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 「おいおい、ほんとにそんなうまくいくのかよ?」

 

 汗を流し、苦笑いを浮かべる雁金さんに、先ほど《愚者》から託されたメッセージを伝える。自分自身も聞いていてこんなことを出来るのかと思いたくなるほどに突飛な話だった訳だが、それでもおそらく一字一句間違えずに伝えることはできた。


 「まぁフールがそう言ってるんですし……大丈夫でしょう」


 この世の誰よりも信頼しているであろう者の言葉を疑う訳もなく、椋は、雁金さんは、《愚者》のシナリオを進める。


 「んじゃあ一旦解除するぞ?」


 雁金さんは『隠者の隠れ家』によって幽閉している三体を解放させ、再びエンヴィの上へと移動させる。もともとエンヴィが高所にいたこともあり、3体が地面に激突することはなかった。


 「ハァ……ハァ……」


 と大きく息を荒らげる雁金さん。相当無理をしていたのか、一度地面に腰を落とし、息を整えようとする。


 「とりあえず、その《愚者》のプランをすすめるなら、かなりタイミング的に厳しいことになるぞ?」

 「そうですね……飛ばしても、戻されたらどうしようもないですしね」


 再び立ち上がる雁金さん。いつ見ても師匠とは思えないほどに小さな体。頭には…………………


 「って帽子はどうしたんですか?」

 

 確か昔負の《太陽》戦で燃やされた、雁金さん愛用の某有名RPGの雑魚キャラのような帽子がなくなったままである。


 「アレは50年前にドソキホウテで買ったおもしろグッズだからな…………もう売ってないんだよ………」

 「ドソキホウテ…………」

 

 謎の帽子の謎の出処を知ったところで、さらなる変化に気がつく。

 

 「髪の毛のうねりもなんだか少なくなってませんか?」

 「ああ、そうだな……気づいたらこうなってた」


 ソレイユの呪縛から解放されたからだろうか?昔《隠者》の心内空間で見た雁金さんの過去像とだんだんに通ってきている気がする。

 相変わらず顔の左側は包帯に覆われているが、それがなければいつか誰か判別できなくなるのではないかと思える程の変化がたったの2ヶ月も経たずに起こっていた。

 

 

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