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14

 左手を不自然な方向に曲げ倒れこむ出丘に向かい椋が言う。

 「訂正しろ!!」

激痛に顔を歪めながらも出丘はそうしようとはしなかった。

 「君は僕に何を訂正しろって言うんだい?」

 わざとらしく出丘が起き上がりながら言った。


 右手の蛇槌をしっかりと握り直し、出丘は続けた。

「見ての通り僕はまだ負けた訳じゃないだろ?それに、僕には一切訂正するような事が思い当たらないんだけどね!!」

そう言って、出丘は右手の蛇槌を少し離れた場所に居る椋にむかって振る。

その動きに会わせて、蛇槌の柄に巻き付いた黒蛇が椋に向かい、まるで生きているかのようにその鋭い牙で椋に噛みつこうとした?

 速度はあるが避けれないほどではない攻撃だったので、椋はそれを着実に回避する。

 

 黒蛇は意思を持っているかの様に椋の事を追尾してくる。

 あまりにもしつこい追尾に思わず光輪を使い、蛇の頭を叩きつぶす。

 地面と椋の手に挟まれた蛇の頭がどす黒い霧を回りに撒き散らす。


 『それを吸うな!!』

 というフールの叫びむなしく、少量の霧を吸い込んでしまう。

 口と鼻をふさぎ後ろに飛ぶが、その時点で異変が起きていた。


 椋は後ろにとんだ筈なのだが、気がついたらバランスを崩し、黒い霧の前で倒れていた。


 毒ガスか何かだったのだろうか、しかし体がしびれているわけではなし、熱などもない。

何があったかはわからないが、右手を使いゆっくりと 立ち上がろうとする。

しかし右手は動かない。動いたのは左手だった。


再びバランスを崩し倒れ込んでしまう。

椋が奴の槌矛の能力の延長線上にこの能力があるのなら、と考えた結果、導き出された答えは1つだった。


四肢の動きが、左右逆なのだ。

右足を動かそうとすれば、左足か動く。

左肩を動かそうとすれば、右肩が動く。


一見単純そうに思うが、日頃使いなれているものほど、こうなったときにどうしようもなくなってしまうものだ。


なんとか立ち上がる事はできたものの、足元がおぼつかない。

そんななかでも椋に近付く出丘の歩みは止まらなかった。


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