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18

 

 能力の発動と共に異変が起きたのは椋ではなく、出丘の方だった。

 仰向けで気絶していた出丘の体が輝きながら宙に浮き仰け反る。

 浮遊している出丘の胸元、ネックレスがそのさらに上に浮上し、そこから2種類のわずかな光が漏れだす。

 一つは黒。鈍く光る光と言えるのかどうかも微妙なものだ。

 もう一つは水色。きれいなとってもきれいな水色だった。

 (黒いのが《悪魔》で、この水色が出丘本来の能力が詰まったもの…。こんなにきれいな色をしてるのに…どうして…)

 その二種類の光が出丘のもとを離れる。

 椋の天然結晶の輝く星空のような金色の粒が光を放ち、そこから伸びる光の手のような物が出丘の元に向かい、黒色の光だけを器用につまみ再び椋の結晶に戻っていく。なんだか少しグロテスクな光景だったが、それが終わるのをジッと待った。

 

背中の切り傷が今頃になって痛くなってきた。浅いが大量の傷があるため、これが終わったら病院に行かなきゃいけないな、と思いながら今から診察時の怪我の理由の言い訳を考えておく。 

 

 出丘の謝罪の言葉など聞く前に終わってしまったが、少々確かめたいことが椋にはあった。

 椋は出丘のもとに向かい、残った水色の光を両手ですくい上げ、そのまま胸元にそっと引き寄せる。

 光はごく自然に椋の結晶の中に吸収されていく。

 出丘のを吸収するのはどうかと思ったが、こんな外道から、どうしてこんなにきれいな結晶光が出るのか気になっていたのだ。

 光がすべてなくなると同時に、出丘がゆっくりと地面に背中をつけた。


 ふとあることを思いフールに尋ねる。

 「この能力で吸収した能力はどうやって使うんだ?」

 愚者から呆れたような声が飛んでくる。

 「あの時は自分で勝手に使ってたではないか。」

 「あれは!必死だったから…って…あれ?」

 なんでこんな言葉が出たんだろう。真剣にそう思った。フールからその当時の話は聞いたものの、彼自身が思い出せないようにしたと言っていたはずだ。

 「まぁ、自分の思いのままにやってみろ。どうせまた次の機会が来るまで封印するのだから。」

 フールの発言に少し、いや結構、いやかなりの驚愕を示してしまった。

 「また使えなくなるのか?これ……。」

 虚しさに近い物が椋の心を満たしていく。

 「能力があったって使いこなせなければ意味がないだろう。」

 フールから飛んでくる、反論の余地がない短絡的な正論に思わず黙り込んでしまう。

 

 「んじゃあ、いっちょやってみるか!」

 真琴曰く、エネルギーの流れがなんたらを少しイメージしながら、先程『愚かな捕食者』を使った時の感覚を忘れないように、静かに結晶に意識を集中させる。

 

 先程と違い、結晶からこぼれるのは優しい水色の光だった。


 

 

 

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