さあ、鉛筆を転がそうか
「いよいよ行くのね」
「ああ」
かつて無い緊張感に固まる俺を、カオリは無言で見守っている。
玄関にたたずみ、扉を開けかねている俺にカオリは「頑張って」と、一言激励の声を掛けた。俺は意を決して外へ出た。
「やっぱみんなピリピリしてんな」
試験会場に着き、第一に感じた事だ。誰かが何か言った訳でもないが、周囲のプレッシャーがひしひしと伝わってくる。ここにいる多くの人にとって、今日は人生の分岐点となるのだから当たり前なのだけれども。
そう、今日こそ待ちに待った大検の試験日なのだ。俺も大学を受験するためには試験に通らねばならない。
「頑張るぞ!」
気合いを入れるつもりで、俺は天高く拳を突き上げた。
***
一科目目、二科目目と終わり、昼休み。ようやくこの重々しい空気にも慣れ、羽を伸ばす事ができる。ただ、問題は午後だ。午前は割りとよくできたと思うが、この次の国語は鬼門となる。中学や高校の教師は本をたくさん読めとよく言ったものだが、実際問題それで国語ができる様になるか問われれば答えはノーだ。確かに、読書量を増やせば国語力は増す。けど、国語に長けていても読みにくい文章というのはあるのだ。せめて、簡単な文章が出る事を祈るばかりだが……。
「……どうしよう。全く分かんねえ」
昼休みが終わり、配られた問題用紙には俺にはキャパシティオーバーの文章が記されていた。それでもなんとか解答用紙を埋める事はできた。けれども、この問題の出来が気になり、後の二つのテストには手が進まなかった。
結局、微妙な気分で一日目の試験を終える事となったのは言うまでもない。
私は大検に詳しくないので、具体的な試験や科目が大分割愛されてるのは仕様です。
なお、二日目のストーリーはありません。




