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17

 椋とフールの作戦は単純なものだった。


 椋が『移り気な旅人』を使用する。あの技は瞬間的に閃光のように金色に輝く。

 これまでは昼間にしか使ったことがなかったが、夜に使えばなおさらだったはずだ。

 それでまず出丘の眼をつぶし時間稼ぎ兼奴の動揺を誘ったのだ。


 その後椋が足に残る『光輪の加護』を使用し、空中に跳びあがる。

 滞空中にフールが右手の光輪を頭に移動させる。

 足の光輪の追加効果を使い座標指定を出丘にしもう一度跳躍し、出丘とぶつかった。

 たったそれだけだった。

 

 椋の頭の光輪は出丘の蛇槌の柄頭を粉々に粉砕する。

 破片は黒く鈍い光になり、霧散する。

 出丘が負けると覚悟したのはこの時だった。


 そのまま落下を利用して、椋は覚悟を決める。

 自分自身もさすがにこの高度からお互いの頭をぶつけ合えばただでは済まないだろう。

 しかし中途半端にやめても自分が傷つくだけだ。

 それなら巻き込んでやろうと、出丘めがけて頭突きをお見舞いした。

 

 二人は地面に倒れこんでいた。

 「おい!起きろ!いつまで寝てるんだ!」

 というフールの呼び声に起き上がったのは椋だった。

 右手ですっと前髪を持ち上げる。傷が一切ないきれいなおでこだった。

 『光輪の加護』を頭で使ったのは初めてだったが、一段目が攻撃、二段目が防御という構成だったのかもしれない。確信はないがそんな気がする。

 でもないとなぜでこが無傷なのか理由が説明できないからでもあるのだが

 椋は一度あたりを見渡した。

 

 戦場だった屋上は床が削られ、穴が開きただの喧嘩では済まされないレベルまで破壊されていた。

 「おい!椋。さっさと済ますぞ。」

 フールはそういうとテクテクと気絶している出丘の頭の前に行く。

 「早くお前も来い!」

 とフールに叱られてしまう。

 なんだか少し焦っているようだった。従わない理由もないので能力を解き、急いでフールのもとに向かう。


 目の前にはにくい相手が無防備にも気絶している。

 きりきりと血が出そうなほどに拳を握りしめるが、フールの指示により、やりすぎるなと言われているため、それをグッと抑える。

 「では、始めるぞ。」

 そういうとフールは椋に小さな手を向け、少々力んだような表情を見せる。それと共に彼の掌に小さな球体が形成されていく。

 フールの手から放たれた金色の光の球が、椋の胸元の天然結晶に向かい飛んでいった。天然結晶に吸い込まれるように球体は消えていく。

 それと共に椋の体に異変が置き始めていた。椋が喉元を抑え、酸素を欲するかのようにもがき、その場に倒れこむ。

 「熱い………!」

 喉が焼ける。まさにそんな感じの痛みだった。痛みが消えるまで時間がかかったわけではなかったが、気持ちの悪い感覚がまだ喉にへばりついていた。


 「さぁ、使ってみろ。」

 フールが椋に促す。それに従うように自分でも一切使い方がわからない能力名を叫ぶ。



 「『愚かな捕食者』(フール・イーター)

 

 

 

 




 





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