夜会(マリア・フォン・ホーネカー目線)
帝国指導者閣下が来られるということもあり、数日前からその準備をしていた。そこにはいろいろな罠も仕込んでいる。本当に自分たちの上に立つのにふさわしいか見極める為だ。元々独立した国家だったこの街は独立的気風が強いのだ。それを率いることができるかどうかぜひ見てみたい。もしできないならできないでこの街は勝手にやるまでだ。昔からそうだったし、今後もそれでいいのだと。
門番が帝国指導者閣下を騙る不審人物を捕らえたと聞いて、見に行ってみた。それは一度会議の場で見た本人であった、が、それは一目でここを率いる器ではないと確信した。うだつの上がらないような見た目、何もかもを見ているようで何も見てはいない眼、肉付きの良くない躰。直射も曲射も可能とするBataillonsgeschützが云々といった何事かもわからない事を呟き続けるその口。この人物はきっと臥所を共にする時すら自分を見ることがないだろうし、愛を囁くこともするまい。だからあえて、放っておいた。
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結局儀礼としての(罠だらけであるところは今更どうにもならないのでそのままであるが)夜会は実施することになった。会場には楽団がそろい、時を待つ。サキュバス秘伝の媚薬を盛った菓子、やたらと強めな酒精、そして『一般的な』ドレスに身を包んだ参加者たち。全てが全て罠であった。『一般的な』ドレスがどう罠か。胸元や背の大きく開いたドレスを着たサキュバスが罠以外の何であると?
登場した彼は見違えた。服装が違うだけではない。うだつが上がらないといった雰囲気はどこかに消え失せ、百戦錬磨の将に劣らぬ堂々としたそれとなっていたし、どこも見てはいないようだった眼は光を湛え、あたりをしかと見据えていた。口は柔和な曲線を描き、口上を述べている。そして私にゆっくりと歩み寄り、言う。
「貴女とは会議の時にあって以来であるな。貴女とは一度話がしたいと思っていた。」
そんな彼に対して、ほんの少し、悪意というか、悪戯心を持ってしまった。手袋を取って手を差し出す。その時に僅かに前のめりにして胸を強調して見せた。しかして彼は全く気にせずに握手した。起こりうることを想像してか、周りは皆こちらを見ている。これで催淫されないのはよほどの阿呆かあるいは……。しかして彼は全く催淫されたようなそぶりを見せず、身を離す。そうしてメイドから酒精を受け取ると、乾杯をしようかと言ってのけた。
乾杯の後は彼は多くのサキュバスに連れまわされていたといってもよい。パッツェンデール姉妹の誘惑を柳に風とやり過ごし、媚薬の盛られた菓子を食べてすらそういったそぶりを見せず、それでいて話をちゃんとかわす。つまり彼は阿呆ではなく、まさに自分が求めているような色に惑わされぬ本物なのだろう。これまでこの街に手を出してきたのはどれも色ボケの様なろくでなしばかりだった。そういった連中のことはもちろんおいしくは頂いてきたがついぞ戴いたことはなかった。しかし彼ならば戴いてもいいのではないか。肉体を求めるのではなくほかの貢献を求める彼を。
我々サキュバスは淫魔ではあるが、同時に女である。特に体ばかりを求められるが故に恋というものに夢を見過ぎているきらいがある。この人ならば淫魔の部分ではなくてその内側のところまで見てもらえるのではないかという夢想すら抱いてしまった。
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2018.4.14
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