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道に咲く華  作者: おの はるか
私は博愛の道に夢を見る
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幕間 料理大会

お楽しみ下さい

 ソルトが孤児院を出る一年前。

 孤児院で一つの事件が起こった。



 きっかけは孤児院の母であるリナが熱を出したことだ。


「リナ母様?」

「大丈夫?」

「ゆっくり休んでね……」

「みんなありがとうね……ごほっごほっ」


 孤児院の子供たちが一つのベッドを取り囲み、その中で孤児院の管理人リナが休んでいた。


「ソル兄、リナ母様の容体はどうなんだ?」


 獅子の獣人ダンダリオン・ファミーユが義兄ソルト・ファミーユに尋ねる。


「あの病状を見るに今日は動けねえな。一応薬をとってきて飲ませはしたけども」

「そうよね……。かなりしんどそうだし……」


 ソルトに同意するのはソルトの義妹であり、ダンダリオンの姉セタリア・ファミーユ。


「で、どうするんだ? ソル兄」

「どうするって?」


 ダンダリオンの問いにソルトは聞き返す。


「ソル兄さま? 何を呆けたことを言ってるの? 今この家にはクル姉様はいないんです。帰ってくるのは今日の夜ですよ」


 そのセタリアの言葉にソルトも事態の深刻さに気付いた。


「ごはんが……ない!?」


〇〇〇


「ど、どうするの? ソルト兄ちゃん?」


 年少の子供たちがソルトたちの会話を聞きつけ、おびえたような表情を浮かべる。

 ご飯がない、それは子供たちにとって死活問題であった。


「お、お前ら安心しろ! ご飯は何とかする!」

「な、何とか……?」


 具体性のないソルトの言葉に子供たちは不安を隠せない様子。


「ああ、なんとかだ」

「ソル兄、どうする気だよ」

「ソル兄さま、どうするの」


 双子の獣人も少し困ったような表情を浮かべる。


「どうするって……俺たちが作るしかないだろう……」

「で、でもソル兄、俺たち料理の手伝いぐらいならまだしも、まともに料理なんて作ったことねえだろ」

「そ、それはそうだが……」


 普段ご飯を作るのはリナ、あるいはクルルシアだ。三人は手伝いこそするがまともに自分一人で作ったことはない。


「私! ソルトお兄様のごはん食べてみたい!」

「俺、ダンダリオン兄貴の!」

「私はセタリアお姉さまの!」


 口々に幼い子供たちがしゃべる。だが、その雰囲気がだんだん物騒になっていく。


「ソルトお兄様のごはんがおいしいに決まってるだろ!」

「ダンダリオン兄貴が一番だ!」

「セタリアお姉さまのごはんがおいしいに決まってるわ!」


「ん? なんの騒ぎだ?」


 ずっとどうするか考えていたソルトたちが幼い子供たちの騒ぎに気付いた時にはもう遅かった。


 幼い子供たちが魔法まで使った大喧嘩がはじまる。


「お前ら! やめろ! 落ち着け!」


 ソルトが片っ端から暴れる子供たちを抑えていき、ダンダリオンとセタリアもそれに続く。

 だが、取り押さえても子供たちは口々に自分たちの主張を曲げない。


 結果……


〇〇〇


「第一回! ファミーユ孤児院料理大会! はっじまるよ~!」


 なにがどうしてこうなったのかはソルトにはわからない。すべては流れるままに話が進んでいき、いつの間にかこうなっていた。


「ルールは簡単! 一つ、材料は近くの森から自分で取ってくること!」


 子供たちも何やら始まった大会に興味津々という様子で食いついている。ちなみに今取り仕切っているのは年少組の中では年上の子供アジアンタム・ファミーユ。


「二つ、料理は一人一品!」


 お祭り騒ぎが好きな少女でよくこうして何かを企画して皆を巻き込んでくれるのだった。


「三つ、採点は私達年少組! 異論はないか!」


 こうして第一回ファミーユ孤児院料理大会が開催されたのであった。


〇〇〇

 朝ごはん


「一番! ソルト・ファミーーーーーーユ!」


 朝ごはん、ソルトが作った料理が大食堂に並べられていく。


「え? 普通にすごくない?」

「い、一時間でこれが準備できるなんて……」

「さすがソルト兄さまだぜ……」


 材料の調達から調理まで、それも子供たち十人(・・)分の料理を仕上げたソルトの技量は素直に尊敬されていいだろう。これにはダンダリオンもセタリアも目を丸くしている。


「おいしい!」

「な、なにこれえええ」

「材料どっから?! こんなのが森の中に!?」


 料理を食べた子供たちからこぼれるのはどれも褒め言葉。


 司会をしていたアジアンタムが点数を発表する。


「ソルト・ファミーユ! 点数百点中八十九点! 高い! この点数は高いですよ! しょっぱなから大会の期待値を上げてきました!」


〇〇〇

 昼ごはん


「二番! ダンダリオン! ファミーーーーーーーーユ!」


「な、なんだこれ」

「これは料理……?」


 運ばれてきたダンダリオンの料理を見て子供たちが疑問の声を浮かべる。


 運ばれてきたのは森に出現する魔物の肉……というか丸焼きである。こんがりと焼けており、ダンダリオンが順次切り出していく。


「これ……魔物を焼いただけじゃね?」

「食べても大丈夫なの、これ……」


 不安そうな声が子供たちから広がる。


 だが、一口食べた瞬間子供たちの感想ががらりと変わる。


「なにこれおいしい!」

「これ何の魔物!? こんなのいるの!?」

「こら、孤児院から出ていのは十二歳以上な」


 見た目に反してその味は絶品だったらしい。ダンダリオンが自慢げに語る。


「いやあ、俺も初めて食ったときはびっくりしたぜ」

「おいちょっと待て、何があったらそんな場面になるんだ」


 アジアンタムが点数を発表する。

「はいはいはい! 採点結果出たよ!! その点数は七十三点! いやあ、外見もよければソルト兄様にも並んだだろうに、惜しかったねえ」

 順調に進んでいくファミーユ孤児院料理大会。だが、順調なのもここまでだった。


〇〇〇

夜ごはん


「三番! セタリア・ファミーーーーーーーーーユ!」


「ぎゃあああああああああああああ」

「しにたくないよおおおおおお」

「うわああああああああああああん!!」

「クルルシアお姉ちゃん!!! はやく帰ってきてええええ帰ってきてえええ」


 阿鼻叫喚であった。出された料理は……いや、出された物体は明らかに人が食べていいものではなかった。


 まず色がオカシイ。何故虹色に輝いているのか。


 そしてぼこっぼこっと発生する気体は何なのか。


 そして立ち込める異臭、ダンダリオンをはじめ獣人の子供たちはにおいをかいだ時点で救護室のリナの隣に寝かされた。


 そして、席に座り、目の前にご飯が置かれた子供たちも顔をしかめる。


「無理無理無理無理無理無理無理無理!」

「だれか!! だれかああ!!」


 事態はさらに悪化する。泣き出す子供たちまでいる始末だ。


 ソルトが意を決してその物体を運ぶが……


「あれ……なんだか意外といける……ていうか味がしない……」

「おおっと! 白目をむいてそんなことを行っても説得力は……うわあああ?! ソルト兄様が! ソルト兄様がたおれたあああ! 果たして! これの採点は誰ができるのか!」


 ソルトが年下の子供たちによって運ばれていく。


 そしてテーブルの上に残った物体。


「あの……そんなにおいしくなかった?」


 悲しそうにするセタリア。すでに十人いた審査員の子供もすでに半分。そして残りの五人も明らかに口に運ぶのをためらっていた。


 だが、そこにセタリアにとっての救世主(?)が現れた。


 玄関の扉が開き、一人の少女が乱入してくる。


『ただいま! 話は聞かせてもらったよ!! あとはお姉ちゃんに任せなさい!』


 孤児院の子供たち全員の義姉クルルシア・パレード・ファミーユ。その人だった。


「く、クル姉様だ!」

「や、やった! これで助かる!!」


 子供たちから歓声が上がる。


 クルルシアは審査員席に座ると身なりを整え、皿が運ばれてきた皿を眺める。


『これはこれは、なかなか斬新だね、この色は……ラミブの花かな。うん、これならもう免疫を持ってるから大丈夫。あとは……テキムの茎か……これは持ってないけどまあ、龍の治癒力があれば……うん、多分何とかなる』


「免疫とか言ってるんだけど……なに? 完全に毒物なの?」

「ん? 免疫って?」

「待って、二つともリナ母様が絶対に食べるなって釘刺してなかった?」


 いろいろな声が漏れるが、セタリアには届いていない様子だ。彼女は今、クルルシアが口に料理を運ぶことにしか注意wそそいでいない。


『うん、大丈夫だろう。いただきます』


 セタリアの創った物体を口に運ぶ。


「いったあああ! クルルシア姉さま! ついに口に運びました! さて、気になるお味は!!」


『おいしいに決まっているじゃないか。何を言っているんだい』


 そのまま全て完食するクルルシア。そしておもむろに立ち上がる。


『ふう、おいしかったおいしかった。それで? みんなはまだ晩御飯を食べていないのかな?』

「う、うん」


 申し訳なさそうにうなずく子供たち。その様子を見てクルルシアはエプロンを付けると動き始める。


『ちょっと待ってね。すぐに作るから』


〇〇〇


夜食


『さあ! たんと召し上がれ!』


 机の上に並べられた数々の料理。色も鮮やか、匂いも香ばしい。


「うわああ! おいしそう!」

「クル姉様のごはん久しぶり~!」


 生き残っていた子供たちが席に座り口々に「いただきます」を言ってからk地に運ぶ。


「は、はわわわわ」

「お、おいしすぎるよおお」

「生きてる……私生きてる……」


『うん、喜んでもらえたみたいで何よりだ。では私も……あれ?』


 席に座ろうとするクルルシアだったがふらつき地面に倒れこむ。


『あ、あれ……意識が……タム……』

「え? 私?」


 愛称を呼ばれたアジアンタムがクルルシアに駆け寄る。


『あとは……頼んだよ……』


 それっきり意識を失ったクルルシアだった。


「まさか……セタリア姉の料理で?! は! 確かラミブの毒とテキムの毒って調合したら龍殺しにも使える毒だったような……。起きて! クル姉様! 起きてえええ!!」

「解毒なら俺様がやる! タムは他の子を!」


 他の少女がやって来て解毒を試みる。


 その後、セタリアが厨房に立つことは禁じられた。

本編は来週か再来週からとなります

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