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親衛隊技術研究所でその弌

 研究所についた。まずは応接間でここの指揮官少将との面会。もとはドワーフの族長の息子のそれ。何かも凄く困惑している。当たり前か。もとはこの身しか来ないはずがなぜか同伴するものが居るのだから、饗応の手配が狂うというもの。恐らくは言葉にならない罵倒がその表情の裏にはあるのだろう。自分なら実際そうする。本来帝国指導者は偶像でなければならぬ。すなわち模範だ。それがいま秩序を乱した。あってはならないことだ。二度とそのようなことをしてはならない。


 いま居る管理棟とは別に幾つか実験棟がある。第一から第七まで現在はある。実験棟とは別に射場や倉庫、観測室や大物用の試験台、そして小型の機関車程度ならば作ることができる試作場もある。 それらを視察することになる。まずは第一実験棟から。


 第一実験棟は、輸送効率化を目的としてそれに伴う各種機材や実施法を研究する空間である。裏手には省線からの引込線から更に引き込んだ演習線があり、より効率的な荷役(にえき)方法を模索したり、簡易に敷設できる軽便鉄道機材の試作をいまはしている。鉄道省協賛であるからして、一番資金が潤沢なところでもある。

 ちなみにここで試作された軽便鉄道機材は今この研究所内部での物品移動に活用されている。軌条は鉄製の枕木と固定されて六尺の長さになっている。軌間は二尺。先には固定された継ぎ目板などがあり、それを相互に合わせて付属の太螺で止めればよい。枕木には地面に固定するための大釘の穴がありこれで固定する。あくまで簡易敷設機材であるがゆえの簡素な構造である。この軌道の一揃(セット)を『軌匡(ききょう)』という。使われてる機関車は双合機関車など見ていて可愛らしいのが好みだ。小さな動輪をチャカチャカ回して懸命に走っている様など感動すら覚える。ブレーキが軽量化のために手動(てどう)ブレーキしかないなど絶頂の極みだ。付属の貨車は二軸の小型なものであるが、上に架台を設けて長物車にもできる。軌条の耐久試験装置がやかましい。


「閣下、先程の自走車の用意が整いましたので、こちらにどうぞ。」


「うむ。」


 ジャッキ場の様なところでここまで乗ってきた彼らの言うところの自走車、すなわち自動車が待っていた。そして説明のものが車体前端を開ける。ボンネットのような跳ね上げ扉である。


「閣下、これがボイラとなっております。燃料は揮発性油脂であります。そして機関車と異なるのはこれが火室を底面とし、煙室を頂にした縦置きということに尽きます。」


「縦置きにした所以(ゆえん)は?」


「ボイラ覆いをあけて煙管清掃を行うことを簡便にするためであります。そしてまた横置きにするよりも小さくまとめられることであります。問題点もないわけではありませんが。」


彼はそこまで言うと、ボイラ覆いを閉めて回りのものに何やら指示を下し、車から離れる。すると油圧なのか何なのかは知らないがすると車両が持ち上がる。シリンダも見当たらず、油の臭いもそれほどないので油圧とも思えぬ。何か魔力的なものであろうか。ならばようわからなくとも仕方なかろう。ちょうど床下が目線よりわずかに上の位置で止まる。床下に取り付けられた機械に目が行く。これはなんとも言いがたいものだ。どう見たってそれは水平二気筒の蒸気機関で、弁装置も見えている。機関の回転軸に取り付けられた偏心部から左右のシリンダに向けてそれぞれ二本のロッドがのび、その間を弧状のリンクが渡っている。油の滴る鈍色のそのリンクが、なにもするものなのかが判るのがニクい。そう、構造的にはもとの世界でも見知っている『スチーブンソン式弁装置』だ。


「これが機関であります。先程のボイラから蒸気の供給を受けて回転するものとなっております。またここにある偏心部からの弁装置は回転方向だけでなくシリンダ行程中における蒸気供給割合を定めることができます。」


「素晴らしい。はて、これを開発したものに何で報いて良いのか分からぬ。勲章でもくれてやればよいのかね?」


「閣下、これはまだ量産できる状況ではございません。報いというならば、それができるようになってからの方がよろしいかと。」


「あい分かった。」


 これで第一実験棟を全て見たことになる。次の第二実験棟は主に通信と偵察機材を扱っている。これまで遠隔地の通信には極めて特殊な水晶球を用いていたのだが、これは高価でありまた安定的な性能を発揮し得るものではない。つまりはその性能が使用者の魔力に依存するということである。ならばこの身では扱うことさえままならないということでもある。これも鉄道省が関わりながら開発されている有線電話等が既に出てきている。機関車乗務員向けの有線式携帯電話や、閉塞打ち合わせに使う鉄道電話。その技術はもちろん戦場に有線電話を敷設する方法などと共に開発されつつある。そして偵察や捜索に使われる各種機械。コンセプトだけのものから試作品があるもの、実用化されつつあるもの。まるで博覧会だ。一人の若い技術将校に呼び止められた。何やらまとめれば、天然色画像撮影技術の供試体を作りたいから被写体になってくれと言うものだった。快諾したところいきなりエリカが抱きついてきた。そして、そのところを撮られた。非常に恥ずかしかったが、まあ良いだろう。ちなみに偵察機材であるがため、基本紙に焼いたりはしない。顕微鏡みたいなもので拡大して詳細を見るためにあるのだ。だからどんな画像になったのか見ることができないのが残念だ。

ポイントもブックマークもレビューさえも必要ではない。感想を、感想を呉れればそれで良い。だから誰か感想を呉。


2018.4.14

以下転載防止文字列

反動中共粉砕、民主化‼不忘六四天安門同志‼習近平黄熊殴殺‼

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