罪機崩し6 ~休息無き襲撃~ 1
同日 時 ?? 所 ??
「博士、たった今七罪結晶コードネーム《嫉妬》《暴食》《怠惰》《強欲》4つの沈静化が確認されました♪」
光源がPCモニター以外に存在しない、薄暗い部屋で少年、小々馬雲仙は楽しそうに報告をする。
「先日の契約者の戦い、まさか正の《隠者》が出てくるとは予想外ではあったがいいデータが取れた…………」
多くを語らない男、芙堂頓馬も、データを興味深そうに眺めながら呟く。
「博士ったらこの一件になるとよくしゃべりますね♪もしかしてテンション沸き立ってます?」
「戯言はいい………そっちのデータを早くよこせ………」
「はーい♪」
小々馬はカチャカチャと大きくキーボードを鳴らすと、芙堂の手元の端末にいくつかのデータがポップアップされる。
「《愚者》…………」
芙堂は端末を匠に操り一つ一つのウィンドウに目を通していく。中には黒山羊《傾山羊》との戦闘を行っているものから、《契約者》と様々な獣たちとの死闘を繰り広げている動画、さらには一人の少年のパーソナルデータまでもが存在した。
「辻井椋か……面白い……」
多くを口にしない初老の男はボソッとつぶやきデータに目を通し続ける。
「これが《色欲》戦であの不可解な増殖現象を起こした《愚者》………」
自分でまとめたデータを興味深々に見返す無邪気な少年は続ける。
「ぬかりの内容、隅から隅までしっかりと調査しておけ……………《原罪》の完成は近いぞ………」
「わかってますよ~♪」
小々馬の簡易な返事を聞くと、男はゆっくりと立ち上がる。
「博士どちらに?」
空調機器と様々な機材に圧迫された、ひどく暗い、冷たい空間を芙堂はゆっくりとあとにするのを見た小々馬が尋ねる。
「雲仙、君も準備をしておけ……目的地は近い……」
男は呟くと少年は「ハっ」と間抜けた声を上げ、キーボードを叩く。
「ホントだ、もう少しじゃないですか♪」
さらに嬉しそうな声音で少年は席を立つ。
「さぁ、始めようか」
「はい♪」
小々馬は芙堂を追うように暗い部屋をあとにする。
部屋に残された薄ら光る画面には現在地を示すであろう赤い印と共に、花車学園の地図が表示されていた。




