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正の《隠者》雁金悠乃
正の《審判》坂本真也
負の《戦車》榎田康介
負の《恋人》弧毬毬藻
正の《星》成瀬昴
負の《女帝》城ヶ崎妃
そして《愚者》辻井椋
今回、物理特化チームとして割り振られた正の《塔》芙董頓馬討伐メンバーだ。
全ての生徒の眼前にはポップアップされたマップデータが表示されており、とある一点が赤く点滅し、いまも微少ながら移動している。
全員が一度作戦をたてるため、校舎棟の一画、職員党との境目に近い公園に身を集めていた。もちろん作戦会議の為である。無鉄砲に脅威に立ち向かうほど無謀な人間はここには居なかった。
「幸いこのメンバーの中には一度芙董頓馬と戦闘を行ったメンバーがいる。お嬢ちゃん、相手の能力を簡潔に説明してもらえるかな?」
正の《審判》、坂本真矢がこの場を仕切るように発言をする。実際実力的に言えば彼は1、2を争う存在だろう。しかし話しかける相手と言葉が悪かった。
椋が聴いたのは雁金さんの頭の血管が切れるような音だった。
雁金さんは小さな体を真矢の前にまで運ぶと少しだけジャンプし勢いよく胸ぐらをつかみ、その体格からでは考えられないほどの力で引き寄せると、勢いそのままに真矢の額に自分の額をぶつけた。
周囲のほとんどの人間が、驚愕の表情、もしくは呆然とした表情を浮かべる中、雁金さんが言葉を吐いた。
「おいクソガキ!!なんだその小学生に対し話しかけるような口調は!?ぶっ殺されてぇのか?」
暴れだす雁金さんを止めるため、椋は必死に仲裁に入る。
「落ち着いてください、師匠!!先輩は知らないんだから仕方ないでしょ!!」
咄嗟のできごとに反応しきれなかった真矢。「うっ……」と唸り声を鳴らしながら、地べたに座り込む。
「フンッ!」
と、真矢から顔を背ける雁金さん。どうにか落ち着かせることに成功した椋は、消して安堵を浮かべることはなかった。
そんな状況を見ていて黙っているほど、もう一人の朱雀生は冷静では無いのを理解していたからだ。
「オイテメェ!!クソガキ!!真矢さんに何てことしてくれてんだ!!」
これには椋自身手出しができない。というよりもしたくないと言うのが正解だろう。
目も当てられない状況に椋は静かに溜め息をつき、右手でで自分の目を塞いだ。




