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23

 椋は手元に現出された蛇槌をポイッと投げ捨てる。重力に従い落ちていく蛇槌はゆっくりとしたスピードで黒山羊に向かっていく。それはさして落下速度を上げぬまま傾山羊に衝突すると、あの傾山羊をいとも簡単に白鳥のほうに向い吹き飛ばした。


 「傾山羊が………!?」

 

 傾山羊を弾き飛ばされた白鳥が呆然とした顔でこちらを見ている。


 「アンタはやっちゃいけない事をした………それがわかるか?」

 「どうやって………そんなに……能力を……」


 椋の問いかけには一切反応せず、ただ目の前の現実を受け入れることができないといった表情を浮かべながら何を否定しているのか首を横に振りつづけていた。


 「なんで関係ない人達を巻き込んだ!!」

 「何してる傾山羊!!早く立て!!」


 やはり白鳥は椋の言葉に反応を見せない。白鳥は白鳥の頭部に飾られたカチューシャがどす黒い光を放つ。

 

 「ベェェェ!!」


 とその光がそのまま傾山羊の力にでもなったかのように、傾山羊が3本足を起用に操り立ち上がる。自らの意思で動力供給ができるのだろうか?


 「これはあんたが自分の意志でやったのか?」


 今この高さからでも見渡せる光景は実に異常だ。これが学校なんて誰が思えるのだろうか?

 椋は自ら投げ捨てた遠方にある蛇槌を消滅させ左手に呼び寄せる。昔、思い出したくもない事件だが小林がナイフで同じことをしていたのを思い出し真似させてもらったのだ。


 「小賢しいっ!!殺れ傾山羊!!」


 再び大きな音で蹄を鳴らした赤角の魔獣は、上空で光輪の足場に立つ椋に向かい再びあの技を放とうとした。


 「『超集約の赤四角』ファイナルデスティネーション!!」


 発声と共に放たれた、地形をも容易に破壊する一撃。しかし椋は逃げない。


 「『愚者の道程』、対象正の『隠者』、対象『隠者の隠れ家』」


 そう、門の入口は椋にではなく傾山羊に向けられる。

 

 「ここでこれ以上暴れないでくれ…………」


 方向転換も聞かないであろう黒山羊を閉じ込めたのは出口指定のない『隠者の隠れ家』。つまりは白鳥が先の蛇槌と同じ方法で傾山羊を復活させるか椋がこの扉を再び開けない限り黒山羊がここから出てくることはない。


 「終わりにしよう!!」


 光輪の足場を蹴り、瞬間的に白鳥の背後に移動、フィールドが破壊されているため下手な攻撃をすることはできないが人一人を気絶させることぐらい椋にとってはすでに容易いことだ。左手を大きく後ろに回しその蛇槌で勢いよく白鳥の頭を打ち付けた。


 

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