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鉄道開通式典

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http://www.nicozon.net/watch/nm4186166

 白い化粧石が輝く駅舎に行進曲が響く。改札を介さない貴賓室からの通路を親衛隊の礼装で歩く。右肩から下がる将官飾緒(しょくちょ)の石筆が歩む度に胸に当たるのが心地よい。本来は帝国指導者伝統の礼装があるのだが、戦時特例という言葉でそれを拒否した。同じように本来は同伴者をこのような式典では求められるが、それも『多種族間の要らない紛争を避けるための』戦時特例で反故にした。ほとんどの種族の貴族から後宮に送り込まれる美姫たちをどのような序列で並べるか、侍従たちと話し合って皆胃を痛めた結果である。

 帝国指導者は一挙一動が政治的意味合いを持つ。今日飲んだお茶の茶葉はどこ産で、水はどこのもので、入れたものはどの種族か。それだけで下手すれば問題になる。だから好まなかろうがまんべんなく飲むし、まんべんなく食べねばならない。接する種族もその通り。不偏が原則だ。よくある内政チートものは愛読していたが、今ここで現実を垣間見れば帝王ほど厄介な仕事はない。


 そんなことを考えながら歩いていれば、プラットホームに出ていた。軍楽隊の演奏が天井に反響している。彼女らは借り物だ。サキュバスの(くに)からの。仮に与えた軍装が映える。金に煌めく釦、楽隊向けにデザインした短剣。そして、楽器そのものの金具。まあその体格に関しては言うに及ばず。出来立ての一個歩兵中隊が着剣捧げ銃の敬礼をしている。挙手の礼で答礼しつつ、紅い敷き布の上を歩く。先には展望客車、そして鉄道大臣。鉄道大臣と握手をして、そこで報道のために写真を撮られる。たぶん自分は帝国史上初めてメディアプレーで生き永らえている帝国指導者だろう。はじめは無能を隠すためだった。召喚したものたちが批判を恐れた結果である。今や狂信的に支持する民がいるのもこのせいだ。


「余は、諸君と共に、鉄道開通のこの場に居合わせることができることを、心より嬉しく思う。」


楽隊の演奏は止まり、代わりにスピーチを多少することになっている。


「鉄道、それは帝国の叡智の結晶である。今ここにひとつの路線ができた。それは今後、帝国の、至るところに延伸されるのである。余は帝国の指導者として、その未来を祝福するものである。」


「鉄道大臣として、閣下のご期待に添えるよう、万難排して鉄路の道を作りゆく所存であります。」


「furra!」


『furra!furra!furra!』


観衆からのフラー三唱、それに送られるように大臣と共に展望客車の展望台に乗り込む。駅長の合図と共に汽笛が響き、列車が動く。また始まる楽隊の演奏と歓声。挙手の礼で立つ。鉄道大臣は脱帽し、その帽を胸に当てる文人の礼。次第に遠ざかる駅。広大な鉄道用地にあるのは今は二つのプラットホームとちっぽけな機関庫。しかし、ここは間違いなく広大な操車場が広がるだろう。そのために帝都の貧民窟を始末したのだ。その住民は内務省統制委員会が穏便に皆殺しにしたとのこと。さて、車掌も案内していることだし、車内へ入ろうか。

2018.4.14

以下転載防止文字列

反動中共粉砕、民主化‼不忘六四天安門同志‼習近平黄熊殴殺‼

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