狂龍顕現編 怨嗟の龍
今日も四話投稿できると思います
「かかれええ!!」
ソルト達が呆然としているとき、黄金の雷を纏う龍に猛然と襲いかかる集団が現れた。
SSSクラン【バトルビースト】の冒険者達だ。
『痛い痛い痛い痛い』
黄金の龍から再び絶叫がばらまかられ、それと同時に冒険者達には幾千の雷が降り注ぐ。
しかし彼らは、雷の雨を隙間を縫うようにして回避。メンバー全員が龍の元まで辿り着く。身体能力を極限まで強化しているからこそ出来る芸当だ。
「食らえ! 【竜落とし】」
「【竜撃掌】!」
「【竜脚】!」
各々が竜の堅い鱗にも通用さするワザを繰り出す。だが、相手は竜ではなく龍なのだ。それらの攻撃は通じているとは言い難い。
「ちっきしょ~! なんつう堅さだ!」
「全くだ……。ん? おい待て、何かおかしいぞ」
冒険者の一人が声をあげた。彼は、さっきまで無闇矢鱈に暴れていた龍が、突然冒険者を無視して、全く別の方向を見据え始めたことに気付く。
「おいおいおい、あの方向はまさか!?」
「やべえぞやべえぞ。あいつが向かってるのは……」
冒険者の中に動揺が走る。
その一瞬、カウンターとばかりに、触れた部分から強力な雷が発生。動揺した隙を狙われ、不意を打たれた冒険者達はあえなく撃沈したのであった。
〇〇〇
「嘘でしょ!? SSSクランが一撃で?!」
一方ソルト側、驚くシャルに対し、一番最初に冒険者達と同じことに気付いたのは気付いたのは、王国の事情に詳しいソフィアだった。
「あの方向は……まさか?!」
遅れてプレアも声をあげる。
「そっか、恐怖の感情に引き付けられてるのか」
ソルトとシャルもその言葉で、龍が見た先に何があるのかを知る。
「まさか市街地か!」
「そんな!? 今そこに何人いると思ってるのよ!」
【悪魔喰い】の侵攻が電撃戦であったこともあり、王都内の避難はほとんど終わっていない。
加えて、今も続くクルルシアの悲鳴のせいで民間人に動ける者はいないのが現状だ。
「ただでさえ頭が割れそうだというのに……あんなのが王宮内から出たら、とんでもないことになりますね……」
先程から続く『痛い痛い』という悲鳴に眉をひそめながら、ソフィアは文句を言う。
そんな彼らの焦りなど露知らず、龍が翼を開く。それを見たソフィアは即座に魔法を発動。
「飛ばせません! 【王者の庭】!」
今にも飛び立とうとしていた龍の周りの空気が固まる。しかしそれも一瞬。次の瞬間には龍の怪力によって【王者の庭】は破られ、龍は飛び立つ。
だが、その一瞬で十分だった。龍の頭上に結界が張られ、
「神届物【幽霊武器・不殺の大砲】!」
龍の翼が真正面から打ち抜かれた。
〇〇〇
「ふう、とりあえずこれで上空から狙われることはなくなったわね……痛っ!」
「チェリシュ……無茶しないで……」
「私だってこんな状況でなかったったらこんなことしないわよ」
「そこは……自業……自得……かも……」
「う、うるさい!」
【不幸の詰め合わせ箱】を発動してから二人は必死で暴れ回る龍から逃げているのであった。それも全力で。
理由はもちろん、龍が後ろから追いかけてくるからだ。実際は住人の『恐怖に陥っている感情』に引きずられて暴れながら移動しているだけだが、二人からすれば追いかけられている風にしか思えない。
先程は、龍の動きが一瞬止まったためチェリシュが【不殺の大砲】を打ち込んだが、それでも二人は自分たちが優勢などとは少しも考えない。何故なら先程、クルルシアが龍化した直後に吹き飛ばされ、その力を思い知っているからだ。翼を使えなくした程度でその脅威はなくならない。
「だって、予想できるわけないじゃない! 戦闘不能に持ち込めばいいだけだったのに、まさか暴走してくるなんて」
「睡眠魔法とかに……しておけば……よかったのに……」
「そんなの効くわけないじゃない! 龍ってのはね、超級の妨害魔法でもすぐ無効化されちゃうんだから! 精神攻撃が一番確実だったのよ! それは【魔獣調教師】も同じ。それに何よ! なんであの子、龍と融合してるわけ?! もとの龍より大きいしなってるし!」
「多分……【心通者】のさらに上位互換……」
「なんですって? 彼女は転生者ですらなかったはずよね?! 龍が為す術なく取り込まれるって何?! あの年で既に、最上位ジョブに到達しているっていうの?!」
「そうとしか……考えられない……」
再び走り出す二人。
『痛い痛い痛い痛い』
その中、突如聞こえる龍の声。驚きふり返ると、龍が口に燦然と輝く光球を準備していた。
「やば! ミネルヴァ! 結界!」
「無理! あんなの耐えられない!」
「神届物で防げないってなに?! 仕方ない、なら私が身体強化で……」
チェリシュが身体強化で、ミネルヴァをわきに抱えて走り出そうとしたとき、龍に異変が起こる。
巨大な龍の口が勢いよく閉じられ、光の球が口の中で爆発を起こす。
それだけでは終わらず、全身を黒と白の槍が貫いていく。
『痛いよ痛いよ』
クルルシアの苦しそうな声が聞こえてくる。
「た、助かった?」
「多分……」
もがき苦しむ龍を見ながら、安堵の息をのむ。
そしてそんな二人に後ろから声がかかる。
「二人とも! 状況はどんな感じ?」
突然の掛け声に驚く二人。振り返った彼女らが見たのは紛れもなくプレアであった。
「プレア? 一体……何故ここに……?」
「ミネルヴァ待ちなさい! 彼女はプレアじゃない!」
近づきそうになったミネルヴァをチェリシュが制止。直後プレアの姿はブレ、老人の姿が現れる。
「よい反応じゃ。その様子じゃとわしと遊んでくれそうじゃの」
「ミネルヴァ、あんたは逃げなさい。ヴァン達がもう少しで来ると思うからそれと合流して」
「でも……それだとチェリシュ……」
「大丈夫よ、あなたが逃げ切った後にでも逃げるわ」
こそこそと相談する二人にしびれを切らしたのか、老人が名乗りを上げ始め、同時に姿も変わっていく。
「相談は済んだかのう? では名乗ろう。【ガタバナートス十四柱】色欲の使徒アル―ロ・ニーヤ。いざ勝負」
出来上がった姿はチェリシュそのもの、手に持つのは王宮に保管されていた黄金に輝く聖剣。
誰も知らないところで戦いが始まった。
〇〇〇
その少し前、
「ソフィアさん! 足場を!」
「分かっています!」
ソルトの呼びかけに応じてソフィアは複数の足場を作り出す。
「口に何か入れてる時は、開けるんじゃねえ!」
見えない足場を使って、ソルトは上っていき、今にも爆発しそうな光球のある龍の顎、そこめがけて、ソルトは奥義を放つ。
「奥義【骨砕き】!」
繰り出されたのは回し蹴り、体の姿勢を横にして、下から上に蹴りあげる形だ。龍の顎が勢いよく閉ざされ、光球が口の中で爆発する。
追撃と言わんばかりに、龍の目の前に移動したシャルが地上から魔法を放つ。
「闇と光よ、今こそ輝き、ともに栄え、ともに戦い、響きあえ、複合魔法【黒白魔槍】」
地上から、空中から、夥しい魔法陣が展開され、
「いっけええ!」
そのすべてから黒、あるいは白の槍が射出される。一片の容赦もなくそれらは龍の全身に打ち込まれた。
『痛いよ痛いよ』
直接頭に響いてくる絶叫。その直後、
「うぐっ!?」
「ああああ?!」
ソルトは墜落していき、シャルは身を強張らせ、地面に膝をつく。
「ソーちゃん!? ソフィアさんお願い! 私はシャルちゃんを診る!」
「任せてください!」
ソフィアは落下してくるソルト受け止めるべく【王者の庭】を発動し、先ほどまでソルトに背負われていたプレアも急いでシャルの元に駆け寄る。
「シャルちゃん! 大丈夫?!」
「はあ、はあ、はい、何とか」
顔には苦しげな表情を浮かべながらも、何とか返事をするシャル。
「それよりプレアさん、不味いです。非常事態です」
「ど、どうしたの?」
「彼女に攻撃したらいけません! 少なくともこの距離では」
〇〇〇
「いててて……」
「ソルト君、大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます」
落下してきたソルトをソフィアが【│王者の庭】で受けとめる。ソルトはゆっくりと地面に降り立つ。
「それで? 感触はどうでした? 倒せそうですか?」
「それが……ですね……」
「はい?」
歯切れの悪いソルトに対し、ソフィアは嫌な予感が隠せない。
「無理です。クル姉のやつ、与えたダメージをそのまま返してくるっぽいです。幸い効果範囲は近場にいた俺とシャルの距離ぐらいだと思いますが……」
〇〇〇
「感覚共有? あの龍が? そんなの見たことも聞いたことも……」
プレアは戸惑うが、シャルは確信を持って宣言する。
「間違いありません。私の槍が刺さった痛み、それがが私にも来ました。恐らく攻撃した人に対して、クルルシアさんが感じた痛みを相手にも与える、というものかと」
「なるほどね……。でも私がクルルシアにバレなかったのはミネルヴァちゃん頼みだったからな……。そうなると、攻撃が有効なのは……マドルか!」
【悪魔喰い】のメンバー。人形使いにして、マドルガータのことをプレアは思い出し、直後、
『あああああああああ??!!』
四体の人形が龍に向かって突撃した。




