行為は然るべき後に
疲れた。夜会というものに初めて出た自分にとって、何もかもが新鮮であった。こう、立派な指導者というものが思い浮かばず、Сталинを演じるようにしていたが、大変であった。何しろ皆が皆扇情的な服装をしていたし、食べ物は体を内側から焼くかのように情を催させた。これを耐えることができたのは某総理大臣兼陸軍大臣兼参謀総長の大将が脳内をうろついているかのような感じがしていたからだ。あの人は愛妻家であり、また全く持ってスキャンダルらしいスキャンダルもないという高潔なる大臣であった。それが自分を見張っているような心持がしたからこそ耐えられたのだ。
一息ついているところで、扉がノックされた。
「入り給え」
入ってきたのはこの城の主、マリア・フォン・ホーネカーだった。ほほを染めたその姿は艶かしく見えた。ただ、何分疲れはてた。それは美しいとは思うし、極めて魅力的だったけれど、それまでしか考えられない。もし今疲れていないのなら、きっとその先の情欲を催しただろうとは感じるのだが。とにかく何か用事があるのだろう。部屋の端にある小さなテーブルと椅子のところに行く。立ち話も難だろうから。
「とりあえず座ろうか」
と、言いつつ椅子に座る。何故か彼女は椅子を側に寄せてきてそれから座った。正に肩が触れんばかりの所である。緊張のせいか喉がカラッカラに感じる。
「何か、用かね?」
何とか言葉を捻り出す。
「抱いて、頂きたいのです。」
そう言いながら彼女は俺に寄りかかって、太股に手を這わせる。このままでは不味い。ただでさえ疲れているし、明日以降はなかなかにハードスケジュールだ。余計に疲れるわけには行かない。だから何か方便でも言って逃げ切らねば、多分過労でぶっ倒れる。
「お…余は今、一つの願掛けを、しておる。戦に勝つまでは決して女犯の禁を犯さぬと云うものだ。だから、余は貴女を抱くことは、できない。」
「……!?」
何か、驚いたような、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をした彼女は、体を引いて、そうして目を伏したかと思う間に駆け出して部屋から出ていってしまった。
寝よう。
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『誰しもが知っている大元帥たる帝国指導者の禁欲話であるが、これが公式の場に出てくるのは、サキュバスの街での事である。彼は其を戦後に至るまで貫いた。』―大元帥之伝記
『彼は禁欲をしていると言いながら複数の美姫に囲まれることを是とした。これは余りの矛盾であり、彼の人格を疑うに足る話である』―帝国指導者批判演説
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2018.4.14
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反動中共粉砕、民主化‼不忘六四天安門同志‼習近平黄熊殴殺‼




