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さよなら、空気ヒロイン

 二月半ば、受験が終わった。

 もう結果も届いている。……合格だった。

 この頃からだ。カオリ以外の空気たちも目に見えて薄くなった。


「なあ、カオリ――」

「あ、司! いいところに来た! ちょっとお買い物に付き合ってよ」

「ちょっと待てよ、おい。……ったく、しょうがねえな」


 カオリは気丈に振る舞っているが、俺は彼女の運命を知っているからこそそれが痛々しく思えた。


 他の三人も例外じゃなかった。

 チヒロとアリスは俺と一緒にいる時間が多くなった。


「司、何か手伝う事は無いか? 私でよければ力になろう」

「ボクも手伝うよ」


 俺が料理をしていると、二人は料理なんてした事も無いのに積極的に手伝ってきた。

 一方で、ヨウコは普段ならチヒロに食って掛かるのに、次第に大人しくなっていった。

 多分、今まで自分は一緒にいたから最後ぐらいは譲ってやろうと思っているのだろう。ヨウコは俺にベタベタしてこなくなった。


 カオリは普段通りに俺に接した。

 チヒロとアリスは俺と関われるきっかけを探した。

 ヨウコは俺との距離を置いた。

 四人が四人、自分のやり方で一か月と半月を過ごした。


 ――そして、春。


 大学の入学式があり、慣れないスーツ姿の俺は、いつもの様に空気美少女たちに見送られて家を出た。

 それから退屈な話だの何だの聞き、それが終わるとすぐに帰路に着く。

 電車に長い事揺られていると、緊張も無かったかのように忘れ、これからは普通の日常が始まるんだなあと、感慨深く思いながら家に着いた。


「ただいまー」


 帰宅しても部屋の明かりは点いていない。

 空気たちは消えてしまった……。

次回で(恐らく)最終話です。

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