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 仮面の中央。縦に真っ直ぐおおきな一本の亀裂が。

 それに続き蜘蛛の巣のように、複雑に次々と亀裂が入っていく。


 『あ゛ぁあ゛ああぁぁぁあ゛ぁぁぁぁあ゛!!!』


 その場で鳴り響く契の叫びのようにも聞こえる七罪結晶の悲鳴合唱。けたたましい叫びが鳴り終わりポロポロとこぼれ落ちる仮面の欠片。

 黒崎の時もそう、白鳥の時もそう。最初に契の結晶を破壊した時もそうだ。

 七罪結晶を使用中にその結晶を破壊すると使用者は気を失ってしまう。

 結晶が吸った感情を回復させているのだろうと勝手な推測を立てながらも、椋は足元に崩れ落ちようとする契を優しく受け止める。

 そのまま彼を地面にゆっくりとおろし、仰向けに寝かせると、その横で腰を曲げ、尻を地に付け胡座をかく。


 ここからは本当に推測でしかない。

 結晶が破壊された直後なら本心と対話が出来るかもしれないという、根拠のない仮説を実証するしか今の椋には手段がないのだ。

 

 「悪いッ!!契!」


 ばちっ!!


 と音が鳴る。

 結晶にヒビが入った音などではない。

 椋が思いっきり力を込めて契の頬を引っぱたいた音だ。

 これまでは仮面に守られほとんど傷のついていなかった契の綺麗な顔に一つ赤い手型がつく。


 「痛ッ………………」


 攻撃に反応するように少し体を揺らし、ゆっくりと目を覚ます契。

 結晶に支配されていた時のようなうつろ目ではなく、しっかりと『自分』持っているように見える目をしていた。


 「僕はまた負けたのか…………」


 吐くように静かにつぶやく。

 どこかわかりきっていたような声に少し疑念を感じたが、椋は素となった契に尋ねる。


 「ああ」


 返す椋の手元には七罪結晶《嫉妬》の破片がある。

 今彼がこれを目にしてしまえば、再び意識が沈んででしまうかもしれないと危惧したからだ。

 

 「どうしてあんな事をしたんだ?」


 そんな事を犯人に直接聞くなんていうのはバカがすることだ。

 そう分かっていても椋には尋ねることしかできなかった。

 彼の本心を聞き、それが正しいかどうか…………いいや、正しいわけがない。それに自分が納得できるかどうかを知りたかったのだ。

 

 全身に力が入らないようで、契は一切体を動かすことなく空を見上げ「ハハッ」と笑った。


 「それを僕に直接聞くのかい?」


 その声には久しぶりといってもいいほどに懐かしい、彼の純粋で素直な感情が含まれていた。



 


 


 

 

 

 

 

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