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『問題?なんですかそれ?』
椋は素直にそう尋ねると、村本も隠すことなく語り始める。
『《怠惰》が喰らう感情は惰性、後回しやらなんやらだ。今多はそれを食われているせいか、かなりアグレッシブなんだ』
『アグレッシブ?って、もう暴れる寸前ってことですか!?』
校長の発言に思わず出発の準備を始めようとするが痛む全身がそれを阻害する。
『いや、それがな……その今多が私の隣に居るのだよ…』
『…………………へ?』
あまりにも突飛な話に頭がついていけなかった。その今多とやらがどうやって校長の隣にいるのか?校長がこうして通話しているということは無事にはかわりないのだろうが、というかそもそもそんな一生徒にやられるような弱い人間ではないはずだが。
『つまりだな…何と言えば良いのか…まぁ一度こちらに来て欲しい……と言いたい所だか…今の君には無理か…』
珍しく困り果てた雰囲気でそう言う校長。どうにかしたいのは山々なのだが校長の言うとおり体は見事なまでにいう事を聞いてくれない
『じかんはあるかね?』
『まぁ時間だけなら………』
『今からそっちにⅤを送る、少し強引だがベッドごと来てもらっても構わんか?』
『え!?ベッドごとですか?まぁ構わないですけど…………………』
謎の提案に少々戸惑いつつもそれを受け入れ通話を切る。一体好調に何が起こっているのか、全く理解できない状況の中で1分と立たないうちに部屋の中にⅤが推移してくる。
「おはようございます辻井様」
「おはようⅤさん」
「もう向こうに推移してもよろしいですか?」
そんなことを言われたところで現状寝たきりの椋に特にできることもなく、Ⅴに向かい首肯する。
彼はいつものように両手をまっすぐこちらに向けると推移を開始させた。




