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20

 ○~○~○~○


 同日 所 自室 時 放課後


 ようやく、いや、目的を達成したわけではないので『一応』というべきだろうか?麒麟寮で、黄色いラインの入った制服に袖を通し、まともに授業を受ける。そんな一日を送ることができた。

 実際、この寮で生活した時間よりも、蒼龍で暮らした時間の方がよっぽど長い。だが、それのおかげだろうか?沙希、真琴、契、懋。彼らと過ごす時間はいつにもなく濃密で、充実したものであった。

 久々にそんな充実した一日を過ごし、そんな甘い現実から引き戻される。

 

 「何書いてるんだ真琴?」

 

 ふとホロキーボードに高速でタイピングを行っている真琴に問いかける。彼女は操作する手を止め、可視化させたウィンドウをこちらに向ける。


 「これまでの寮間闘技に今多が出たことないかを調べてたの」

 「ああ、そういや全部メモってたんだっけか?」

 「今年のデータはね?少なくともあたしたちが入学してから一度も対戦した記録がないわ」

 「そうか……」


 そう言うと真琴はこちらに向けたウィンドウを操作し、もうひとつのデータを表示させる。


 「まぁ、無敗記録は確かみたいね。戦闘時間が2時間超えとかざらじゃないみたいだけど、過去に負けた記録はない」


 今多の過去対戦記録だ。絶対強制参加の寮間闘技は日に一回。膨大な数の生徒を抱えるこの学園ではその舞台に立てる人間のほうが少ない。ほかにも多数のイベントごとなどで行われる公式戦をこなしたとして、一年間で行われる公式試合は合計で10回程度だろう。

 『1』

 これが今多がこれまでこなしてきた公式戦。どれだけサボればこんな数字になるのか。椋自信、既に各寮対抗試合に出場し、乙姫以外の全員と先頭を行ったため3回の公式戦を行っている。


 「どうやったらこんなに少なくなるんだろうな?」

 「イベント関連は欠席しようとしたらできるし、この記録も寮間闘技の物だしね」

 「つまり寮間闘技が強制参加制じゃなかったら『0』ってことか」

 「まぁそういうことね」


 対人戦闘に臆病なのか?それともただ面倒なだけなのか?もちろん椋も人を傷つけることをよしとは思わない。村本の展開するフィールドがなければ戦闘なんてするわけがない。

 だが、そんな人間も七罪結晶の手にかかればここまで変わるものなんだなと、少し感慨深いところがあったのだ。

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