14
気を取り直すように、次の議題に移ろうとしていた。
次は今後椋は学校をどうするかという事だ。
あれだけのことがあったのだ。中高一貫教育校で、ただでさえ知り合いが多い学校なのだから、行きにくいなんてもんじゃない。
いっそ誰もいない学校に転校してしまおうかと考えていたところである。
しかし、もう卒業もして進学先も決まっている中、受け入れてくれる高校なんて存在するのだろうか?
それをこのみんなと相談しようと決めていたのである。
一通り説明を終え、みんなの意見が聞きたいと椋が言うと、真琴から意外な答えが返ってきた。
「アタシは、今のアンタを受け入れてくれる学校を一校だけ知ってるわ。アタシが入学する学校だけどね」
こんなにも簡単に話が進むものなのかと思いつつも、いくつか真琴に質問する。
「学校の名前は?」
「国立花車学園」
真琴から出てきた学校名に思わず絶句してしまった。
花学といえば、能力開発の研究も兼ね、2年前に作られたばかりの真新しい国内最大級のマンモス学園である。
試験に合格さえできれば誰でも入学できるうえに、国内で唯一飛び級さえも許されている学校だ。
入学試験にはもちろん筆記も含まれているが、あまり評価に含まれない。
入学試験で最も評価されるのは能力だ。言えば秀でた能力者ならバカでも合格できる学校なのだ。
1週間前までは無能力だった少年には一切無関係と思っていた学校でもあった。
「た…確かに、あの高校はいつでも入学試験やってるし、国の支援で学費も完全に無料って話だけど…」
「ん?アンタ何か不都合でもあるの?悪い話じゃないと思うんだけどな…」
と不思議そうな顔を真琴が向けてくる。
「いやぁ…俺なんかが合格できるわけないと思うんだけどな…。頭は悪いからな…。能力だけで合格となるとそれなりに厳しい気がするんだけど…」
と真剣に考えていると、真琴の隣にいた優奈が、クススッと笑いながら、
「たぶん今の椋さんなら、一言で一発合格ですよ?」
「一言…?いったい何を?」
と真剣に考える。が結論を出す前に、隣にいた沙希がいう。
「俺は愚者の能力者です。って言えばいいのよ」
(そうか…!なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう)
と、真剣に自分の頭の心配をしてやりたかった。
続けるように、沙希が言う。
「椋が花学行くんなら私も一緒についていこうかな」
「沙希まで無理してついてくることないんだぞ?世間的に沙希は事件とは無関係ってことになってるんだから」
「椋のいない学校なんてつまんないよ!」
こういう時の沙希は何を言っても聞く耳持たないワガママガールになってしまうのである。
渋々了承し、とりあえず怪我が完治してから、一応親に相談してみるという事でまとまった。
しかし、その親が椋にとっては最大の強敵であった。
この議題で本日の話し合いは終了したので、適当に話をしたのち、みな帰っていった。




