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道に咲く華  作者: おの はるか
我、正義の道を執行す
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戦いの狼煙編 第一戦異世界勇者たちの覚醒

「くそっ! 俺たちはどれだけ閉じ込められていればいいんだ!」


 ギルマット王国、その魔王の右足が封印されていた地下、騎士の死体とともに四人の異世界勇者ユウ、カイト、リュウヤ、ダイは【悪魔喰い】の一人であるミネルヴァの結界により閉じ込められていた。


 すでに閉じ込められて一時間、必死に結界の解除、破壊を試みるが神届物(ギフト)によって作られた結界は力業で壊すことは至難。


「俺たちじゃ……俺たちじゃ全然力不足じゃないか!!」


 少年たちの心に絶望がにじり寄る。誰が言ったのかもわからない言葉だったが全員の心は一緒であった。


 しかし、その時、四人の頭に直接声が響く。


「そんなことありませんよ。私がついています」


「な?!」

「だ、誰ですか?!」


 動揺する四人の少年たち、しかし次の瞬間には意識が暗転し……


〇〇〇


 異世界から来た少年たちは……いや、少年少女たちは見たこともない部屋で目を覚ます。


 あらゆる場所が輝き、しかし、それでいてまぶしくない空間、少年たちは混乱するよりも先に見惚れてしまっていた。


 そこに、気を失う寸前に聞こえてきた声が再び彼ら彼女らに響く。


「地球より時空を超えてきた少年少女よ。私はこの世界の神、そして人族を繁栄に導くことを目的とする存在です」


「か、神?」


 一人の少女の口から驚きの声がこぼれる。


「はい、神です」


「おい! どうして俺たちをこの場所に連れてきたんだ!」


 今度は少年。


「簡単です。今のままのあなたたちでは勝てないからです。神届物を所持する敵に」


 その言葉に【悪魔喰い】のメンバーとの戦いが彼らの頭をよぎる。事実、全員でかかっても負けてしまったことがすでに二回。


「今あなたたちの頭に思い浮かんだのは【悪魔喰い】ですね。彼等に力を与えているのは私の敵である邪神です。異世界から転生させてきた者に自身の力を分け与え私の眷属である人族に損害を与え、私の神としての権利、【神権】を奪おうとしているのです。魔族の存在も一緒。そしてそれに対抗するためにシャルトラッハ王国の国王には異世界から勇者を召喚する力を分け与えていました」


「し、しかし神様! 彼らは強すぎます! 四十年前の勇者達だって皆殺されてしまいましたし、私たちが束になっても一人の【悪魔喰い】に負けました」


 カイトが叫ぶ。


「はい、存じております。ですので今回、特例として私の力をあなたたち(・・・・・)にも分け与えることにしました。どうか受け取ってください」


 その言葉に四十人の少年少女がざわめく。【悪魔喰い】のようなチートをもらえると知って興奮しているのだ。部屋が多きせいであまり響くことはないがそれでも十分に騒がしくなる。


「皆! 静かに!」


 カイトの一喝ですずけさを取り戻す子供たち。ユウが続ける。


「それで、神様は僕たちにどのような能力をくれるのでしょうか?」

「何でも構いません。私にできる範囲であれば一人につき一個、なんでも叶えて差し上げましょう。ただ、強すぎる力は渡すことができません。これだけの人数に能力を渡すとなると厳しいのです」


「なるほど……なら地味だけど強い! みたいな能力であれば行けるのですね」


 一人の女子生徒が確認を取る。頷く神を見て自分の能力を考え始めたのであった。


〇〇〇


 四人の少年は目を覚ます。暗い地下、目の前には神届物による結界。しかし彼らにはもう絶望はなかった。


 リュウヤが目に力を宿し、剣を構え、能力の名前を叫ぶ。


「神届物! 【万物切断】!!」


 構えた剣が黄金に輝き、一息で結界を切り裂く。一瞬の後に結界は消えうせ四人は外に出られるようになる。


「おお! リュウヤはそんな能力をもらったのか」


 感心するようなユウの声に少し恥ずかしそうにしながらもリュウヤは振り返る。


「ああ。これなら神届物だろうと切ることができるんだ。皆は?」

「俺は反射させる能力だな。一日に数回しか使えないがいざという時に使えば何でも跳ね返してみせるぜ」

「なるほどね……ダイの【重盾戦士】ならそのいざという時まで耐えれるからぴったりだね」

「そういうカイトは何にしたんだよ」

「僕は弱点看破。どんな敵だろうと一発で弱点を見破ってみせるよ」

「おいおい……かなり強いな……いや、【名探偵】にふさわしいか」


各人が自分がもらった能力を紹介していく。しかし一人だけ恥ずかしそうにするものがいた。【探究者】のジョブを持つユウであった。


「なんか言いにくいな」

「ん? どうしたんだよ、ユウ。使えない能力なんてこの世にないぞ」

「それはそうなんだけどね。いいや、言ってしまうよ。僕の神届物は【通信者】自分が望む相手と通話できるんだ。これでほかの異世界勇者や神様とすら連絡が取れるんだ」


「すげえじゃねえか! 俺はそんなの思いつかなかったぜ」

「神様との通信はすごいな……」


 皆が感心する。その言葉に恥ずかしそうにするユウであった。


「うん、そう言ってくれて……ん? ええ?!」


「ど、どうしたんだよ」


 突然叫び声をあげたユウにほかの三人が驚く。


「神様から連絡があった……」


「なに?! 一体どんな内容なんだ?」


 ごくりと唾を飲み込みながら、緊張した面持ちでユウの次の言葉をうかがう。


「一つは僕たちに協力してくれる存在がいるってこと。ガダバナートスっていう団体らしい。人を殺すこともあるけど全体としては人族の戦力アップを頑張っているらしい」


「なるほど……そんな相手ともこれからは仲良くしなきゃいけないんだな……すべては人のため……。ほかには?」


 カイトが続きを促す。


「【悪魔喰い】……これは知ってるよね? 彼らを倒せだって」

「まあ、そうなるだろう。もともとそういう約束で神届物をもらったわけで……」


 それも当たり前の情報。しかしユウが驚いたのは次の情報であった。


「三つ目……ソルト君を殺せ」


「何だって?」

「それは本当か!?」


 それはさすがに予想外だったのかほかの三人も目を丸くする・


「うん、どうやら魔王の力を自発的ではないけれど取り戻そうとしているらしい。そうなる前に殺せだって」

「でも……俺たちはソルトの場所すらわからないぜ?」


「うーん……ほかのみんなはどんなの力をもらったって言ってる? もしかしたら相手の場所がわかる能力を持っているかも」

「分かった、聞いてみるね」


 目を閉じほかの異世界勇者に尋ねるユウ。神との通信はすでに途絶えたらしい。


「いた! 七風さんが持ってるって! 待っててね、今皆にその情報を送るから行ける人だけでも行って!」


頭に地図が浮かぶ。そしてその上に一か所、マーキングされた場所があった。


「これって……どこなんだ? 結構距離ありそうだぞ」


「そうだね……ここからだとちょっと無理そう……あ! 岩波君の勇者パーティーが行けるって!」


「そうか、なら俺たちは今回は見守っておこうぜ」

「ユウ、それは視覚情報も共有できたりする?」

「できるよ!」


〇〇〇


四人の異世界勇者がキエラの森に突然現れる。何か転移系の能力であろう。


「いや~。愛李の能力結構いいな! やっぱりジョブとはくらべものにならないくらい強いぜ!」

「ほんとにね。これなら【悪魔喰い】に負けたのも納得だわ。こんなチート能力もらってる連中に勝てる訳ないじゃない」


「でも……」


 そこで言葉を切る少女。次の瞬間晴れやかな顔となる。


「神様は私たちに期待しているようね、こんなにも素晴らしい能力をくれたんだもの!」


「しかしな~、その最初の任務がソルト君の殺害だとは思わなかったぜ」


「仕方ないさ。だって魔王の子供なんだぜ。倒さなきゃいけねえよ」


「皆、覚悟はいいな? これが人と魔族、ひいては神と邪神の戦いの狼煙のろしとなるんだ。気を引き締めろよ」


 そして家が見えてくる。窓が割れ、玄関もぼろぼろな家。とても誰かが住んでいるとは思えなかった。


「しかし、本当にあの家にソルトたちが……ん?」


 疑問を浮かべながらも進んでいた四人の異世界勇者達。だがその歩みが止められる。なぜなら目の前に一人の少女が道をふさいだからである。


「おい、お前ら、お兄様の命を狙ってんのか?」


 少女と刃思えない口調で尋ねてくる少女。だが、このパーティーのリーダーである少年は臆することなく聞き返した。


「お兄様、と言われてもわからないな。君の名前は?」


 各自、こっそりと武器を手にし、いつ襲われてもいいように構える。


 それと同時にユウの神届物【通信者】を借りて思考を連結、心の中で相談しあう。


『おい、これでソルトの妹だったりしたらどうする?』

『その時は仕方ないさ。殺すしかない』

『大丈夫よ、今なら殺せるわ。私の神届物【見通す目】で見てるけど彼女、十秒後までは何もしてこないわ』


 物騒な相談をする異世界勇者達。そしてジギタリスが返事をする。


「俺様か? ジギタリス・ファミーユって名前だ……ぜ!?」


 ファミーユ、というソルトと同じ名前が出た瞬間四人の勇者たちはいっせいに襲い掛かる。そしてジギタリスが何かをする前に……


「な?!」


「え??」


 地面に倒れ伏す。


「あれ? なん……で? あなた……何もしてないじゃない」


 地面に倒れ伏した少女が疑問を口にする。彼女の神届物でジギタリスを調べても間違いなく何もしていない。


 だが、その言葉を聞いてジギタリスは笑った(・・・)


「俺様が何もしてないってことはわかったのか? 魔眼かな? あれか! 数秒先の相手を見通すってやつか! けけ! それもしかして神届物か? 羨ましいぜ」


 それが異世界勇者たちの頭に送られた最後の映像となった。


〇〇〇


「馬鹿な人たちね……ジギタリスが何もしないってことは自然に彼女が発してる毒の解毒薬をくれてないってことなのに」

「エーデ、まだ解毒薬は大丈夫か?」


 ジギタリス・ファミーユ。彼女は常に(・・)猛毒を周囲にまき散らし、それを中和し続けているのであった。

 つまり異世界勇者の少女が知った「何も行動しない」という行動は異世界勇者たちが毒にむしばまれていくのを見届けていた、という意味でしかない・


「大丈夫よ。で、これからどうする?」

「そうだな、やっぱりいったん孤児院に戻ろうぜ。リナ母様にばれたくはないからな……」


「分かった。それはそうとあなた、ソル兄様に何の毒を盛ったの? こんな近い距離でさっきみたいなやつらが現れて、ソル兄様が気づかないはずはないわ。麻痺毒ってところかしら?」


 その言葉に少し気まずそうに視線を逸らすジギタリス。


「あなたねえ!」


 沈黙を肯定と判断したエーデルワイスがジギタリスに詰め寄る。


「だって、あんな奴ら、お兄様の手を煩わすまでもねえよ。それに俺様の毒ならお兄様にも通じるしな」

「全く……ソル兄様が善意の攻撃なら全く気付かないのを利用しちゃって……もう良いわ。【この地よりあの地へ】展開」


 そして二人の姿は消え去り、キエラにおける第一戦が幕を下ろした。


〇〇〇

異世界勇者 残り三十六名


これからまたしばらく更新スピードが落ちるかと思われますがご容赦ください


あと、異世界勇者の能力を考えることに協力してくださった方々に深く感謝いたします。

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