絡み合う目線〜マリー目線6、加奈目線3〜
〜マリー目線〜
「どうして?ここに知華がいるはずないじゃない。でも、見間違うはずはないし…どうしよう、こんな所で会うなんて…。…ひとまず部屋に戻りましょう…。」
そう呟いて部屋に戻ろうとした時、知華の隣を歩いていた女の子がふとこちらを向いた。
「…!」
思いがけず絡まった目線。振り向いたその女の子はとても可愛くて、つい、私なんて…と思ってしまった。でも そんな事もつかの間、私は慌てて反対方向に向かって走り出した。今は2人に会うことなんて出来ない。お願い、気付かないで…!
一緒にいるのが私じゃなくて辛いのと 私じゃなくても知華があんなに可愛く笑っていることがショックで、私は泣きそうになりながらその場を走り去った。
〜加奈目線〜
「早く入ろ!」
知華に褒められるなんて思ってなかったから、思わず赤くなってしまった。そんな顔を見られたくなくて急いで温泉の方へ向かったんだけど、ふと視界の端に見覚えのある人が見えた。
その人は、知華が見せてくれた写真の中の人によく似ていた。
「…え?」
目が合うと、その人は反対方向へ走り出した。
少し泣きそうな顔をしていたのは、あたしの見間違いなのかどうか…。
「加奈?どうしたの、何かあった?」
「っ、な、何でもないよ、いいから早く行こ?」
「う、うん…?」
誤魔化すように急いで歩き出すと、知華は慌てて追いかけてきた。
こんな時、疑問を持ちながらでも付いてきてくれる知華がありがたく思える…。
「…ばれないようにしないと。」
少しでもあたしと一緒にいてほしくて、知華に気付かれないようにそっと呟いた。




