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 同日 所 麒麟第一寮 時 午前九時


 新田、真琴そして何故か女装した金田までもが学校に登校していき、痛む体を動かし再び布団に沈んだ椋。

 いろいろとやらなければならないことがある。素直に休息を撮るのはそのあとでなければならない。

 先程の真琴と金田の話だけで昨日の事件の全容を理解したわけではない。知っておかねばならないだろうからすべてを知る人物にそれを尋ねる。ついでに報告も兼ねてだ。

 OLを思考操作に切り替え、校長、正の《魔術師》村本に向けボイスコールを飛ばす。正直出てくれるとは思っていなかったのだが、長めのコールの後に彼の声が聞こえる。


 『村本だ』

 『辻井です…』

 『要件は?と聞かずともわかるがな』

 

 村本はそういうと、椋の視界の端に送り主不明のデータが送られてくる。もちろんタイミング的に村本だということは間違いないのだろうが、何故か彼は匿名にこだわる。

 椋は何も言われぬままそのデータを開く。

 タイトルは《色欲》回収戦における被害状況。中身はけが人の数や使えなくなった建物、上空写真等様々なものがあったが、戦闘中に自分が見たモノそのものといっても良かった。幸い死亡者数は0となっている。


 『今校舎棟白虎区は全区域封鎖。能力孤児たちが全力で修復にかかっているため1日、いや、2日後には髻になることだろう』

 『良かったです………』


 やはりここまではっきりとしたモノを見せられてしまうと、気が滅入ってしまう。真琴に何度も何度も「アンタのせいじゃない」とは言われたものの、自分の過信のせいでこうなってしまったことは事実だろう。卑怯ではあるが、白鳥を無条件で襲うことだって椋には出来た。七罪結晶の使用を縛ることだてできたはずだ。


 『君の方はあまり大丈夫ではないようだな。思考が漏れているぞ?』

 

 心配、というのかあくまで教師として生徒に気をかけるような、本気かどうかはわからない事務的な言葉に少し胸を詰まらせる。


 『すいません』

 

 そんな言葉しか頭に浮かばない。

 

 『君がそう悔いることではない建物やけが人など今の時代いくらでも直せてしまうのだから。むしろ死者を出さなかったことに賞賛を送りたいくらだ』


 あくまで事務的口調だが、先程とは違い少しだけ感情がこもっているような声。顔が見えない相手との会話だが、まるで隣に立ち励ましてくれているかのような声に椋は何故か妙な安心を覚えてしまったのだった。

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