。
蒸気機関車の性能のほとんどを決めるのはボイラである。大きなボイラにすればよいだろう。したら今のインゼクタ2基使用では走行中にできる注水量も多くはあるまい。きっとポンプが必要だろう。ならば給水温め器も要るだろう。その配置として適切なのは二ヶ所だ。1つは煙室の上だ。高温になる煙室の上ならばその熱も合わせて効率がよい。もう1つは前デッキだ。こちらは整備がしやすい。そして動軸数を増やせば牽引力が上がる。後で鉄道省の方に提案してみよう。
ついでに途中で補機の走行解放、つまり列車を止めずに行われる後押しの補助機関車切り放しを見た。あまりの楽しみに煤や灰、シンダーが飛び交い風も吹き荒ぶ用務車後部のデッキにたち、それを見学できた。2軸車の用務車は独特のフラッターを起こしているから、デッキの妻板にある柱にしがみついて振り落とされまいとしながら。
勾配の頂点にある駅の構内で汽笛合図と共に本務機がを単弁ブレーキを使い本務機だけにブレーキをかける。するとその衝撃で連結器の遊間が大きくなるので、そこで補機の連結器解放テコに取り付けられた圧搾空気のシリンダに圧搾空気が吹き込まれて解放テコが回る。それにともない錠揚げが上がり連結器の錠が解ける。これまでがまったくの一瞬の事である。したら補機がブレーキをかけることもあってするりとこの間が開いて行く。なるほど見ていて楽しいものだ。実施する側としてはたまったものではなかろうが。なにぶん最後尾の補助機関車にはブレーキ管を接続していない。ひとつ間違えば脱線転覆にも繋がる。恐ろしいものだ。
そんな移動を終えて今は戦場にすると決めた位置の最寄りの町にいる。ここから移動は徒歩になるが、今日はここで休むのだ。もし鉄道がなければここまで六日間は歩き通しであるからして鉄道の威力をよく理解できるだろう。
宿代わりに公民館の様なところについたが、貨車の激しいフラッターで皆疲労著しい。町の住民による差し入れを食べてしばらくすると静かになった。皆寝てしまったのだろう。哨兵をしかりと立ててあるかを確認し、そして、自分も眠気に勝てず寝入ってしまった。
私は感想を求めるものである
今回は趣味の都合でものすごい鉄道回であったな。




