幸せ
「ねぇ 知華、なんだかふわふわするわ…」
「それはマリーがずっと温泉に入ってたせいだよ。ほら、お水飲んでゆっくりしててね?」
「うーん…ありがとう、知華。」
色んなことを話しながら長々と温泉に入っていたせいで マリーがのぼせてしまったため、部屋に戻ってきた。真っ赤な顔をしてぐったりとしているマリーのそばに座って外を眺めていると、手にそっと何かが触れた。
「ん、知華…もうちょっとこっちに来て?」
「なに?…っと、急にどうしたの?」
「…何となく。幸せだなぁ、なんて思ったから。」
「ふふ、そっか。私もだよ、マリー。」
寝そべったまま抱きついてきたマリーの髪をそっと撫でながら、体調が良くなるまでこうしているのも悪くないかもしれない、と思った。
「なんか、こうしてると本当にふたりきりみたい。」
「え?今ここにいるのは私と知華のふたりだけじゃない。」
「ううん、そういう事じゃなくて。こんなに静かで、他に誰もいないみたいな空間で、こうしていられるのってなんだかいいなぁって思ったの。」
「そうね。…気が早いかもしれないけれど、またこうしてふたりきりでゆっくり出来るような旅行をしましょう。」
「そうだね。今度は海とかいいかもしれないね。」
「それもいいわね…!今はこの旅行が終わらないで欲しいと思うけど、帰ったらまた知華と旅行の計画を立てたいとも思ってるわ。」
「私もそうだよ。マリーと色んなところに言って色んなことしたいなぁって思う。」
見つめあって微笑んで、そっと手を絡めて。おでこを合わせて軽いキスをした後、マリーがそっと体を起こした。
「ねぇ、なんだかお腹が空いちゃったわ。晩ご飯を食べに行きましょう!」
「えぇ、突然だね…!…でも私もお腹空いちゃったし、行こっか。」
どちらのものかわからないお腹の音が鳴って笑いあって、ふたりで並んで食堂まで行った。
こうしていられるのって幸せだね、なんて言いながら。




