表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
401/414

 同日同刻 所花車学園職員塔特別病棟



 椋たち五人と一匹(?)は、雁金さん、校長、謎の《エレメントホルダー》の戦闘開始を察知するまでさして時間を必要としなかった。


 「始まったな」


 フールの声が病室に響くと、病室の緊張度は一気に上昇した。

 

 「といっても、俺たちにできることなんて何もないんだろ?」


 懋がいつもどおりの少しおちゃらけ態度で《愚者》に尋ねる。

 皆の緊張をほぐすためか、少しわざとらしい懋の言葉に、フールは首を縦に振った。


 「我々にできることは現状では存在しない。だが、この時間を無駄にするわけにも行かんだろう…………」

 

 フールは椋の頭上で方向転換をし、契の方を向く。


 「おい小僧」

 「はい?」

 

 契は《愚者》の問いに耳を傾ける。


 「御前は今、正の《力》のホルダーになった訳だが、自らの中にそれを感じるか?」

 「はい……。一応……」

 

 その言葉に反応するように真琴が横から言葉を挟む。


 「一応じゃなくて確実よ!アタシの片眼鏡(モノクル)で確かに契の中にある力を見ることができたもの」


 真琴の言葉を聞いた《愚者》は再び契に問う。


 「会話はできるか?」

 「会話ですか……?ど、どうやって?」

 「なんていうんだろ……。感覚的には思考通話に似てるかな……?頭の中で自分に語りかけるように声をかける感じかな」


 

 今度はフールの下から椋が間を取り持った。

 この場で最も経験の長い《エレメントホルダー》として、契へのそう言った類の助言は椋が適任なのだ。


 「やってみるよ……」


そういって契は目を閉じる。

病室の中に先程とはまた違う緊張が立ち込め、しばらくの無音が訪れた。


「ど、どうなのよ契?」


数分間の沈黙の後、とうとうしびれを切らした沙希が無言の契に尋ねる。


「だめだ。なにも聞こえない……」


契のネガティブな発言に反応し、フールが呟く。


「ふむ……。そうなれば、まだ眠っているのかも知らんな」

「眠っている?力を使いきった後のフールみたいにか?」

「違うわ。力が足りてないのよ」


椋とフールの会話に割り込むように真琴が呟く。


「足りてない?」


一番不安になっているであろう契が、思わず真琴に尋ねた。


「契、今のアンタのなかの《エレメント》は恐らく種子みたいな状態なのよ。アンタの力と言う名の栄養を与えないと芽生えない種子」

「種子……」


 考え込むように少しうつむく契。そんな契にフールは告げる。


 「考え込むほどのことではない。我々《エレメント》の覚醒にとって必要なのはきっかけだ。御前の素質は十分にある。御前の中の《力》を動かす何かがあればきっと目覚める」

 「きっかけ……か……」

 

 少しホッとした様子で契がベッドに沈み込む。

 無機質な空間に軟禁状態の五人は何かできるわけでもなく、状況を待った。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ