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密かなる口づけ 〜加奈目線5〜
「…。加奈、ありがとう。私、あなたに会えて幸せだよ。」
驚いて目を開けてしまいそうになった。
…今、知華が、あたしに会えて幸せって…。
思ってもいなかった。自分は知華と正反対と言ってもいいくらいうるさいと思っていたし、もしかしたら邪魔かもなんて思っていたから、そう思ってくれていたのが本当に嬉しかった。
こっそり目を開けて隣に座っている知華を見ると、もう眠っていた。
眠っている彼女はとてもかわいくて綺麗で。思わず見とれてしまって、ほんの少し雑念が思い浮かんだ。
今ならきっと気付かれない。
少し周りを見回して、周りの人がこちらを見ていないのを確認すると、知華の頬に軽いキスをした。1回だけじゃ足りなくて、さっきより唇に近付けてもう一度キスをした。
幸せそうに寝息を立てる彼女は何も知らない。独り言が聞こえていたのも、そっとキスをしたことも。
「…それでいいんだよ。」
そう呟いて、あたしは再び訪れた眠気に身を任せた。




