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 脳に一瞬だけ嫌な予感が走る。しかし深く考える暇など与えないかのように、戦況は刻一刻と変化していく。


 開拓が進んでいないように見えるこの島の中、ついに鬼熊の左腕が飛んだ。

 もちろん生物といえど能力。結晶光からできたものなのだから元に戻してしまえば腕など一瞬でひっつくことだろう。しかしこの状況で鬼熊を戻す程今多は馬鹿ではないのだろう。そうしていたならば、鬼熊の左腕どころか今多の首が飛んでいたことだろう。

 たった一匹の狐が繰り広げる破壊の嵐は止むことを知らずに平地というモノをなかったことにしようとしている。


 「エンヴィ………………!!」


 左足の光輪を消費し、おそらく一度しかないであろう不意打ちのチャンスを使い、エンヴィに殴りかろうとする。瞬間的に50メートルはあったであろう距離をつめ、滞空する不思議ながらの入ったローブを身にまとうエンヴィに右拳を突き立てる。

 しかしその攻撃がエンヴィを地に落とすことはなかった。なにか柔らかい。壁のようなものがエンヴィを包んでいるのだ。不可視だが確かに感触がある。


 (黒崎戦じゃこんなもの…………)


 と急に冴えだした思考が現状を理解し、先程の跳躍でできた足場を蹴り、今多に向かい2段階目の跳躍をする。

 突如戦闘に割って入ってきた少年に驚きを隠せないような顔をする今多だが、それがすぐに辻井椋だという人間だと理解したのか、すぐに攻撃されることはなかった。


 「何があったんですか?」


 椋の問いかけに今多は素直に答える。


 「僕と君は転移時に顔合わせをしないように別々の時間にこの時間に飛ばされた。その15分という待ち時間のあいだにやつが来たんだよ」


 黒く少しだけ癖のある髪の朱雀生が思っていたよりも冷静にそう言う。


 「怪我は?」

 「僕の方は大丈夫。でも君、なんで敵のことを心配するんだい?」

 

 今はそんなところではないはずなのに問うてくる今多。


 「今はそういう関係じゃない。あんた俺がなんで七罪結晶を集めてるか知ってるんだろ?」

 「ああしってるさ。偶然聞いちゃったからね」

 「偶然ね……」


 そんな偶然なわけがない。おそらく彼の正式な、ナマケモノの召喚系能力で身を隠し盗み聞きでもしていたのだろうと椋は考えていた。自分の部屋以外でそんな話をするわけがないし、その話をしたのは校舎棟白虎区で金田の説得に当たった時くらいだからだ。

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